湿疹が大きくなれば、簡単に診断がつきますが、初期のごく小さなときは、ときどき誤診されます。 特に頭髪の生え際、お尻の割れ目、両肘といった箇所にでき始めやすいのです。子供にはほとんどありませんが、最近は小学生にも発症する例がでてきました。 男女とも同じ発生率ですが、国によっては男性が多いところもあります。たとえば日本では、男性の方がやや多い罹患率を示しています。
β-遮断薬(高血圧、不整脈、心筋梗塞など、おもに循環器疾患によく用いられます)、抗マラリア薬、あるいはリチウム製剤などを服用したあとに、おこることもあります。喫煙したからといって、乾癬を発症させませんが、悪化要因の一つであることは間違いないです。また、大量の飲酒もそうです。私のアトピー患者さんですが、最初は普通のアトピー性皮膚炎だったのですが、どうしてもお酒がやめられず、肝機能の数値が悪くなるほどの飲酒癖があり、三年後には尋常性乾癬を発症させてしまった方がおられます。アトピー性皮膚炎と乾癬はまったく別の病気ですが、この人のように、たまに併発することがあります。
しかし、以上のようにある程度、原因がわかるケース以外は、多くの場合ある日突然、これといった思い当たる理由なく発症してきます。 しかし、詳しく問診すると、何か大きなストレスがかかる体験をしたあとに、気がついてみたら発症していたということがけっこうあります。坊さんの乾癬患者さんを今まで三人診ました。坊さんの資格を取るには、宗派によって違いはありますが、半年か一年、厳しい修行を果たされます。 三人とも、その修行が終わってから、乾癬が発症しているのです。朝は4時起床で、かなり厳しい荒苦行のようです。 おそらく、たいへんなストレスがかかったのでしょう。
乾癬は多遺伝子性疾患であり、その発症には複数の遺伝子が関与しています。坊さんになるための修行をしている人たち全員が同じように乾癬を発症しないのは、もって生まれたそれらの遺伝子が関係していると考えられます。
(最近は、患者さんの職業を医者は詳しくききません。職業による差別につながるという考えがあるようです。 しかし、それは、例えば学校の入学試験や公務員の採用試験の場合、そうかもしれませんが、こと医療に関しては、必ず聞くべきことであり、私は非常に細かく聞きます。 職業によって、人体はずいぶん、影響を受けるからです。患者さんの具体的な職業を聞かないことは、むしろ逆差別にあたります)。
乾癬は、日本では皮膚科外来患者さんの100人に2~3人の割合(一般人口1000人中2~3人)の罹患率ですが、肉食をする欧米では、一般人口100人に2~3人の割合です。 そうです、人口100人に2~3人とはたいへんな数なのです。
したがって欧米の皮膚科で一番問題なのはこの乾癬です。 日本で乾癬といっても、多くの人は理解しませんが、むこうでは乾癬といえば、 ちょうど日本のアトピーと同じようにだれでもわかってくれます。ちなみに英語でも、ドイツ語でも、フランス語でも、スウェーデン語でも、Psoriasis。ルーマニア語ではPsoriazis、ロシア語ではПсориаз(プソリアーズと発音)、 ヒンディー語ではसोरायसिस(ソライシスと発音)、テルグ語ではసోరియాసిస్(ソリアシスと発音。ドラヴィダ語族に属する言語で、インド南東部のアーンドラ・プラデーシュ州およびテランガーナ州の公用語)。世界中では少な くとも1憶人が罹患していると推定されています。年々増えています。
乾癬の症状は紫外線があたる顔にはほとんどでません。髪の生え際に出ることはよくあるのですが(したがって脂漏性皮膚炎とときどき誤診されることがあります)、うまく隠せることもあり、またその他の部位は衣服で覆われますので、外見からではわかりません。しかし、非常に多くの人がこの皮膚病を患っているのです。
明治以前、文明開化の足音が聞こえる前は、日本人には乾癬なる病気はほとんど存在していなかったようです。なぜなら肉食をしなかったからです。しかし、豚をよく食べる中国人には、乾癬らしき皮膚病が昔から存在していたようで、漢方薬にもその処方があります。
