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糖尿病(とうにょうびょう) その1

 

ここに述べることは、あくまで一般的な参考としての情報であり、読者が医学知識を増やすための自習の助けになるものであり、それを越えるものではありません。
また、ご自分の症状を正確に把握せず、ここに書かれてあるサプリメントを摂ったり、治療法を行い、症状が悪化しても、いっさい責任はとれません。 インターネットにより、Dr.牧瀬のアドバイスを受けられたい方は、こちら


 糖尿病も増加の一途をたどっています。日本では過去30年間に30倍、アメリカでは過去45年間に10倍増えたと言われています。自動車の登録数と比例して増えていくそうです。日本の場合、厚生労働省の平成23年の「国民健康・栄養調査結果の概要」によると、男性の15.7%、女性の7.6%が「糖尿病が強く疑われる者」にあたるとされています。
前糖尿病の状態も考慮すると、千万人単位の凄まじい数です。

 糖尿病には二種類あります(妊娠時におこる糖尿病も入れると三種類になりますが、こでは省略します)。一つは、膵臓からのインスリンそのものの分泌が悪く、外からインスリンを補ってやらなければ、血糖値がどんどん上がり、非常に深刻な事態に陥ってしまうタイプです。このタイプはインスリン依存型糖尿病(略してIDDM、あるいはⅠ型糖尿病)と呼ばれ、若年者に多く、日本では糖尿病全体の5%以下です。残りのほとんどは、肥満、ストレスなどにより(しかし、本当の原因はいまだ不明)、細胞膜のインスリン抵抗性がまし、血糖値が上昇するタイプで、インスリン非依存型糖尿病(略してNIDDM、あるいはⅡ型糖尿病)と呼びます。

 しかし、これは白人の場合がそうなのですが、日本人の場合、たいした肥満がないかたちで糖尿病が発症しています。白人ではインスリン分泌が過剰になったあと、インスリン抵抗性によってⅡ型糖尿病が発症するのに対し、日本人の場合、インスリン分泌不全や遅延がⅡ型糖尿病発症に大きく関与しています。したがって、治療も日本人のⅡ型糖尿病に関しては多少、変更されなければいけないのです。

 特にⅡ型は遺伝的要素が強いので、両親の片方でも糖尿病があれば、30才を過ぎると、ときどき検尿してチェックして下さい。薬局で簡単に手に入るウロウリスティックで十分です。Ⅱ型の糖尿病は40%の率で遺伝します。Ⅰ型の場合4%以下です。


なぜ、血液中に余分な糖が存在しているといけないのか?

 たしかに、血液の中にあまりに大量の糖が流れると血液の浸透圧が狂ってしまい、また血中のケトン体が増え、血液が急激に酸性に傾き、昏睡などの深刻な事態をひきおこします。しかし正常より多少、多めに糖が存在しても、実際少しの間であれば何ら問題はありません。この問題のないのが問題で、高血糖状態が長く続くと、10年、20年とゆっくりゆっくり時間をかけて、細い血管や、細い神経がぼろぼろになってしまい、糖尿病の合併症といわれる、実に多彩な臨床症状が現われてきます。

 まさに、分厚い一冊の本が書けるほど、腎臓、心臓、眼、神経などがやられてくるのです。そして、最悪の場合、糖尿病性白内障や網膜症で失明したり、下肢に壊疽をおこし切断を余儀なくされたり、腎臓がやられ透析になったりするのです。

 いったんこういう状態にまで悪化すれば、治療は非常に難しくなります。また、そこまで悪くなっていなくても、例えば、両下肢に蟻の這うようなピリピリとした違和感があり非常に気持ちが悪いと訴える患者さんがいます。下肢の細かい神経や血管がおかされて、このような症状が出てきたのだと考えられ、ビタミンB群、特にB1 、B12を投与されていたりしますが、糖尿病由来のこのような症状がいったん出てしまえば実に困難で、てこずります。したがって、まったく自覚症状が出ていないうちから、血糖値をコントロールしておくことが絶対に必要なのです。

 糖尿病家系の人は、30代から、月に一度はご自分で検尿して、糖が尿に出ていないかチェックしてください。しかし、最も確実なのは、採血によりHbA1c(グリコヘモグロビン)を調べることです。過去3カ月間ほどの平均血糖値を推定することができます(ビタミンCやアスピリンを常用していると高値にでることがありますから注意してください)。これが高い場合、糖尿病のリスクありとして、すぐに対策を始めてください。そして、糖尿病を専門とするクリニックか、大学病院か、それに準ずる病院にかかって下さい。糖尿病を専門とする医者は大勢いますので、どこにかかれば良いかわからないときは、例えばあなたが大阪にお住まいであれば、Googleで「大阪市内 糖尿病専門医」と検索すれば、たくさんでてきます。

では、なぜ、血糖値が高ければ、こういう不愉快な合併症がおきてくるのでしょう。昏睡をおこさないほどの血糖値であれば、別段、問題はないはずです。とにかく人間は生きていくかぎり、糖を燃やしてエネルギーをつくり続けなけならないので、血糖は絶対に必要なはずなのです。

 しかし、不必要な糖の中には、不完全な形をした糖もその分、多く存在します。それが、体温にあぶられ、タンパク質に結合します。この現象が「糖化(Glycation)」です。

 グルコースのカルボニル基(C=O)がタンパク質のアミノ基(NH2)と反応し、シッフ塩基(C=N:アルジミンとも呼ばれる)を形成し、さらに複雑な化学反応後に、糖化された変性タンパク質AGEsになります。これは、Advanced Glycation End Products の略で、日本語では終末糖化産物と訳されますが、日本語でも"AGEs"はごく一般的な言葉となっています。

