食塩を多く摂ると血圧が上がり、減塩すると血圧が下がることを、食塩感受性があるといいます。血圧の上昇と下降は、食塩の摂取の過多に関係がないことを、食塩非感受性といいます。
人種によって食塩に感受性がある人とない人の割合はかなり違っています。アフリカのサバンナでは塩の入手が困難で、気温が高く汗をかきやすので、人々は塩分を体に保持する必要性があり、ナトリウムを貯留する人が多かったと考えられます。そういう環境に適応していた黒人の8割には食塩感受性があるといわれています。白人は3割、日本人はおよそ4~5割の人に食塩感受性があるようです。

しかし、食塩感受性は年をとるにつれて高まってきます。また、糖尿病・前糖尿病、肥満になると食塩感受性は増します。つまり、遺伝子の問題だけではないようです。それに、「食塩感受性」、「食塩非感受性」を決める遺伝子はまだわかっていません。したがって、遺伝子検査によって、はい、Aさん、あなたは食塩非感受性タイプですから、いくら塩分をとっても血圧はあがりません、おいしいめん類のスープも残さず全部飲み切って下さい、というようなことはいえないのです。

そして、食塩感受性高血圧のタイプの人は、心・血管系にかかる負担が大きく、非感受性高血圧タイプと比べると、心臓病や脳血管障害を発症するリスクが2倍以上になると指摘されています。
また食塩非感受性タイプの人でも、塩分を過多に摂り続けると、副腎皮質でアルドステロンが活性化し、基本的にはアシタバのところで詳述したRAASの賦活状態になり、高血圧になります。
さらに、たとえ高血圧にならなくても、食塩の摂りすぎは腎臓病、胃がん、骨粗鬆症などのリスクとなります。 したがって、日本国民すべて健康で長生きしたければ、少しファッショな感じですが、「減塩大国日本」をやはり目指すべきなのでしょう。辛(から)いものが好きな人にとっては、ちょっと辛(つら)い国になりそうですが。

ちなみに、イギリスは国策として積極的に減塩プログラム政策を2003年から開始し、2011年には食物中の食塩量は15%低下し、その期間に心疾患による死亡率は40%、脳卒中による死亡率は42%低下したとのことです。前ページに書きましたが、日本のマールボロ1箱は520円、イギリスは1402円。この違いなのです。

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