したがって、乾癬を改善するには、可能なかぎり肉・乳製品(チーズも含む)をひかえると良いという治療が考えられ、また、現実にそうなのです。アトピー性皮膚炎と同様に、乾癬にも菜食主義と断食が効果があります。数多くの乾癬患者さんを治療してきた私の経験だけからこう書いているのではなく、エビデンスがあるのです。英文ですが、下記のサイトをお読みください。
<参考リンク>:https://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/j.1365-2133.2005.06781.x/full(英語)
<参考リンク>:https://www.everydayhealth.com/psoriasis/diet/a-plant-based-diet-to-ease-psoriasis/(英語)
3年間、いっさい肉食を断つとかなり改善します。しかも、あとで述べる生物製剤と比べれば、極めて安上がりな方法です。しかし、これを実行するのは非常に難しいし、即効性はありません。
また、皮膚科専門医は新しく認可されたアプレミラスト(製品名 オテズラ)などを試したいものですから、乾癬治療には菜食主義者になることが非常に効果があるなど、患者さんにはめったなことでは勧めません。
治療はむつかしいのが現状ですが、命はとりませんし、痛みもないのがすくいです。約7割の患者さんには痒みをともないますが、アトピー性皮膚炎や結節性痒疹ほどのひどい痒みではありません。しかし、関節炎などを伴う場合は注意してください。そういうときは胸部レントゲンも撮ってもらいましょう。 まれですが、肺線維症を合併することがあるからです。特に爪、お尻の割れ目、頭皮に病状が出る人は乾癬性関節炎をおこしやすい傾向があり、関節痛の気配を感じた場合は、すぐにメトトレキサートなどの免疫抑制剤を服用して、関節の変形を防ぐ必要があります。
また、若い人の重症な乾癬患者さんは心筋梗塞などの合併症をおこすことがありますから、十分に注意が必要です。特に肥満の人は10kgほどは体重を落とすことがすすめられます。
症状がひどくなると、免疫抑制剤(シクロスポリン、メトトレキセート)やビタミンAの誘導体であるエトレチナート(商品名:チガソン。 催奇形性があるので、これを処方されるときは同意書まで要求されます)といった、副作用に十分注意を払わなければならない薬が処方されます。軟膏はもちろんステロイドや、ビタミンD3の誘導体であるカルシポトリオール(商品名:ドボネックス)、タカルシトール(商品名:ボンアルファ)などです。 またPUVAなどの紫外線療法も試みられます。
最近は、免疫学的な研究が非常に進んできており、TNF-α(腫瘍壊死因子α)、IL-12(インターロイキン12)、IL-23、IL-17、などのサイトカインを抑制する生物学的製剤が使われるようになりました。アダリムマブ(ヒュミラ)やインフリキシマブ(レミケード)はTNF-αを、ウステキヌマブ(ステラーラ)はIL-12およびIL-23、セクキヌマブ(コセンティクス)はIL-17、を標的にして乾癬を改善します。 しかし、これらの生物学的製剤は、人によっては非常にきつい副作用が出ることがあります。また、特に脛(すね)にできた病変部位や爪の変形は生物製剤では治りにくいです。
たとえば、最近よく使われだしたウステキヌマブ(ステラーラ)の添付文書の最初に赤字で下記の警告が書かれています。
【警 告】
- 本剤はIL-12/23の作用を選択的に抑制する薬剤である ため、感染のリスクを増大させる可能性があり、また 結核の既往歴を有する患者では結核を活動化させる可 能性がある。また、本剤との関連性は明らかではない が、悪性腫瘍の発現が報告されている。本剤が疾病を 完治させる薬剤でないことも含め、これらの情報を患 者に十分説明し、患者が理解したことを確認した上で、 治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合に のみ投与すること。また、本剤は専門医が使用し、本 剤投与後に副作用が発現した場合には、主治医に連絡 するよう患者に注意を与えること。
