ステロイドは使われていませんが、そのかわりにタクロリムスという免疫抑制剤が配合されています。 日本では1999年に発売が開始されていますので、まだその副作用については未知な部分が多すぎます。 ステロイド軟膏より多彩な副作用がでてくるのではないかと心配です。
ぼくは患者さんにはほとんどすすめません。毛嚢炎や口唇ヘルペスができやすくなります。これは、免疫抑制剤であるがゆえの当然の欠点です。 また、プロトピックによる薬疹で、頬に大きく、固い紅斑をつくってしまった患者さんを治療したことがあります。 特に日光の当たる顔に使うのはさけたほうがいいでしょう。
しかし、皮肉なことに、顔の赤味をとるには有効なようで、その赤味をとるために顔に塗る患者さんが多いのです。「重要なサプリメント 7」ところに書きましたように、アトピー患者さんは、顔の赤味で非常に悩むことが多いのです。 第三者からみると本当にたいしたことではないのに、もう他人の視線さえ恐ろしいようで、うつむきかげんで会話する人もいます。
そういう患者さんには、将来おこりうるかもしれない副作用の心配より、今ここにある苦しみをひとまず軽くしてあげるために、プロトピックの使用を黙認することはあります。しかし、顔の赤味のためなら、ビタミンB2、B6か、あるいは「赤ら顔」のぺージに記載があるようなやり方のほうがずっと安全です。
また、こういう免疫抑制剤の入った軟膏を使うことをかなり積極的に容認しているアメリカの皮膚専門医に行くツアーまであります。
このツアーを募っておられる主催者ご本人のアトピーが治ったということで、募集されておられるわけですが、アメリカでの治療後は「炎症が時々おこることがあっても、もうステロイドの塗り薬も使うことがなく、画期的なアトピー性皮膚炎のお薬で安全に生涯を普通の皮膚、普通の生活を楽しんでコントロール出来るようになります。」というふうに書かれています。はたして、そうなんでしょうか?
生涯にわたってというには、せめて数十年は使われてから判断されるべきで、ましてやFDAからも警告を受けているような軟膏を長年使い続けるということは、危ないとしかいいようがありません。ぼくはこの書き方は非常に無責任であると思います。
読売新聞2005年3月12日に次のような記事が載っていました。