「生まれてくる子に、アトピーが遺伝しないようにするに、はどうしたらいいでしょうか?」と、これから出産しようとするアトピーの女性からよく質問を受けます。
アトピー素因は遺伝子そのものですから、防ぎようはありません。しかし、最初に述べたように、アトピーの最大の原因は、細胞膜にアラキドン酸が過剰に蓄積した状態ですから、それを防ぐようにすれば、アトピー素因の遺伝は防げなくても、アトピーが発症しやすい体質をもって生まれてこないようにすることはできます。
したがって、母親が妊娠中、ならびに授乳中に、和食を心がけるようにしてほしいものです。妊娠後期にあわてて和食に変えても遅すぎます。子供を持とうという意思があるなら、できるだけ早く、今まで述べてきた和食中心の食事指導に順ずるべきです。
近頃はやっている糖質制限ダイエットはどうでしょうかという質問がよくきます。糖質制限にもさまざまあり、一言でその良し悪しを論ずるのは難しいのですが、この食事を実行すると、どうしても肉や乳製品の摂取が増えてしまいます。したがって、すくなくともアトピーには良い結果をもたらしません。
もっとも、糖質制限をしてアトピーが改善したという意見もききますが、それは白砂糖を制限したという意味あいではないでしょうか。あるいは米に含まれている脂肪やタンパク質にまで影響を受けるまで悪化した時に、米を制限したら改善したということかもしれません「注意すべき食物(米・小麦・卵)」。しかし、これは糖質制限ダイエットとは基本的に違う考え方に由来していますので、混同しないでください。
最近、特に注目されているのが、イギリスのサウザンプトン大学のデイヴィッド・バーカー教授が提唱している「成人病胎児期発症説」です。心臓病、糖尿病、脳卒中などは胎児期の体内環境(つまり子宮の中)にその起源があることを疫学的に証明したのです。
イングランドとウェールズの心臓病マップをつくったところ、心臓病の発生率は新生児の死亡数と比例していることがはっきりと示され、そこからこの学説が生まれました。興味のある人は、「胎内で成人病は始まっている―母親の正しい食生活が子どもを未来の病気から守る」という本をお読みください。もっとも、アトピーと成人病は違いますが、おそらく胎児のときに、すでに母親の食生活や栄養状態に非常に影響されているはずです。胎生4週目から7週目に免疫に関係する器官が 形成されます。
また、国立成育医療研究センター産科の小川浩平先生たちによる、妊娠初期にしっかり野菜を食べると、出生後、子どもの喘息になるリスクが低下する可能性があるという研究結果報告がなされています。妊娠16週目までの妊婦511人に、過去2か月に食べた野菜の量を聞き、少ない順に、五つの群に分類し、その母親から生まれた子どもが2歳で、ぜんそくの症状の一つであるぜい鳴(ゼーゼーという呼吸音)の割合を調査したところ、摂取量が増えるに従ってぜい鳴のリスクも低くなる傾向にあるということなのです。
野菜を食べた量が最少だった群(1日平均78グラム)に比べ、最多だった群(同286グラム)の母親から生まれた子どもは、ぜい鳴を発症するリスクがおよそ半分に低下しました。アトピー、喘息、花粉症。これらは、非常にしばしばオーバラップしています。病因の基本にかなりの共通項があるはずです。したがって、アトピー発症を防ぐにも、「妊娠初期にしっかり野菜を食べる」ことが役に立つのではないでしょうか。
したがって、子供をつくろうと決めた段階で、しっかりと食事に気をくばり、サプリメントなどをお摂りになることを考慮してください。ただし、妊娠とわかってからは、食事やサプリメントの摂取は、産婦人科の先生のご指導に従ってください。
ここに書かれていることは、ドクター牧瀬が、延べ5万人以上の皮膚科領域の患者さんを、内科医の立場から診察した、つまり、多くの皮膚病は体の内部の問題が皮膚に現れたとみなして治療する根治方法です。
しかし、ご自分の症状を正確に把握せず、ここに 書かれてあるサプリメントをとったり、勝手な治療法を行い、症状が悪化してもドクター牧瀬 はいっさい責任をとれません。
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