- 重篤な感染症 ウイルス、細菌及び真菌による重篤な感染症が報告さ れているため、十分な観察を行うなど感染症の発症に 注意すること。
- 本剤の治療を開始する前に、紫外線療法を含む既存の 全身療法(生物製剤を除く)の適用を十分に勘案すること。乾癬の治療経験を持つ医師と結核等の感染症につ いて診療経験を有する内科等の医師が十分な連携をとり使用すること。
お読みになれば、そうやすやすとは使われるべき薬ではないことは、おわかりになると思います。 しかも、健康保険をきかしても高額です。さらに、「本剤が疾病を完治させる薬剤でないことも含め」と明記されているように、症状を抑えている対症療法なのです。 しかし、効く人には非常に良く効き、軟膏や紫外線療法もいらず、食事制限も不必要で、ものの見事に皮膚がきれいになります。日常生活も簡単です。まるで、体の中から完治したような錯覚に陥ります。 しかし、生涯にわたって、生物学的製剤に頼るのは、かなり危険なことではないでしょうか。私のところでは、これら生物学的製剤をすすめたことは、一度もありません。 なぜなら、 肉食を止め(獣肉を食べなかった100年前の日本人にはこの病気はほとんどなかったのです)、適切なサプリメントと私のクリニックでつくっている乾癬用のPS(1)やPS(3)、 あるいはMAS(1)といった軟膏で、十分に改善されるからです。軟膏の詳しい成分は「牧瀬クリニック独自の軟膏成分」 をお読みください。
*滴状乾癬の場合はMA(1)を使うことがあります。
これらの軟膏の最大の特徴は5種類の石の微粉末(ミネラルパウダー)が入っていることです。そのため、普通の軟膏と比べてはるかに効果があるのです。つまり、石がもつ特殊なパワーを利用しているわけです。ウエブページの「石の力」をお読みになるとお分かりになりますが、石から放出される一種の波動による治癒力があるのです。波動という言葉を使うと、どことなく怪しげな感じがしますが、すべての物質は、それ固有の振動数でもって振動しているのです。今、あなたが持っている鉛筆にせよ、マウスにせよ、振動しているのです。
それと、特にPS系の軟膏のもう一つの特徴は、液状ラノリンが配合されていることです。ラノリンは羊の油です。「痒い」という字をよく見てください。「羊」にヤマイだれです。羊の病気とは、痒くなることなのでしょうか? また、乾癬の「癬」を良く見てください。「魚」の隣に「羊」があり、それにヤマイだれです。昔の人の直感や観察眼は尋常ならざるものがあります。この羊の油である、ラノリンを軟膏に配合することによって、効果は非常に増しました。不思議です。時間のある方は、「科学的エビデンス」を探しあててください!
しかし、いかなる軟膏にせよ、対症療法にすぎません。PS(1)やMAS(1)、あるいはMA(1)という軟膏によって、乾癬が根治すると考えていただいては困ります。軟膏だけに頼っていると、やがて再発します。体の中から、真に治していかねばなりません。それには、下記のサプリメントが効果があります。
月桃:2カプセル~3カプセル/日
どんな病気でも、まず、解毒ありきなのです。解毒を行わないで、医薬品やサプリメントをつぎ込むだけでは、病気は良くなりません。
月桃の一つの際立った作用として、解毒作用があります。まず、便通がよくなるのです。そして、体内の有害物質を排出させる作用が強いらしく、たいていの場合、1週間~1ヶ月ほど、一時的な症状の悪化現象が見られます。
それが、患者さんにとっては不安で、よく質問してこられます。もともとの症状がひどい患者さんほど、その傾向が顕著です。しかし、心配はいりません。
その一時的な悪化時期をこえると、非常に改善のスピードがアップします。
日に2カプセル~3カプセル服用すると、お通じがよくなりすぎて、下痢をするという人もおられます。そのときは、服用量を減らし、徐々に増やすようにすれば、問題はありません。
