1. フラックスシードオイルやエゴマオイル

これについては、アトピーの原因や、オメガ3を取ろう のところを読んでください。アトピー治療には最も重要なサプリメントの一つです。

2. マグネシウム

オメガ3系不飽和脂肪酸やオメガ6系不飽和脂肪酸の不飽和脂肪酸の代謝にマグネシウムは深くかかわっています。
マグネシウムが不足していると、いくらフラックスシードオイルをとっても役に立てずに終わってしまいます。また、マグネシウムには有害物質の解毒作用があります。重金属と結合して、体外にはやく排泄させる働きがあるのです。
タバコのニコチン、大量のアルコール(適度な量は問題ありません)はマグネシウムを消耗させます。
摂取量は体重1kgに対して、6mg~8mgほどが適切です。子供で成長の盛んなときは、体重1kgに対して10mgは必要だともいわれています。食物や水(硬水の場合)からも得ていますから、サプリメントからは、日に200mg~300mgぐらいでいいでしょう。食物ではナッツ類、緑黄色野菜に多く含まれています。また、昆布にきわめて多くのマグネシウムが存在します。
もし、甲状腺機能低下のため、チラージンを摂られているときは、マグネシウムの摂取は慎重に行ってください。マグネシウムはチラージンの作用を弱めることがあるからです。

3. プロテオグリカン :5mg~10mg (カプセル、錠剤の表示は25mg〜50mg /日)

多細胞生物において、細胞を支えている多彩な組織の細胞外マトリックスの主要構成成分の一つで、皮膚や軟骨など体内にくまなく分布しています。
プロテオグリカンは細胞の外にあって、細胞同士のコミュニケーション、細胞の増殖・維持修復、細胞の接着の足場の役割などを行います。 多細胞生物を構成する個々の細胞の多くは、プロテオグリカンが存在しないと、まともな機能が果たせないのです。

細胞の成長と増殖の調整に重要な役割を果たす上皮細胞増殖( 成長) 因子」EGFは、20代後半から急激に減少し始め、70代では20代の1/6にまで減少すると報告されています。 こうしたEGFの減少は細胞の再生能を低下させ、ターンオーバーを遅らせて肌の老化の原因となります。サケ鼻軟骨由来プロテオグリカンにEGF様作用のあることが、弘前大学のヒト線維芽細胞を用いた研究により確認されています。
また、プロテオグリカンは、ヒアルロン酸量が有意に増加し、Ⅰ型コラーゲンの産生を、容量依存的に促進します。強力な保湿作用、速やかなシワ改善作用、皮膚弾力改善作用、それに美白効果が認められるプロテオグリカンはアトピーや乾癬の効果的なサプリメントの一つです。

4. 善玉腸内細菌 ビオスリー:1g~3g/日

ビオスリーは3種の菌(酪酸菌・乳酸菌・糖化菌)の整腸剤です。
腸は最大の免疫器官だということを認識してください。 小腸の上皮には腸管固有リンパ球が、上皮細胞5~6個につき1個ほど存在し、その数はすべての免疫系細胞の60%にのぼるといわれています。腸の働きを健全に保つことは、アトピーの改善に非常に役立つのです。
また腸は第二の脳とよばれるくらい、脳と密接に関係があります。つまり、脳は腸とともに、精神的ストレス、情緒、睡眠などを共同でコントロールしているわけです。したがって、過度な精神的ストレス、情緒不安定などで悪化するアトピーには腸の働きを整えることは非常に大切なことなのです

5. 腸溶性ラクトフェリン:200mg~800mg/日

最初に注意を促しておきたいのですが、「腸溶性」とつくので、先に述べた善玉腸内細菌とよく混同されますが、まったく違ったものです。 腸溶性ラクトフェリンはタンパク質であり、善玉腸内細菌は細菌です。
ラクトフェリンとは母乳の中にごくわずかに含まれる赤い色をしたタンパク質で、初乳が最も多く含有しています。
生まれたての無防備な赤ちゃんのための物質ですから、非常に多彩な作用を示し、免疫系の調節、抗ウイルスおよび抗細菌作用、抗酸化作用、抗炎症作用、最近はがん発生および転移の抑制作用も確かめられています。
生まれたばかりの赤ちゃんにとって、体の中に取り込まれてくる物質は、成長に欠かせないタンパク質であっても、すべてが新しく、異物ばかりです。 それらのタンパク質に対し、ひとつずつアレルギー反応をおこしていては、生きていけません。ある程度は免疫寛容の状態が存在しなくてはいけないのです。 ラクトフェリンはその調節に非常に有効に働くのです。したがって、免疫系の異常が影響しているタイプのアトピーには大切です。

6. ビタミンB群(ビタミン B1、B2、B5、B6、B12、イノシトール)

