1)漢方について

漢方薬は中国の伝統医学である中医学から発展し、特定の症状や体質に対して個別に適応した複数の生薬を組み合わせた処方が特徴的です。しかし、これらの薬剤を効果的に使用するためには、その背後にある医学的理論や診断の方法を理解することが必要であり、それには専門的な知識と経験が必要となります。

現代西洋医学と漢方医学は、疾患の捉え方や治療のアプローチが大きく異なります。したがって、漢方薬を効果的に処方するためには、その理論を理解し、正確な診断を行う能力が必要です。これは長年の教育と訓練を必要とし、浅い理解や経験では十分な診断や治療が行えない可能性があります。

中国や韓国では、中医や韓医(それぞれ中国と韓国の伝統医学を中心とする医師)と現代西洋医学の医師は異なる教育を受け、それぞれの医学に特化した治療を行います。また、アメリカでは医学校(現代医学)と自然代替医学校(自然療法)は別々に存在し、それぞれ異なる資格(M.D.またはN.D.)が必要となります。

このように、異なる医学理論を学ぶためには、その分野に特化した教育が必要となります。現代西洋医学だけを学んだ医師が、特殊な症状や体質に対して適切な漢方薬を処方するのは難しい可能性があります。そのため、漢方薬の処方は専門的な知識と経験を持った医師に任せるべきであると言えるでしょう。

しかし、実際には漢方薬が西洋医学の一環として、または個人的な学びから処方されることがあります。これは患者にとってリスクが伴う可能性があります。したがって、漢方薬の使用は適切な知識と経験を持った専門家に任せることが重要であると言えます。

漢方薬も、全ての薬剤と同様に副作用を持つ可能性があります。そのため、漢方薬を使用する場合は、その効果とリスクを正確に理解し、適切な医療専門家の指導のもとで使用することが重要です。また、漢方薬の使用について疑問や不明点がある場合は、その点を医療専門家に直接問い合わせることも重要です。

2)酸性水について

酸性水は、皮膚感染や炎症を伴う皮膚の病態に対して、一定の効果が期待できます。しかし、その効力は細菌の除去程度であり、それ以上の効果を求めることはできません。誤解されてはならないのは、酸性水を長期間使用し続けると、多くの場合、皮膚が肥厚化する傾向があるという事実です。これは酸性水が皮膚に与える余計な刺激に起因するものと考えられます。実際に当クリニックには、長年の酸性水使用により肥厚化した皮膚を持つ患者さんが大勢いらっしゃいます。

さらに、「強酸性水」や「超酸性水」などと呼ばれる製品も存在しますが、その使用に際しては、同様の注意が必要です。酸性水の利点としてはコストの面が挙げられますが、使用にあたっては適切な知識と配慮が不可欠と言えます。

また、酸性水と類似の効果を持つ消毒液としてイソジンがあります。これは優れた消毒力を持つため、皮膚感染症や炎症が疑われる場合に有効です。しかし、イソジンを全身に適用することは推奨できません。そのような使い方をすると皮膚炎を引き起こす可能性があり、アトピー性皮膚炎には逆効果となります。さらに、イソジンにはヨードが含まれていますので、過度な使用は甲状腺機能の異常を引き起こす可能性があります。

結論として、酸性水やイソジンは、重度の皮膚感染が疑われる場合に限定的に使用することを推奨します。その際には、適切な使用法とリスクについて十分に理解した上で、使用することが重要です。

3)電磁波の悪影響

以下は専門医の観点から見たアトピーと電磁波の関連性についての説明です。科学的な研究ではまだ厳密に証明されていませんが、長年の経験から見て、電磁波はアトピーの症状を悪化させる可能性があると感じています。一部の職業、例えばプログラマーやシステムエンジニアなど、電磁波に長時間さらされる人々は特に、アトピーの治療が困難になりがちです。

アトピーの一般的な症状の一つに、顔の赤みがあります。この症状を持つ人々にとって、特に長時間コンピュータの画面を見つめ続けることは避けるべきです。しかし、現代社会では仕事上、日に3時間以上はコンピュータを使わなければならない状況が多くあります。また、アトピー体質の人々は、白内障になりやすいため、電磁波を発するモニターやテレビの使用には注意が必要です。