特殊加工した私どもの月桃のサプリメントはフェルラ酸という一種のポリフェノールを際立って多く含有しています。 このフェルラ酸は血液脳関門を通ることができ、脳の中で抗酸化作用を発揮します。 そのため、フェルラ酸を多く含むといわれる米ぬかがアルツハイマー病の予防に役立つサプリメントとして脚光を浴びています。 ところが、私たちの月桃のサプリメントの方が、はるかに多くのフェルラ酸を含んでいるのです。
アルツハイマー病と乾癬は関係のない病気です。しかし、乾癬のみならず、すべての皮膚病は、密接に脳や神経系と結びついています。 脳や神経系を健全に保つことは、どんな皮膚病にも非常に重要なことなのです。
*2021年2月から、今までの月桃加工食品に、製造過程でフェルラ酸、ビタミンD3、ビタミンAが足され、パワーアップされたものになりました。乾癬の患者さんの多くはビタミンD3が不足しています。したがって、よりいっそう、このサプリメントはすすめらます。(妊娠を希望する場合、ならびに妊娠中、授乳中はこのサプリメントはお摂りにならないでください)。
セレン:400μg/日
これも月桃と並んで解毒作用に優れています。詳しい解説は、アトピーの「重要なサプリメント11」をお読みください。アトピー性皮膚炎の場合の2倍量が必要です。
マグネシウム:200㎎/日
私のクリニックでは、多くの病気に、月桃、セレン、マグネシウムの三つは基本的処方として勧めています。 マグネシウムは体内でおこっている数千の代謝に直接的・間接的に影響を与えていますから、このミネラルの欠乏はあらゆる病気に関係しています。 アトピーの「重要なサプリメント3」にわかり易く説明しています。
ビオチン :15000μg~20000μg/日
ビオチンは掌蹠膿疱症の治療で有名になりましたが、乾癬の治療にも必ず必要です。 このビタミンBの一種はビタミンEやビタミンCなどと比べて、あまり研究されていませんが、きわめて重要なビタミンで、脳・神経系の病気にも必須です。 脳と皮膚は密接な関係にありますから、当然なのですが。(アメリカの皮膚科では掌蹠膿疱症は乾癬の一種に分類されています)。
量に注意してください。1千500マイクログラムや2千マイクログラムでなく、1万5000マイクログラム(15ミリグラム)や2万マイクログラム(20ミリグラム)です。 1カプセル5000マイクログラム入りのものが市販されていますが、それを3カプセル~4カプセルです。 詳しい説明は、アトピーの「重要なサプリメント8」をお読みください。
インターネットなどで検索すると、ビオチン療法の解説に、ビタミンCと一緒に摂るようにと、よく書かれていますが、一緒に摂る必要はありません。 むしろ、ビタミンCの過剰摂取は乾癬には決して良くないのです。
もしあなたの乾癬が滴状乾癬である場合は、この ビオチンがなおさら必要です。
フラックスシードオイル:3000㎎/日
乾癬は炎症性の皮膚病です。その炎症をコントロールするのがエイコサノイドという物質です。
そして、エイコサノイドの産生をコントロールしているのが、オメガ3系統(ω3)とオメガ6系統(ω6)の不飽和脂肪酸です。炎症を抑える良性のエイコサノイドは、オメガ3不飽和脂肪酸から代謝されてきます。オメガ3不飽和脂肪酸の代表であるα-リノレン酸はフラックスシードオイルやエゴマオイルに多く含まれています。
詳しい説明は「現代の病気を解く6つのキーワード」の「炎症とエイコサノイド」のページを参考にしてください。
抗コレステロール剤(スタチン系薬剤)
コレステロールが高く、抗コレステロール剤のスタチン系薬剤(商品名メバロチン、リポバス、ローコール、リピトール、リバロなど) を服用し始めて、長年患ってきた乾癬が、まるで魔法のように消えてしまったという患者さんが時々おられます。 皮膚科と内科の連携が皆無に等しい状況ですから、皮膚科医はこの現象にほとんど注目せず、乾癬で皮膚科を受診しても、抗コレステロール剤を処方されることはあり得ません。 また、乾癬に、抗コレステロール剤は、健康保険も適用されませんから、一般の皮膚科では、絶対と言って良いほど、処方されません。 しかし、乾癬と「油」は非常に関係が深いのです。