ビタミンB1、ビタミンB5(パントテン酸)
ビタミンB1とB5は副腎皮質を活性化し、自身の副腎でステロイドホルモンを生成する働きを助けます。このホルモンはアレルギーやアトピーに効果を発揮します。B5は人体の重要な代謝反応を助け、有害物質の解毒にも効果があります。ビタミンCと一緒に摂ると効果が増すため、これらのビタミンを十分に摂ることが推奨されます。また、ヘルペスに対する効果もあります。これらのビタミンの摂取はアトピー対策だけでなく、全般的な健康維持にも寄与します。

ビタミンB2、ビタミンB6
ビタミンB2とB6はアトピーに伴う顔の赤みを和らげる効果がありますが、注射で補うほど大量に摂らないと効果が限定的です。特に思春期の患者さんは顔の赤みに悩むことが多いですが、注射は保険適用外で現実的ではないため、大量にサプリメントから摂取することになります。具体的な摂取量に明確なデータはないですが、一日200㎎を試し、様子を見てください。ただし、肝機能に異常がある人は摂取を控えてください。また、システインも顔の赤みに効果的で、一日1000mg~2000mgを試す価値があります。さらに、ビタミンB6は肌の保湿成分であるセラミドの生成や、美白効果があるアミノ酸の生成に必要です。しかし、授乳中や妊娠中の女性はビタミンB6の摂取に注意が必要です。ビタミンB群は肉類に含まれていますが、アトピーの人は肉類を控えるべきなので、サプリメントで補うことをおすすめします。

ビタミンB12
ビタミンB12はコバルトを中心にもつ赤色の大型ビタミンで、元々は悪性貧血治療に有効として発見されました。アトピー治療においては、フリーラジカルの一つ、一酸化窒素(NO)の消去に効果があります。NOは過剰に存在すると皮膚や器官にダメージを与え、アトピーの炎症を悪化させます。活性酸素を消去するサプリメントも多いですが、NOも除去する必要があります。我がクリニックでは軟膏に混ぜたり経口摂取することで利用しています。ただし、厚生労働省の推奨量2.4μgはアトピー治療には少ないです。アメリカでは5000μgのB12サプリが手軽に手に入ります。一部からはB12摂取過多が診断を誤る可能性が指摘されますが、その可能性はごく低いです。ただし、B12とビタミンCは3時間以上間隔をあけて摂取してください。B12がビタミンCにより破壊される可能性があるからです。

イノシトール:500mg~1000mg/日
イノシトールは穀物に多く含まれるビタミン様物質で、わずかに体内でも生成されます。コレステロール調整、脂肪肝治療・予防、パニック症候群・強迫性障害の改善、糖尿病による神経障害の防止、多嚢胞性卵巣症候群の治療、脱毛の回復等に効果があります。皮膚に対しては、真皮幹細胞を活性化し、健康な皮膚生成に寄与します。また、抜け毛防止にも有効で、特にアトピー患者の頭皮トラブル改善に役立ちます。米ぬかにも含まれており、米ぬかパックが推奨されます。摂取量は500mg~1000mg/日と書いていますが、精神科や心療内科系の病気には、10g以上が必要です。 もし、パニック障害、うつ病などが合併している場合、専門医と相談してください。また、糖尿病性の神経障害の防止には2000mg以上が望まれます。

7. ビオチン:5000μg~10000μg/日

ビタミンHとも呼ばれるのは、このビタミンがネズミの皮膚炎を防止することをドイツ人が発見し、ドイツ語の皮膚HautのHにちなんだからです。 前ページで述べた水溶性のビタミンB群に属します。ビタミンB群のサプリメントにも当然含まれていますが、その量では、アトピー改善には圧倒的に足りないで、さらに補う必要があるのです。

ビオチンの最大の役目は、α-リノレン酸からEPA(エイコサペンタンエン酸)や良性のエイコサノイドであるプロスタグランジンE3の産生を促すことです。 EPAはアラキドン酸から悪性のエイコサノイドが代謝されるのを阻害します。つまり炎症を防ぐということです。

次は、ヒスチジンという一種の必須アミノ酸を体外に排出させる働きがあります。このヒスチジンから脱炭酸酵素によって、かゆみを引き起こすヒスタミンが代謝されてきます。つまり、ビオチンはかゆみのもとになる化学物質の生成を阻害するというわけです。

更に、ビオチンは皮膚の基底細胞の下にある毛細血管を丈夫にして血流を増し、新しい皮膚の生成を促します。
、そのせいか、ささくれだった爪にも効きます。馬の蹄を強くするために、昔から獣医はこのビオチンを使っていました。 アトピーではありませんが、皮膚疾患の掌蹠膿疱症にも大量の ビオチンが効果があります。

乳児では腸管が未発達のため、ビオチンの産生や吸収が少なくなり、不足することがあります。 特に人工栄養児の場合、日本の粉ミルクはアメリカのそれと比べて、ビオチンの添加量が少なく、非常に懸念されています。 日本の乳児にアトピーが多いのは、粉ミルクにビオチンが十分に添加されていないのが原因だという先生がいるほどです。「おむつかぶれ」にも効果があります。