これらの問題に対応するためには、電磁波を地面に接地(アース)する器具をコンピュータに取り付けることが有効です。「電磁波除去 器具」をGoogleで検索すると多くの製品が出てきます。ただし、電磁波そのものを除去するタイプの製品を選ぶことが重要です。また、充電しながらコンピュータを使用するのを避け、使用していないときに充電を行うと良いでしょう。

なお、電磁波を地上にアースするタイプの器具には、一部で漏電ブレーカが作動しなくなり感電するリスクや、家庭内の電化製品が故障し火災を引き起こす危険性があるとの報告もあります。私自身もこのタイプの器具を長年使用していますが、これまでにそのような事態は経験していません。ただし、念の為に注意することをおすすめします。

寝る場所も重要です。床の下に電線の配線がない場所を選ぶと良いでしょう。また、電気毛布や電気カーペットの使用を避け、可能な限りスマートフォンの使用も控えるようにすることをおすすめします。

4)減感作療法

この治療法は、例えば患者がスギ花粉に対してアレルギー反応を示す場合、非常に希釈したスギ花粉の溶液を微量から始めて注射し、段階的に増量し、結果としてスギ花粉に対するアレルギー反応を防ぐことを目指します。

この方法は時折成功例をもたらしますが、その長期に及ぶ治療過程が課題となります。週に少なくとも1、2回の通院が1年程度必要となることが一般的です。

そして、アトピーの原因が花粉であれ、昆虫であれ、食物であれ、ダストであれ、確定的に特定できると良いのですが、単純に血液検査の結果で物質に対する反応が高いからと判断し、その物質に対する減感作療法を始めるだけでは、望ましい結果を得られないことがあります。1年、2年と治療を続けても、成果が得られないことは無視できません。

特定の時期、例えばスギ花粉が増える春先にアトピーの症状が特に悪化するといった明確な因果関係が見られる場合には、減感作療法を試す価値があるかもしれません。

5)試す価値のある整体

私の診察室に訪れる重症アトピー患者さんの中には、骨格に何らかの歪みを持つ方が一定数存在します。特に骨盤のずれが顕著で、これがアトピーの発症や進行に一定の影響を与えていると推測されます。

なぜなら、骨盤がずれるとそれに伴い背骨も歪むため、背骨の椎骨間から出入りする多数の神経が圧迫されます。その結果、これら神経の機能が低下し、人体が必要とするステロイドの分泌が乱れます。それがアトピーの悪化を引き起こす要素となると考えられます。

さらに、胸椎から出る神経は気管や気管支を制御していますから、その機能が阻害されると、喘息も引き起こしやすくなるという仮説が立てられます。

したがって、アトピー治療においては、骨盤や背骨の矯正が重要となるという観点から、専門の治療施設の利用を検討するのが有益かもしれません。ただし、一般的な病院の整形外科では微妙なずれは診てくれない場合が多いため、整骨院やカイロプラクティックが選択肢になります。
しかし、自分に適したカイロプラクターや整体師を見つけ出すのは容易なことではありませんので、まず病院の整形外科で画像診断をしてもらい、自分の骨盤や背骨の矯正が必要か、不要かを見極めて治療を受けるようにしてください。

6)プロトピック、デュピルマブ、デルゴシチニブ、バリシチニブ プロトピック(タクロリムス)

これは筑波山地の土壌から発見された放線菌からつくられた免疫抑制剤です。もともと、臓器移植や骨髄移植の際の拒絶反応を抑制する薬として1993年に認可されました。IL-2に代表される種々のサイトカインの発現を抑制することによって、細胞傷害性T細胞の分化増殖を抑制、細胞性免疫・体液性免疫の両方を抑制します。これがアトピー用の軟膏として承認されたのは1999年で、20年以上の歴史があります。副作用に悪性リンパ腫を発症させる可能性があるとして懸念され、最初は慎重に使われました。しかし、その可能性が否定され、特に顔の赤みには効果があるということで、最近はかなり積極的に使われるようになりました。

ステロイドにない長所としては、プロトピックには、黄色ブドウ球菌やマラセチア菌の静菌、フィラグリン発現増加、TRPV1受容体脱感作、IL-31産生抑制、IL-22産生抑制など多彩なものがあります。また、分子量が大きいため、皮膚の深部に入っていけず、表面にのみ作用し、その分、副作用が少ないという利点があります。

