サプリメントを処方するときに最も難しいのが、妊娠中と授乳中の女性に対する処方です。妊娠中の女性に、たとえばCoQ10をどのくらい与えると、母体と胎児にどういう影響がでるかなどの実験は、倫理的にもとより許されません。したがって、データがないので、妊婦や授乳中の女性に対し、医者は医薬品やサプリメントはできるだけ処方しないのです。私のクリニックも、フラックスシードオイル、腸溶性ラクトフェリン、ビオスリーの三つしか処方しません。しかし、安全な出産をしたい、健康な子を産みたい、良い母乳を与えたい、何か良いサプリメントはないでしょうかという質問が、あとをたちません。
そこで、世界で最も汚染の少ない土地の一つ、ニュージーランドの南島で生産されるハーブ・ティーを選びました。かつて、15年ほど前、水も空気も土地も最高にきれいなアイスランドの北部、エイヤ・フィヨルドに臨むアークレイリまで行き、北極圏の地下水で育ったハーブを求めたことがありました。しかし、それを収穫し、日本にまで輸出するには、相当の作業、忍耐、資金、時間が必要で、現実的にほとんど不可能です。けっきょく諦めた経緯があります。それに代わる、現実的に可能な場所はニュージーランドです。アイスランドとニュージーランド、およそ18000キロの距離、北極と南極ほど離れています。つまり、どちらもピュアな土地にはかわりないのです。しかも、そこにはヨーロッパから移住してきた人々による薬草学の知恵が活用されているのです。

ハーブ・ティーの最高傑作
ここに紹介する「Cool and Calm Tea」、「Pregnancy Tea」(妊娠中に飲むお茶)、「Breastfeeding Tea」(授乳中に飲むお茶): これらのハーブ・ティーの歴史は、古代ギリシアの薬草学の英智と経験を引き継いだドイツの医師 Jacobus Theodorus Tabernaemontanus (ヤーコブ・テーオドル・タベルネモンタヌス)から始まります。

彼は植物学者でもあり薬草学に詳しく、「ドイツ植物学の父」と呼ばれている人物です。1588年に「Neuw Kreuterbuch 」(新修草木誌)、1590年に「Eicones plantarum seu stirpium」(植物と根のイメージ)を出版します。

特に後者は、2255の木版画が載せられており、ヨーロッパ薬草学の基本的なテキストとなり、後世にまで多大な影響を与えます。

中国の薬草学の大著、「本草綱目」が、明の医師・李時珍により上梓されたのが、1596年ですから、東西、ほぼ同時期に、古典的薬草学が完成したとみてもよいのでしょう。ドイツのヤーコブ・テーオドル・タベルネモンタヌスと、中国の李時珍とが交流があったとはとても考えられません。人類の知力の発達は、恐ろしいまでに普遍的なのです。
中世ヨーロッパの学術書は、普通、ラテン語で書かれていましたので、学者、僧侶、貴族など、特定の人々の独占になっていましたが、「Neuw Kreuterbuch」はドイツ語で書かれていたため広範な読者層を得ました。そのため、ヤーコブ・テーオドル・タベルネモンタヌスは死後の名声も高まり、大きな成功を収めたのです。ちょうど、マルチン・ルターが平易なドイツ語の聖書を書いたために、宗教改革が成功したのと同じ理屈です。
彼の薬草学の著書は、大学のみならず、修道院まで広く浸透してゆき、スイス・フランシスコ会の尼僧で、助産婦でありハーバリストでもある「シスター・ポーリン」はその本に従い、さまざまな処方をつくりだしていきます。フランシスコ会とは、イタリアのアッシジの修道僧フランチェスコによって開かれた一派で、清貧を重んじ、また病気治しに長けています。現代でもその流れを受け継ぎ、世界各国でとりわけ医療の分野で奉仕活動を行っており、欧米の医者たちには、積極的にフランシスコ会の活動を支援する人たちもいます。
そのシスター・ポーリンの弟子として、医療人類学の学位をもつスイス人サンドラ・クレアー女史は、ハーブ治療をシスター・ポーリンから直伝で学びます。そこで体験したのは、人が本来もっている治癒力は、自然の草のほうが、化学薬品よりうまく引き出せるのではないかということです。古代ギリシア、中世ヨーロッパ、ルネサンスと引き継がれてきた2500年のヨーロッパ薬草学の真髄が、3年後、彼女に伝授されます。

ニュージーランドの南島にあるオタゴに移住したクレアー女史は、故郷スイス・アルプスとは少し違った、野性的で、手づかずで、荒削りなのに心安らぐ、母性的な魅力ある自然と光を見出します。
そこは、500年前の薬草学に伝えられた治療法を解きはなし、植物の癒しの知恵を再発見する場所だと直観されたのです。彼女は夫ともに、その地にヨーロッパの伝統のハーブを育て、1995年にオタゴのダニーデンに、ハーブによるクリニックを開きます。

ヨーロッパ薬草学の伝統を継承する彼女の処方するハーブの組み合わせは、そのたぐいまれな効能により、”Sandra Clair’s Remedies” (サンドラ・クレア―の処方)として、口伝えにつぎつぎと広がっていきます。しかし、クリニックだけでは、「癒しの伝道」には限界があるとさとったクレアー女史は、古代ギリシアの女神の名を借り、Artemis(アルテミス)というハーブ専門の会社を、3年後の1998年に創立します。アルテミスは野生の草原の神であり、また女性と子供を保護する神でもあり、彼女の意図するハーブには実にふさわしい名前です。今では、ニュージーランド全土、90ほどの薬局に、アルテミスのハーブは配置されています。