またビオチンが有効に働くにはマンガンが必要です。日に3mg~4mgは必要ですが、普通の食生活をしていては不足することはまずないとされています。 しかし、カルシウムを大量に摂取するとマンガンの吸収が阻害されます。何かの理由でカルシウムのサプリメントを摂っている人は、気をつけたほうがいいでしょう。 (ぼくのクリニックでは、骨粗鬆症にさえカルシウムのサプリメントはすすめません)。
マンガンは「愛情のミネラル」あるいは「愛情の塩」とよばれることがあるように、特に授乳期の女性には必要なミネラルです。 ですから、授乳期の女性、あるいは離乳までいっていない赤ちゃんがアトピー症状を呈している場合、積極的に補うことがすすめられます。 それに、「5.乾燥肌」で述べたセラミドの生成にはマンガンは必須です。 そこにも書いたように、パイナップル・ジュースのコップ1杯には、マンガンが3mg含まれていますから、 毎日、飲んでください。
(マンガンは甲状腺ホルモンの生合成にも必要不可欠です。特に最近、若い女性に、いわゆる「隠れ甲状腺機能低下症」の人が多く観察されます。 体温が36度を切る。便秘ぎみ。 いつもボーッとしていることが多く、だるい。脈が遅い。肥満とまではいえないが、ずんぐりとしてきた。しかし血液検査では見かけ上まったく異常なし。 甲状腺の機能の異常は、低下でも亢進でも、アトピーを悪化させます。)

日本人のおよそ7割はビオチン不足だと推測されていますが、特に次のような人に不足します。
• 透析を受けている人
• 抗生物質を服用している人
• α-リポ酸だけを摂っている人
• 卵白を非常に多く摂る人(ボディビルダーで、卵の黄身を取り除き白身だけでタンパク質のシェークをつくる人がいるようです。黄身を取り除くのは余分なコレステロールをとるためです。 そのシェークを毎日飲む場合、卵のところに書きましたように、卵白に含まれているアヴィディンというタンパク質がビオチンと結合して吸収を邪魔するのです)
• ヨーグルトを頻繁に多く食べる人。運が悪ければ、そのヨーグルトにはビオチンを餌とするビフィズス菌が含まれているかもしれません。 アトピーの本当の原因をお読みください。
• 抗てんかん薬を服用している人
• 長期間にわたって睡眠誘導剤、抗うつ剤を服用している人です。これは重要で、意外と認識されていません。

アトピー患者さんには心の問題をかかえている人がけっこう多いので、こういう薬を長年のんでいる方がおられます。 そして、こういう薬がビオチンの吸収や細胞への取り込みを阻害して、アトピー症状を悪化させていることに気づかないでいるのです。
また、非常に精神的ストレスがかかったときなどには、就寝前に「ビオチン(10000μg) + ビタミンB群(2カプセル) + ビタミンB12(10000μg)」の組み合わせを1週間摂り続けて下さい。 きっと、その効果がわかるはずです。これら三つは非常に安全なサプリメントですから、よほど大量に長期間摂らないかぎり、副作用の心配はいりません。

ビオチンは、最低3ヶ月~4ヶ月は続けてください(掌蹠膿疱症の場合、その倍ほどの期間)。

最近、結節性痒疹にも効果があることがわかってきましたので、その病気にもビオチンを大量に摂るようにすすめています。1カプセルに ビオチンが5000μg入っているものを6カプセル/日。 また、皮膚病ではないですが、更年期障害にも効果があります。ビオチンは他にも、さまざま病気に効果があり、これから、さらに使われていくビタミンです。基礎研究が臨床にまだ追いつけない状態なのです。

ビオチンを摂る場合は、マンガンを補うためのコップ1杯のパイナップル・ジュースを飲み、ビフィズス菌の多いヨーグルトをひかえ、卵白を過剰にとらず、抗精神薬、抗生物質も避け、 そして必ず禁煙です。そうでなければ、ビオチンは有効に働きません。時々、ビタミンCと ビオチンは一緒に摂ったほうが良いのでしょうかという質問が患者さんから来ますが、その必要はありません。 時間をあけて摂っても、さほど問題はなく、むしろビタミンCの過剰摂取に十分気を付けてください。

ここに書かれていることは、ドクター牧瀬が、延べ5万人以上の皮膚科領域の患者さんを、内科医の立場から診察した、つまり、多くの皮膚病は体の内部の問題が皮膚に現れたとみなして治療する根治方法です。
 しかし、ご自分の症状を正確に把握せず、ここに 書かれてあるサプリメントをとったり、勝手な治療法を行い、症状が悪化してもドクター牧瀬 はいっさい責任をとれません。

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