人類の長い歴史の中で‘塩’がふんだんに得られるようになったのはつい最近のことで、昔は非常に貴重なもので、給料として塩が支給されていたこともあったくらいです。英語のsalary(給料)は、salt(塩)を語源としています。したがって人体はもともと塩が少ない状態で生きていけるようにできていたわけで、テクノロジーと長距離輸送の発達により、あまりにも急激に塩が安く手に入るようになってしまい、まだ人体はその変化についていけないところがあるようなのです。

そのため、現代の食事では古代の食事と比べて、ナトリウムとカリウムの比率が大幅に変わっており、昔と比べて現代人はあまりにもカリウム不足だといわれています。それががんの大きな原因の一つだと主張する医師もいるくらいです。ナトリウムそのものが高血圧に直結するという考えは稚拙すぎるようで、最も大切なのは、カリウムとの適切なバランスではないでしょうか。

もっとも、過剰の食塩摂取は尿からのカルシウム排泄を増しますので、ことさら塩分をとるということはひかえて下さい。そして、カルシウム不足は高血圧をもたらします。塩分の取り過ぎが高血圧を招くとすれば、おそらく、ナトリウムそのものの昇圧作用のみならず、「塩分の取過ぎ→カルシウム不足」というメカニズムでも血圧があがるものと推測されます。

また、現代は副腎機能が非常に弱っている人が増えてきています。これといった明確な原因がわからないままに、非常に疲れるのです。こういう場合、食塩を補給すると、楽になることがあります。また、食塩を補給することによって、赤血球の癒着状態が改善され、いわゆる血液ドロドロ状態が解消されます。つまり、食塩もまんざら悪役ではないのです。

したがって、「減塩大国日本」を築くには、医者や研究者たちの、食塩と血圧・健康の関係の基礎研究がもっともっと必要なのです。そうでないと、「減塩=健康」は一緒のイデオロギーに近くなってしまい、科学的根拠が薄いまま、「大日本減塩健康帝国」へ一人歩きしていきそうです。

糖尿病もかなりの勢いで増加していますから、今後、甘いものもどんどん制限されていきそうで、「減塩減糖:Less Salt・Less Sugar」が日本国民のスローガンとなるかもしれませんね。また、コレステロールも減らさなければということで、「減脂:Less Lipid」。三つ合わせて、「減塩減糖減脂:Less Salt・Less Sugar・Less Lipid」。 幸せのチョイメタボのグルメおじさん、グルメおばさんたちからは、「かなり生きづらい世界で、これじゃ精神的にマイナスで、ストレスがかかり、それによってかえって健康を害するのでは」という文句がでそうです。つまるところ、バランスの問題でしょう。

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