このウエブサイトの「症状別治療講座」の「脂質異常症(高コレステロール血症)その1」をお読みになるとわかりますが、冠動脈疾患のリスク、糖尿病の合併、ひどい高血圧、家族性高脂血症などがないかぎり、副作用のあるスタチン系抗コレステロール剤をわざわざ服用することは慎重に検討されなければいけないのですが、抗コレステロール剤が意外と乾癬に効くことがあるのです。
しかし、あなたが乾癬を患っているだけで、コレステロール値が正常なときには、医者は抗コレステロール剤を処方しません。あなたが頼んでも処方しません。 なぜなら、健康保険の適用外になるからです。また、「乾癬にスタチン系抗コレステロール剤」という治療が、しっかりと確立されていないからでもあります。 いわゆる、学会のお墨付き治療ではないからです。(しかし、お墨付き医療では治らないから、あなたやあなたのご家族は、このページをお読みになり、より良い治療を探されているのですが)。
コレステロール、中性脂肪、飽和脂肪酸、不飽和脂肪酸などが複雑にからみあってどのように乾癬に影響を与えているか、正直なところ、私もわかりません。 しかし、油は油で対処すると、かなり効果があるのです。
タレジュのオイル:6滴~8滴/日
油の論理をさらに突き詰めていくと、エッセンシャルオイルにたどりつきます。タレジュのオイルとはネパール産の7種類のエッセンシャルオイルのブレンドです。 詳しくはタレジュのオイルを読んでいただければお分かりになりますが、最近、このオイルを私は非常に多くの病気に使うようになり、その目覚ましい効果に驚いています。
下記に述べるように、乾癬にはウイルスの関与が非常に考えられますが、このエッセンシャルオイルの抗ウイルス作用とも相まって、これを摂っていただくのと、いただかないとでは、乾癬や結節性痒疹の治り具合が倍ほど違うのです。これも、正直なところ、どういうメカニズムが働いて、治癒速度を上げているかわかりません。しかし、患者さんとしては、副作用なしに治れば良いのであって、動物実験により理論だけはしっかりしているものの、実際にヒトに使うと副作用が多すぎて、とても使いもののにならない薬よりずっとありがたいのです。しかも、安価ですから、使わない手はないというものです。
ネブライザーで吸うのが、最も確実です。「パナソニック ポケット吸入器」が値段も安く便利です。
Googleで検索して、ご自分で購入してください。あるいは、コップにお湯を入れて、数滴、タレジュのオイルを垂らして、蒸気を吸ってください。ハンカチにオイルを垂らし、ハンカチを鼻にあてて、深呼吸されても良いです。また、お風呂に数滴いれてください。
銅:6㎎~10㎎/日
乾癬の原因はウイルスであるといえば、皮膚科医から馬鹿にされることは、よくわかっています。しかし、私はそう考えています。乾癬を引き起こす遺伝子の変異をおこしやすい人が、非常にストレスのかかった状況下(たとえば、先に書いた、坊さんの修行)におかれ、そのとき、ある種のウイルスに感染し、それが引き金となり遺伝子に変異がおこり乾癬が発症し、体内の異常な「脂肪(油)」も関連して乾癬が悪化する。あるいは、少量、体内に伏在していた、ふつう誰でも知っているウイルスが、急に増えて、遺伝子に変異を起こす、といった図式です。
しかし、皮膚科医は、生物製剤が効果があるのは免疫系に異常があるからではないかと反論するでしょう。しかし、その免疫系の異常を発生さたのが、ほかならぬウイルスではないでしょうか。ですから、免疫系を正常に戻すには、原因となるウイルスをたたくのが、まず最初に行うべき治療であるはずです。
銅にはウイルスを殺す作用があるのです。
この銅のサプリメントは、けっこうないがしろにされるのですが、乾癬治療には重要です。しかも非常に安いサプリメントです。必ず摂ってください。ただ、ずっと摂り続けず、3ヵ月摂れば、1ヵ月休むというようなサイクルで摂ってください。