 AGEsはあくまでも糖化反応による生成物の総称であり、一定の構造を示す化合物ではなく、現在、100種類以上のAGEsが知られています。

 この糖化された変性タンパク質AGEsは本来のタンパク質としてのまともな機能を果たしません。AGEsはミトコンドリアの働きを阻害し、そこでの酸化ストレスも増加させ、徐々に正常な細胞も破壊していきます。糖尿病、あるいは前糖尿病の段階(糖尿病+前糖尿病を合わすと日本人の16%。つまり6人に1人)のみならず、甘いものを摂りすぎた時や肥満への道を歩みだす時(おそらく全人口の60%)、AGEsが大量に生産されます。

 動脈硬化の原因は、コレステロールだとよくいわれますが、本当のところ、最も重要な原因ではないように思えます。それについては、「動脈硬化・狭心症・心筋梗塞」のぺージをお読みください。コレステロールよりも、もっと重大な影響を与えるのは、この「糖化」によるAGEsなのです。悪玉コレステロールと呼ばれるLDLは、糖化されたタンパク質AGEsの存在がなければ、さほど悪役として振る舞わないのです。

 人体を構成するタンパク質の3割はコラーゲンで、動脈の内膜にもコラーゲンが存在し、一種のクッションのような役目をはたしています。これが糖化されると、血管の弾力が失われ、厚く硬くなります。まさに「硬化」です。「糖化」は「硬化」とほぼ同じことなのです。

 これが全身の動脈で起こるのです。目には見えず、しかも、ゆっくりと時間をかけて血管が固くなっていきますので、心筋梗塞などにおそわれたときにやっと気がつくのです。コレステロールも血圧も正常、ただ、ときどき、空腹時血糖値が少し高いですよと指摘されるくらいなのに、「なぜ?」ということです。「幸せのチョイメタボ」に潜む油断です。

 また、骨にもコラーゲンはたくさん存在しますが、これが糖化されると、骨は当然もろくなり、骨粗鬆症をおこします。そして、破壊された骨からカルシウムが溶け出し、これが血管を石灰化し、動脈硬化を促進させます。つまり、糖化は、動脈硬化への踏んだり蹴ったりの一直線なのです。

 これが皮膚ともなると7割がコラーゲンで占められています。したがって、このコラーゲンが糖化されると、皮膚に重大な影響が及びます。さらに、厄介なのは、コラーゲンの糖化によって生じたAGEsを、コラーゲナーゼやエラスターゼが分解しようと働き、AGEsだけでなく、コラーゲンやエラスチンそれ自身も分解してしまい、ドミノ倒しに皮膚が劣化し、ハリや弾力が失われていくのです。

 そして、皮膚免疫の力も落ちてきますから、白癬菌といわれる一種のカビによって生じる水虫は糖尿病患者さんにじつに多くみられます。重症の場合、手足の爪にまで及び、濁った草色をていしながら爪が破壊されていきます。どんな治療にも強く抵抗する水虫やクラミジアによる皮膚疾患は、糖尿病の可能性も一度は疑ってみるべきです。

 驚くことに、こういった皮膚の感染症は、糖尿病を発症していなくても、両親のどちらかが糖尿病であるという人にもしばしば観察されます。皮膚科の医師は、患者さんの家族歴も詳細にきいておくべきです。もちろん、水虫を患っているからといって糖尿病家系であるとはかぎりません。糖尿病とは何の縁もない、筋肉質のスポーツ選手にも白癬菌による水虫はおこります。英語では水虫のことをathlete’s foot (運動選手の足)というくらいですから。

 コラーゲンの形成を不十分になりますので、糖尿病患者さんの傷は治りにくかったり、手術の痕がなかなかうまく修復されなかったりするわけです。

 目の水晶体のタンパク質には、生涯にわたり新陳代謝されないタンパク質クリスタリンなるものが存在します。これが過剰の糖によって糖化され、紫外線により酸化されると、水晶体が白濁し、白内障がおこります。

 さらに、糖化が脳でおこると、どうなるでしょうか? 脳は脂肪とタンパク質の巨大な塊です。そのタンパク質が糖化されると、β-アミロイドなる変質した繊維状のタンパク質なるものもできてきます。これは、老人斑と呼ばれる斑点で、神経細胞を死滅させてゆき、アルツハイマー病の一つの原因となります。

 また、AGEsは癌の発生にも深くかかわっています。糖尿病患者さんは、糖尿病でない人と比べると3倍も癌の発生率が高くなります。ヒトの体のなかでは毎日1万個に近い癌細胞が生じているとされています。それを免疫機構が、逐次、殺しているので私たちは癌にならずにすんでいられるわけです。ところが、ブドウ糖が過剰に存在し、AGEsも大量に発生すると、AGEsがDNAの修復を邪魔し、癌細胞も通常より多く発生します。

 さらに、癌細胞の表面に存在するAGE受容体にAGEsが結合すると、癌細胞の転移がおこりやすくなるのです。

 それと、高血糖は一種の神経毒として、脳の奥深いところにある視床下部の神経核の一つである腹内側核(VMH)に悪影響を及ぼします。視床下部はいわば人体のホルモンのコントロールシステム大元締め役を行なっている脳のセンターです。特にそのVMHは血糖に対して敏感で、そこがやられると、膵臓が必要以上に刺激されて、不必要にインスリンが分泌されてきます。その結果、いわゆるインスリン抵抗性という事態がおこり、いわゆるメタボリックシンドロームを惹起していきます。そういうわけで、糖尿病患者さんには正常人の二倍以上の頻度で心・血管系の病気がおきてくるわけです。

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