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ウイルスだって大切

 

 バクテリアのおよそ1000分の1の大きさのウイルスともなると、いったいぜんたい、どのくらいの数がヒトの体に棲んでいるか? まだ、ほとんどわかっていません。おそらく、バクテリアと同じように数十兆単位だと推測されます。そして、ひたすら、ウイルスは悪物とみなされてきました。 しかし、その見方は訂正されてきています。ウイルスだって大切なのです。

 ファージはウイルスの一種で、もっぱら細菌に取り付き、細菌を殺します。最近、わかりだしてきたのですが、ヒトの粘膜にはある種のバクテリア・ファージが存在します。 口腔、生殖器、鼻腔、肛門などの粘膜は、外界からの危険な細菌の侵入を防ぐ一種の防波堤です。 そこに、バクテリア・ファージが存在し、人体に侵入しようとする細菌を殺し、ヒトを守る役目をはたしているわけです。 したがって、むやみやたらにファージを殺すのは危険なことですらあるのです。

 胎児は母親にとって異物です。ところが、母親の免疫によって、体内から排除されません。 腎移植したさいに、移植された腎臓が異物として排除されないように、術後はしばらく厳密な管理が行われます。 しかし、妊娠したからといって、子供が免疫反応によって、母体から拒絶されるとは、誰も考えません。実に不思議だとは思いませんか?
これに重要な役目をはたしているのが、胎盤にある合胞体栄養膜細胞です。この細胞が、母親の免疫担当細胞を胎児側に侵入させることなく、栄養や酸素を胎児側に通過させる役目をはたします。 しかし、この重要な細胞がどのようにしてつくられるか、長いあいだわかっていませんでした。
ウイルス学の発達により、やっと2000年に、それがヒト内在性レトロウイルスのエンビロープ(被膜)にあるシンシチンというタンパク質の作用で形成されることが解明されたのです。 妊娠すると、それまで眠っていたヒト内在性レトロウイルスが活性化されて大量に増加し、その際にシンシチンが作られ、膜が形成されるのです。
つまりウイルスはヒトを含めた哺乳類の胎児の保護になくてはならないものなのです。

 それに、森林、海、雲まで含む広範な生態系にウイルスは非常に重要なであることが、次々と明らかになってきています。 ナノメートル単位の極小の大きさですが、海洋に存在するウイルスに限っても、その炭素骨格の総重量はシロナガスクジラの7500万頭分に相当すると見積もられています。 すべてをつなぎ合わせると、なんと1000万年光年、銀河系宇宙の直径の100倍に等しい距離になるのです。

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