亜鉛:30㎎~40㎎/日
亜鉛は皮膚の再生に必須です。こと皮膚に関してはコラーゲンの再生に重要な役割を果たします。インターネットで簡単に入手できますし、最近はコンビにでも売っています。安価ですので是非、補ってほしいミネラルです。その際、Zinc Monomethionate か、Zinc Picolinateの形が吸収率が高いので、それらを選んでください(Zincは英語で亜鉛という意味です)。
ただ、亜鉛は長期にわたり摂りすぎると、副作用があらわれる可能性が否定できないので、慎重に摂ってください。上記の銅のように、休止期間をつくって、3~4ヵ月中の1ヵ月間は摂らないほうが良いでしょう。
また、肝炎を患った人や、肝炎ウイルスのキャリアーは摂らないほうが無難です。サプリメント処方を希望される人は、前もって、必ずその旨を医者に伝えておいて下さい。
亜鉛の血中の値は簡単に調べられますが、普通の会社の健診で、亜鉛の血中値は調べません。しかし、ALP(アルカリフォスファターゼ)は頻繁に調べられています。もし、ALPが基準値より低ければ、亜鉛やマグネシウムの血中濃度が低いかもしれません。念のために調べてもらってください。
LPS:800㎎~1200㎎/日
私のクリニックで処方しているLPS錠は、1錠が200㎎です。発症してまもないケースでは最低4錠、5年以上の場合は6錠は摂るべきです。
LPSはリポポリサッカライド(Lipopolysaccharide)の略で、グラム陰性菌細胞壁外膜の構成成分です。ここで、サプリメントとして使うのは、小麦に共生するグラム陰性細菌であるパントエア・アグロメランスを発酵培養し、発酵培養液から糖脂質を熱水抽出し、その後菌体成分、残渣を除去・精製してつくられた植物発酵糖脂質素材です。このサプリメントはマクロファージを活性化させるのです。
マクロファージは白血球の一種である単球から分化されてできてきます。脊椎動物、無脊椎動物、ほとんどすべての動物に存在する、原初的な免疫担当細胞です。細菌、ウイルス、死んだ細胞等の異物を取り込みます。
ヒトなど高等生物の免疫システムには2種類あります。一つは自然免疫で、もう一つは獲得免疫です。マクロファージは自然免疫において主役的役割をはたします。マクロファージは、異物を取り込み、酵素によって分解処理を行います。取り込まれる異物は病原体だけにとどまりません。AGEs(最終糖化産物:糖尿病のときに多量に発生します)、変異したタンパク質、PM2.5(微小粒子状物質)など無機物、そして酸化された悪玉コレステロールLDLも、貪食するのです。
ビオスリー:2g~3g/日
まず、腸は最大の免疫器官だということを認識してください。
小腸の内側には小さな毛のような絨毛とよばれる突起が密集していますが、その間隙にパッチワークのようにパエイル板という器官が点在します。パイエル板はリンパ小節の集合体で、いわば免疫系をコントロールする一つの司令塔のような役割を果たしています。
また、小腸の上皮には腸管固有リンパ球が、上皮細胞5~6個につき1個ほど存在し、その数はすべての免疫系細胞の60%にのぼるといわれています。
その他、粘膜固有層の粘膜固有リンパ球、そしてこれらの組織の下に、クリプトパッチと呼ばれる未分化リンパ球が集積する小リンパ組織が最近日本人によって発見されました。 ここでは腸管独特のT細胞がつくられています。
また腸は第二の脳とよばれるくらい、脳と密接に関係があります。長さは日本人の大人の場合6~7メートルもあり、広げるとテニスコート1面分の面積があります。そこに存在する神経細胞の数は1億個で、脳以外に散在する神経細胞の約50%は腸に集まっているのです。 つまり、脳は腸とともに、精神的ストレス、情緒、睡眠などを共同でコントロールしているわけです。
乾癬は免疫系の異常であり、かつストレスによって悪化する病気ですから、腸を整えることは非常に重要です。 さまざまなプロバイオティクスがありますが、一般的にだれにでも無難に効果があり、比較的安価なのは、ビオスリーです。
