ここで述べる4つハーブに共通するのは、「人々が長い歴史の中で日常的に使ってきた」ということです。 これ以上、肌にとって安全で確実な証(あかし)はありません。化学合成されたものは、どんなに厳密に動物実験がなされたものでも、思わぬ副作用がでることがあります。 ヒトとネズミの違いは脳です。ヒトにはネズミとは比較できない大きな脳がついています。 この脳の影響力は甚大で、ネズミには効果があるとでた薬品でも、実際にヒトに使ってみると、まったく効果がないどころか、ひどい副作用まででてしまったということが、よくおこるのです。 これは新薬開発者の悩みの種です。
特に新しい物質をヒトに作用させるときは、ことの他、注意が必要です。人類が化学的に合成してつくった物質は、もともと自然界には存在しなかったものなのです。自然界に存在しない人工的な物質を、ヒトが摂取した場合、それらを代謝するのに体は大変な労力を有し、必ず何らかの副作用があります。
なぜなら、自然界の一部であるヒトには、自然界に存在する物質に対しては、たとえ初めてその物質が体の中に入ってきても、なんとか対応できるシステムが備わっているようなのです。 ところが、新しい化学物質は人体にとっては一種のエイリアンであり、まるで人類がいまだかつて遭遇したことがない宇宙人にどう対応すればいいか見当がつかないのと同じことなのです。
また、最近は動物愛護運動のために、基本的な動物実験さえ多くの化粧品は行っておらず、むしろ、動物実験を行っていないことを誇りにし、それを強調する風潮があります。 その是非はともかくとして、動物実験も行っていない”化学的合成物質”を、日常的に、しかも長期にわたり使用するのは、それなりのリスクを覚悟しなければいけません。
しかし、ここで述べる「幸せの4つのハーブ」は、動物実験どころか、人体実験を数百年にわたっておこなって安全性と効能が証明されたに等しいものなのです。
月桃(学名:Alpinia zerumbet)については、私のサイトにずいぶん書いていますので、くわしいことは省略しますが、スキンケアにも非常に役立ちます。 こと皮膚に関しては次の4つの酵素の活性を阻害し、皮膚のはり、つや、美白を助けてくれます。 月桃の蒸留水抽出エキスは、私のクリニックでつくっているすべての軟膏に配合されています。
<参考リンク>: http://www.biomedcentral.com/1472-6882/12/106(英語)
コラゲナーゼ:コラーゲンの分解を促進する酵素。これが過剰であれば、表皮のコラーゲンが分解されすぎ、皮膚にダメージを与えてしまいます。
エラスターゼ:エラステチンを分解する酵素。エラステチンはコラーゲンを支える繊維で、これが分解されすぎるとシワの原因になります。
ヒアルロニダーゼ:ヒアルロン酸を分解する酵素。ヒアルロン酸が分解されすぎると、皮膚のはりと保湿能力が減ります。
チロシナーゼ:チロシンからメラニンが生成されるのに、必要な酵素。この活性を減じると、美白効果が得られます。
以上の4つの酵素の活性を減らすわけですから、スキンケアには月桃はなくてはならないものなのです。
クジンとは、苦参と書きます。”参”は”人参(ニンジン)の参で、苦い(ニガイ)人参という意味です。 本州の南の各地に分布する背丈1.5mほどの多年生の草、クララ(学名:Sophora flavescens)という植物の根を乾燥させてつくった生薬がクジンです。
苦参湯(くじんとう)、消風散、当帰貝母苦参丸料(とうきばいもくじんがんりょう)などの漢方薬に配合され、さまざまな症状に使われてきました。
こと、皮膚に関しては、クジンに含まれているKuraninol、 Kuraridinol、 Trifolirhizin などのフラボノイドに、チロシナーゼ阻害効果があり、メラニン色素の生成を防ぎ、 美白に役立つことが認められています。 メラニンは、チロシンというアミノ酸から、下記のように代謝されてできますが、最初のチロシンからドーパ、ドーパからドーパキノンの二つの反応に、チロシナーゼという酵素が必要です。
チロシン → ドーパ → ドーパキノン → ドーパクロム --->メラニン
メラニンとはあの黒いメラニン色素のメラニンです。 特に、Kuraridinol のチロシナーゼ活性阻害の強さは、美白効果のために化粧品に配合されるコウジ酸の10倍にもなると確かめられています。
ユキノシタ(学名:Saxifraga stolonifera)は、背丈20~50cmほどの多年草です。 本州、四国、九州、どこにでも見ることができます。山菜として、酢味噌あえ、汁物の実などに使い、天ぷらとしても食用されます。
葉が虎の耳に似ていることから、中国では虎耳草(コジソウ)と呼ばれ、日本でも民間薬として使われるときは、この名前です。 漢方薬の中に配合されませんが、民間薬として昔から、ウルシかぶれ、はれもの、しもやけ、痔などに外用として、また小児のひきつけ、むくみ、心臓病、などにも使われてきました。 また、中耳炎には、ユキノシタの葉の汁を垂らすとか、コットンに浸して詰めるとかすると、非常に効果があり(鹿児島薬剤師会。「薬草の詩」から)、別名ミミダレグサと呼ばれるほどです。
最近は、ユキノシタに含まれるケルセチンに抗癌作用があることも示されています
<参考リンク>:http://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0968089607009212(英語)
コスメティックスの分野では、紫外線によりダメージを受けたDNAの修復効果があり、シミ、シワ、たるみに対する予防になります。 アルブチンが含まれていますので、美白効果に優れ、ユキノシタと他のハーブエキスを混ぜたものが、数多くの特許を取っています。 「ユキノシタ」という名前から、雪のような白さが連想され、美白をうたう化粧品にはよく使われています。 このアルブチンの美白効果は先に書きました月桃とクジンと同じように、チロシナーゼの作用を阻害することによります。
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