3) 油と余分なタンパク質(エイコサノイド)
炎症にもっとも深くかかわっている物質がエイコサノイドです。
医学、生物学関係者以外でこの言葉を知っている人は、そんなに多くはいないでしょう。栄養学でも最近やっと脂質代謝の最終物質として登場するようになりました。
しかし、5億年の昔からすべての生物の体の中で重要な働きをしてきたのです。太古からの最も原初的なホルモンといってもさしつかえありません。つまりDNAと同じほど生物には基本的で必須であり、強力な作用をもつ物質なのです。
では、このエイコサノイドとは何なのでしょうか。ごく簡単にいえば、必須脂肪酸が代謝されて細胞膜でできる最終の物質で、その細胞および付近で強力なホルモンのような働きをする、骨格に炭素原子を20もつものです。(ギリシア語でeikosiは20を意味します)。したがってローカル・ホルモンといってもさしつかえないでしょう。必須脂肪酸からエイコサノイドへの代謝については、次の図を参考にしてください。
このエイコサノイドには大きくわけて2種類あります。
ちょうど交感神経、副交感神経、あるいはホルモンのインスリンやグルカゴンのように互いに拮抗しあうことが多いのです。
良性エイコサノイドの作用: | 血管拡張、血小板凝集抑制、抗炎症、がん抑制、アレルギー症状寛解 | ||
悪性エイコサノイドの作用: | 血管収縮、血小板凝集促進、炎症増強、アレルギー症状増悪 |
ここで、数多くのエイコサノイドを、人体に有利に作用するものを良性、不利に作用するものを悪性というふうに分類します。
非常にあらっぽい分け方なのですが、ここではわかりやすさを優先させます。たとえば、前者に属するプロスタグランジンE1は血小板凝集抑制や血管拡張作用を有し、高血圧や心・血管系の病気を防ぎ、後者に属するトロンボキサンA2は、逆に血管収縮作用や血小板凝集促進により心・血管系の病気を誘発しやすくします。
しかし、注意してほしいのは悪性エイコサノイドといえど、人には必要なのです。たとえば指を不注意によって傷つけた場合、もしトロンボキサンA2の血管収縮作用や血小板凝集促進作用がなければ、出血は止まらず、たいへんなことになります。
また良性エイコサノイドのプロスタグランジンE1だけが過剰に存在すれば、血圧は不必要に下がり、ヒトはショック状態に陥ります。つまり大切なことはバランスなのです。
ただ、毎日、毎日、人は体のどこかを傷つけるわけはなく、普通はトロンボキサンA2の血管収縮作用はさほど必要でなく、かえって高血圧、心筋梗塞などをおこしやすくするので悪性という範疇に入れておくのです。
そうしたほうが、これからの話がしやすくなるので、便宜上こういう分類を行なっているわけです。
ちょうど、いわゆる善玉コレステロール(HDL)、悪玉コレステロール(LDL)と同じようなものです。悪玉といえど、なければ人は生存できません。
たとえば、悪玉であるLDLはエイコサノイドの大元になるリノール酸を細胞膜にまで運ぶ役目をはたし、もしLDLがまったくなければ、良性も悪性もエイコサノイドそのものが生産されなくなり、ヒトは死んでしまいます。
また闘争のときは、悪性エイコサノイドが優位のほうが有利です。 争いに勝って自分のDNAを残すには、闘争の瞬間には、血圧は高めであるべきで、傷を受ける確率が高いので、血液は凝固しやすくなくてはいけません。 ちょうど交感神経と副交感神経のようなものです。
アレルギー、高血圧、狭心症、心筋梗塞、脳梗塞、喘息、リウマチといった慢性疾患や生活習慣病、ひいてはがんなど、つまり、ほとんどの病気は悪性エイコサノイドと深くかかわりあっていることがわかります。
細胞膜のレベルで定義すれば、病気とはエイコサノイドのバランスが崩れ、悪性のエイコサノイドが良性のエイコサノイドを慢性的にはるかにしのいだ状態であると、いいかえることができるかもしれません。
ここに書かれていることは、ドクター牧瀬が、延べ5万人以上の皮膚科領域の患者さんを、内科医の立場から診察した、つまり、多くの皮膚病は体の内部の問題が皮膚に現れたとみなして治療する根治方法です。
しかし、ご自分の症状を正確に把握せず、ここに 書かれてあるサプリメントをとったり、勝手な治療法を行い、症状が悪化してもドクター牧瀬 はいっさい責任をとれません。
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