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驚嘆の不思議

 

 人体に常在する100兆の細菌の遺伝子の総数は、ヒトの遺伝子の総数の約150倍といわれています。 それに、ウイルスもおそらく数十兆は存在するでしょうから、ヒトの遺伝子とは無関係な生命体の一つにでも突然変異がおこり、細菌やウイルスが無秩序に暴れだす可能性は、確率としてじゅうぶんに考えられます。 なんせ、100兆以上ですから。そのたった1個でも変異し、破壊的バクテリアになると、倍々ゲームで一夜にしてすさまじい数になります。 しかし、不思議なことに、健康である場合、ヒトと常在菌やウイルスは平和に共存しています。

なぜこの驚嘆(きょうたん)すべき不思議さに、現代医学は今まで気づけなかったのでしょうか?

 

 それは、現代医学がヨーロッパ文化の中で発達してきたからです。西洋の文化を最も深いところで支えているのはキリスト教です。 一神教の世界です。一つの人格神しか認めない宗教です。草木そうもくにさえ、八百万(やおよろず)の神々が宿る宗教をアニミズムと蔑視(べっし)する、排他の論理が支配する文明です。 ユダヤ教も、イスラム教もそうです。太陽と砂しかない過酷な世界で生まれた、他者との妥協と共生を許さない厳しい宗教なのです。

 「共生 Symbiosis」とは、読んで字のごとく、「共に生きる」ということです。一神教が支配する文化の中にあっては、基本的に容認しがたいコンセプトなのです。 進化の頂点にあるはずのヒトは、最も原始的なバクテリアやウイルスとは共生されるべきはずがなかったのです。 (したがって、人種差別もおこりやすい)。 しかし、もともと、Symbiosisという言葉自体はヨーロッパで生まれ、 それが明治時代に日本語では"共生"と翻訳されたのですが、「相利共生」とか「片利共生」のように生物学上の現象を表現するためのテクニカルな用語に止まってしまったのです。 残念なことです。

 ところが、どっこい大らかな自然は、偏狭な宗教とは何の関係もありません。森羅万象(しんらばんしょう)ことごとく、あらゆる面で、あらゆるものが、共に生きているのです。 「山川草木国土悉皆成仏(さんせんそうもくどしっかいじょうぶつ)」で、そこでは、ヒトの遺伝子が上位で、バクテリアやウイルスの遺伝子が下位というヒエラルキーさえないのです。

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