下肢静脈瘤とは、立った姿勢で、3mm以上に拡張した下肢の皮下静脈のことをいいます。
血管が蛇行したり、こぶのように膨らんだりする、外見上の問題だけでなく、むくみ、ふくらはぎのだるさ、こむら返りのほか、悪化すると、湿疹や色素沈着、潰瘍などの皮膚症状が表れることもあります。女性に多い病気で、日本国内ではおよそ1000万人が罹患しています。はっきりと下肢静脈瘤と自覚できていない人たちも含めると、およそ10人に1人が、かかっていると推測されます。

特に女性に多く、立ち仕事に従事する人がかかりやすいのですが、もちろん男性患者さんもおられます。原因は静脈の弁がうまく機能せず、右図のように血液が逆流して滞り、脚の静脈にたまることによります。(左図の静脈は正常です)。
まず、予防が大切です。基本は普段からよく歩き、ふくらはぎの筋肉を鍛えておくことです。下肢の血液は、ポンプのような働きをするふくらはぎ(腓腹筋)によって上へ押し上げられるからです。それと、血管を丈夫にするサプリメントを常日ごろから摂り、未病のうちに静脈瘤の発生を防いでください。また、体重を適正なものに維持することも非常に大切です。
しかし、このページをお読みになっている人の中にはかなり進行してしまった方もおられることと思います。静脈瘤の自然治癒というのは、まれですので、ひどい場合は迷わず手術を受けたほうが賢明です。最近の治療法はすすんでおり、レーザーや高周波を用いた「血管内焼灼(しょうしゃく)術(ETA: Endogenous Thermal Ablation)」が行われ、日帰りで可能です。つまり、手術当日に歩いて帰ることができるのです。健康保険がききます。しかし、まずは予防です!! 予防に勝る治療はないのです。

三つの効果的なサプリメントを紹介します。

1) 赤ブドウ葉乾燥エキス

ヨーロッパではしばしば使われています。ドイツでは昔から「健康な静脈と美脚はワイナリーの娘のようにあれ! (Gusunde Venen u. schoene Beinen wie ein Winzer!)」といわれてきました。つまりワイン用ブドウの収穫後にえられる赤いブドウの葉は静脈の健康を護り、美脚の素(もと)として知られていたのです。

イタリアでは、「良いワインは良い血をつくる! (Buon vino fa buon sangue!)」ということわざがあります。 ギリシャの医師ディオスコリデス(AD40~AD90)は彼の「薬物誌」に、ブドウの葉や蔓(つる)のしぼり汁を服用したり、葉を患部にあてると良いと記しています。
1990年には、フランス植物治療薬指針に赤ブドウ葉の機能性が収載されました。
つまり、ヨーロッパでは、赤ブドウは健康の素と見なされてきたわけです。
赤ブドウ葉乾燥エキスを6週間、600mg/日摂取すると、両足のむくみ総量(午前から午後にかけての下腿体積増加量)が、60%近く減ります。(応用薬理83:1-7(2012):赤ブドウ葉乾燥エキス含有製剤の経口摂取による下肢のむくみ軽減効果)。
この顕著な作用は、それに含まれている、レスベラトロール、アントシアニン、ケルセチンなどのすぐれたポリフェノールによる効果です。
これらは、血管内皮細胞を保護し、離開した細胞を修復します。血小板凝集を阻害することで血管系の疾患を予防。血管平滑筋細胞の重責を抑えることで血管系の疾患を改善。LDL酸化阻害作用やLDLのマクロファージ取り込み阻害によりプラーク形成を抑制。このようなもろもの相乗作用によって、静脈瘤を改善してくれます。

2)ジヒドロケェルセチンDihydroquercetin (DHQ)

タキシフォリン(Taxifolin)とも呼ばれ、ケルセチンと似た構造をし、同じような作用をしめします。しかし、ケルセチンは水に溶けませんが、DHQはすぐに溶け、たやすく細胞に達します。しかも、安定しているため、非常に優れた効果を発揮します。毛細血管保護作用はケルセチンの3~5倍です。

シベリアのカラ松が原料で、当方で使うDHQはシベリアから直輸入しているものです。ケルセチンはタマネギやルイボスティーに多く含まれていますが、カラ松の樹皮由来のジヒドロケェルセチンは、普通のケルセチンの強力版と考えていただければわかりやすいでしょう。
ペルオキシドやスーパーオキシドといった強い過酸化物質を無毒化してくれます。また、不飽和脂肪酸から炎症性エイコサノイドを代謝させる酵素シクロオキシゲナーゼ-2(COX-2)の作用を減少させ、強力な抗炎症作用を示します。2008年の北京オリンピックに向けて、ロシアのアスリートたちにサプリメントとしてDHQが与えられました。

強い解毒作用を有するグルタチオンの体内での生成を促し、アミロイドβの蓄積を抑制します。また、Apolipoprotein Bの生成を抑制することによってLDLの増加を防ぎ、血管を丈夫にしてくれます。
記憶力、記銘力の強化だけでなく、抗アレルギー作用もあります。特にビタミンCとの相性がよく、抗酸化力が倍増します。一緒にお摂りになると良いでしょう。
<参考文献>:Antioxidant Composition Causes Antiexsudorific Effect in the Model of Chronic Venous Insufficiency
(英文)https://link.springer.com/article/10.1007%2Fs10517-011-1444-3

 

3)セイヨウトチノキ(ホースチェストナッツ)

名Aesculus hippocastanumトチノキ科トチノキ属の大型落葉樹で、マロニエとも呼ばれ、バルカン半島からトルコが原産です。日本でも街路樹として使われています。その葉や果実のエキスには、抗炎症作用、収斂(れん)作用、血行促進作用があり、痔・下痢・しもやけ・むくみなどに昔から使われてきました。
数種類のサポニンの混合物であるエスシンやタンニンが主成分で、そのうちのβ-エスシンが重要です。これらは、血管を丈夫にし、毛細血管の透過性を抑制します。そのため、血管から低分子タンパク質や電解質・水分が間質に滲出するのを抑え、アレルギー反応や浮腫を防ぎます。

<参考文献>:Horse chestnut – efficacy and safety in chronic venous insufficiency: an overview
(英文)http://www.scielo.br/scielo.php?pid=S0102-695X2015000500533

 

 

ここに述べることは、あくまで一般的な参考としての情報であり、読者が医学知識を増やすための自習の助けになるものであり、それを越えるものではありません。
また、ご自分の症状を正確に把握せず、ここに書かれてあるサプリメントを摂ったり、治療法を行い、症状が悪化しても、いっさい責任はとれません。 インターネットにより、Dr.牧瀬のアドバイスを受けられたい方は、「ご相談フォーム」よりご相談下さい

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