世界で最も汚染のすくないニュージーランドの自然で育ったハーブを、2500年のヨーロッパの伝統的薬草で巧みに配合したサンドラ・クレア―女史の処方は、おそらく地上最高のハーバル・メディスンかもしれません。

クール&カームティー

ニュージーランド、で更年期の女性にたいへん人気の高いお茶です。特に、“のぼせ”や“ほてり”を文字どおりクールダウンし、また“イライラ感”をカームダウンして、安らいだ心地よさをもたらしてくれます。
成分:ホップラベンダー甘草マザーワートセージ西洋オトギリソウヤロー

ホップ
ビールの原料の一つとして有名です。これには8-プレニルナリンゲニンという一種のフラボノイドが含まれており、それがエストロゲン作用を発揮します。それによってホルモンのバランスを整えてくれ、ほてり、のぼせを和らげてくれます。

ラベンダー
特に神経・精神系の安定と安らぎをもたらしてくれますので、更年期には必須のハーブです。情緒不安定の解消、理由不明の緊張感の緩和、そして睡眠の質の向上に非常に効果的です。

甘草(かんぞう)
葉を噛むと少し甘味があります。そこから、「甘い草」と名付けられたわけです。このハーブ・ティーでは、甘草の根を使っています。エストロゲンと似た働きをもつ物質が含まれおり、更年期のホルモンバランスの調整を行ってくれます。その作用はイソフラボン以上であると言われています。また、甘味の主成分グリチルリチンは、抗ストレス作用があります。

ホップ
ビールの原料の一つとして有名です。これには8-プレニルナリンゲニンという一種のフラボノイドが含まれており、それがエストロゲン作用を発揮します。それによってホルモンのバランスを整えてくれ、ほてり、のぼせを和らげてくれます。

セージ
このハーブには体温調節の働きがあり、異常な発汗をやわらげてくれます。生理不順の改善、疲労からの回復、神経の使いすぎや心労にも効果がります。更年期のさまざまな症状を落ち着かせてくれます。また、抗菌・抗ウイル作用もあり、風邪かなと思ったときには積極的に、このハーブ・ティーを飲んでください。

オトギリソウ
更年期に移行中、あるいはすでに更年期に入ってしまったとき特有の精神の抑うつ状態にたいへん効果があります。西洋オトギリソウに含まれている、ヒペリシン、ハイパーフォリンなどがセロニトンの再吸収を防ぐことによって、落ち込んだ気分を、やわらかく高めてくれると推測されています。利尿作用があるため、体の水分バランスの調整にも役立ちます。(もし、あなたが抗うつ剤を服用されておられるのであれば、このハーブ・ティーはお飲みにならないでください。また、抗うつ剤の代わりになるほどの量の有効成分は含まれていませんから、今、お飲みの抗うつ剤を急に止めて、このハーブ・ティーに代えるようなことは、決してしないでください。また、他の医薬品をお摂りの時も必ず主治医と相談してください)。

ヤロー
このハーブはヨーロッパでは昔から「ビーナスの眉」と呼ばれています。つまり、女性の健康にまつわるさまざま問題を解決してくれるというハーブです。 特に膀胱の健康をたもつために、膀胱に刺激になる物質の排泄を促します。ま  た、静脈や毛細血管を丈夫にしてくれます。

Pregnancy Tea(プレグナンスィー・ティー):妊娠中に飲むお茶。妊娠7ヵ月後からお飲みください。
成分:スギナレディーズ・マントルレモンバームイラクサラズベリー(葉)オトギリソウヤロー

スギナ
ケイ素をふんだんに含んでいるため、子宮の結合組織を強め、子宮の血管を丈夫にします。また、体液の水分のバランスを整えてくれるとも言われています。

レディーズ・マントル
妊娠中は正常な出産を助け、出産後は子宮の回復を促します。

レモンバーム
妊娠中の不安を和らげ、気分を安定させます。また、食欲も促してくれます。

イラクサ
マグネシウム、カルシウム、鉄分を多く含みます。またビタミンAとCも 含み、妊婦の健康を維持します。

ラズベリー(葉)
つわりを軽減し、子宮の筋肉を強め、安全な出産に役立ちます。ただし、糖尿病でメトホルミンを摂っている人、抗うつ剤を摂っている人、双子の出産、帝王切開での出産が計画されている人などは、ラズベリーは摂ってはいけません。したがって、このPregnancy Teaはお飲みにならないでください。

オトギリソウ
妊娠中の特に精神的疲労感や不安を和らげてくれます。また、神経系を丈夫にします。

ヤロー
膀胱の健康をたもつために、膀胱に刺激になる物質の排泄を促します。また、静脈や毛細血管を丈夫にしてくれます。

Breastfeeding Teaブレストフィーディング・ティー)授乳中に飲むお茶:母乳の出を良くし、質を高めるためにお飲みください。 成分:アニシードカモミールフェンネルイラクサラズベリー

アニシード(アニスの種):母乳の流れをスムーズにし、赤ちゃんの腸を正常化する働きがあります。

カモミール:出産による傷の修復に効果があります。また、母親と赤ちゃんの消化管を健康にします。

フェンネル:母乳の流れをサポートするために、ギリシア時代より使われてきました。フェンネルを含む母乳を飲む赤ちゃんは、過剰なおならが少なくなり、腸がリラックスし、特に赤ちゃんの腹痛に効果があります。

イラクサ:正常な母乳の生産を促し、また、母乳の質も高めます。イラクサは解毒作用もあります。

ラズベリー(葉):ここに使われているのは、ラズベリーの葉です。伝統的に妊娠中期から飲用されます。骨盤の組織を強め、傷んだ骨盤の筋肉の修復を強めます。子宮の収縮をサポートし、出産後のすみやかな回復を促します。

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