しかし、ビオスリーを含め、他のどんなプロバイオティクスでも、腸の働きが良くなりすぎ、大腸で便の水分が吸収されすぎ、便が固くなり、かえって便秘がひどくなることがあります。40人~50人に一人ほど、そういう方がおられます。そのときは、種類を変えて、根気よくご自分の腸内細菌のフローラに合ったプロバイオティクスを探すしかありません。そして、必ずそうしてください。腸を整えるのは非常に大切ですから。
以上、月桃JIPNAG Ginger®、セレン、マグネシウム、ビオチン、フラックスシードオイル、タレジュのオイル、銅、LPS、ビオスリーと述べましたが、これらが量が多すぎ、また、経済的にも負担がかかりすぎ、とても無理であるとなれば、最低、月桃JIPANG Ginger®、タレジュのオイル、ビオチン、銅の四つを摂ることです。健康保険はききませんが、これら四つのサプリメントだけであれば、一ヶ月分が、1万5千円ほどです。そして、フラックスシードオイルは、市販の亜麻仁油や、シソオイルかエゴマオイル(ゴマオイルではないことに注意。エゴマです)を飲むことです。
ただ、これらは、免疫抑制剤でもなく生物学的製剤でもありませんから、摂ってすぐに効果が現れるというようなものではありません。かなり重症な例では、PS系の軟膏を十分につかって、見かけ上、半年で6割ほどの治癒。1年で8割ほど。体の中から、きれいに改善するには、やはり2年はかかります。 しかし、これらのサプリメントは非常に安全です。免疫抑制剤や生物学的製剤とは比較を絶して安全なのです。私は一般的な健康維持・増進のため、フラックスシードオイルと月桃JIPANG Ginger®は毎日摂り、タレジュのオイルやビオチンも状況に応じてしばしば摂ります。
また、経済的にゆとりがある人はさらに下記のサプリメントも足されたら、良いでしょう。
イノシトール:500㎎~1000㎎/日
イノシトールは 穀物の中に多く含まれるビタミン様物質です。 ビタミン様と書いたのは、体内でもわずかですが合成されるからです(ビタミンの厳密な定義は体内で合成されない物質をいいます)。 しかし、ビタミンB群の一種だと考えていいでしょう。 穀物の中に含まれているフィチンから体内ではできてきます。
イノシトールには九つの異性体が存在します。myo-イノシトールのみが生物活性を有するので,狭義には myo-イノシトールをいいます。イノシトール・リン脂質として生体膜に存在しており、膜機能に関与しています。良く知られているのが、コレステロールの調整です。抗脂肪肝因子として作用し、このサプリメントも油に関係しているのです。
β-グルカン:1000㎎~2000㎎/日
腸溶性ラクトフェリン:800㎎/日
これら二つは免疫系の調整に非常に効果があり、昔は乾癬にもよく処方していました。 ですから、昔のページにはまだ残っており、それを見られた患者さんから、今でもまれに注文があります。 ただ、高額なので、最近は乾癬には処方していません。 今までに述べたサプリメントをお摂りになったうえで、さらに余裕があって、付け足されるにはもちろんたいへんに良いサプリメントです。
* 膿胞性乾癬の場合、顆粒球吸着療法が効果があります。副作用は、せいぜい頭痛・嘔気・めまい等の一過性のもので、生物学的製剤など比べると非常に安全な治療法です。インターネットで検索され、それを行っている病院を探してください。すぐに見つかります。健康保険も使えます。生物学的製剤を使う前にためすべきです。
ここに書かれていることは、ドクター牧瀬が、延べ5万人以上の皮膚科領域の患者さんを、内科医の立場から診察した、つまり、多くの皮膚病は体の内部の問題が皮膚に現れたとみなして治療する根治方法です。
しかし、ご自分の症状を正確に把握せず、ここに 書かれてあるサプリメントをとったり、勝手な治療法を行い、症状が悪化してもドクター牧瀬 はいっさい責任をとれません。
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