しかし、基本は免疫抑制剤ですから、特に顔に頻繁に使うと、どうしてもヘルペスができやすくなります。また、塗った直後のピリピリ感がつらくて、使用できないという患者さんはけっこうおられます。したがって、黄色ブドウ球菌やマラセチア菌などの感染が疑われる場合以外は、ぼくの患者さんにはほとんどすすめていません。

現在の皮膚科では、最初はステロイド外用薬で炎症を抑え、徐々にプロトピック軟膏に置き代えていくというのがトレンドになりつつあるようです。また、プロアクティブ療法として寛解維持を目的に週に1~2回使用するようにすすめる皮膚科医もいます。しかし、ステロイドを免疫抑制剤に代えていくというのは、どこか現代医学の深刻な怖さと闇があります。ステロイドである程度緩解していけば、あとは極力、自然なやり方で、緩解維持を目指すべきではないでしょうか?

デュピルマブ(デュピクセント)
これは、一種の生物製剤で、IL-4受容体αに対する抗体です。このIL-4はTh 2 型炎症をおこす代表的なサイトカインで、皮膚のバリア機能を低下させます。したがって、Th 2 型炎症を抑えることによって、皮膚のバリア機能が回復します。ーー Th 2 とTh 1については、「Th1とTh2」をお読みください。2017年にアメリカで認可され、2018年に日本でも認可された新しい薬です。これは軟膏ではなく、注射です。FDAはデュピルマブを「画期的治療薬(Breakthrough Therapy)」に指定したほど効き目があります。患者さんはこれをうつと、すぐに痒みが楽になります。結膜炎が主な副作用ですが、まだ、使い始められてからの歴史が浅いので、これを長期にわたって使った場合、はたして致命的な副作用がでないかどうかが心配です。しかも非常に高価で、健康保険を使っても月に数万円かかります(最初の月が6万円、維持期に入ると4万円弱ほど)。既存治療で効果不十分なアトピー性皮膚炎、重症又は難治の気管支喘息、慢性副鼻腔炎に保険適用となっています。つまり、にっちもさっちも行かなくなった状態で使われるべき薬であり、アトピー治療の、いわば、最後の最後の手段でしょう。

デルゴシチニブ(コレクチム)
JAK阻害薬の一つであるデルゴシチニブをアトピー用の軟膏として日本で世界にさきがけて、2020年1月に成人用0.5%軟膏、2020年5月に小児用0.25%軟膏)が承認申請されました。

細胞の外から様々な刺激を細胞内に伝えるために働く酵素群はキナーゼと呼ばれ、JAKはこのうちのひとつであるヤヌスキナーゼ(Janus kinase)の略称で、JAK1、JAK2、JAK3、TYK2の4種類があります。デルゴシチニブはこれら全てを阻害し、T細胞、B細胞、肥満細胞、単球等の免疫細胞および炎症細胞の活性化を抑制する事で炎症を沈静化します。したがって、皮膚萎縮や血管拡張などの、ステロイド長期使用による副作用が起きにくいとされています。

コレクチム軟膏の炎症をおさえる効果は、ステロイド軟膏のStrong ~Mediumクラスほどです。ステロイド軟膏はStrongest > Very Strong > Strong > Medium > Weakと5段階に分類されますから、コレクチム軟膏の抗炎症作用は、ほどほどだということです。重大な副作用は報告されていませんが、毛包炎などがあります。しかし、使い始められてからの期間が短いので評価は難しいところです。

バリシチニブ(オルミエント)、ウパダシチニブ(リンヴォック)、アブロシチニブ(サイバインコ)
これら三つはここ1年~2年にでてきたJAK阻害薬です。同じJAK阻害薬のデルゴシチニブは軟膏ですが、これら三つは錠剤です。一日一回服用するだけで、1日か2日で効果が出始めます。生物製剤のデュピルマブと同様、まさに魔法のような薬です。しかし、いずれも高額です。オルミエント4mgの場合、4週間で、健康保険を使って3割負担でも39,814円。リンヴォック30mgで62,660円、サイバインコ200㎎の場合、65,790円です。

これらの薬は歴史がきわめて短いので、いったん服用し始めた場合、どこまで続けて、どのような状態になったときに止めることができるのかが、まったく検証されていません。しかもきわめて高額である。健康保険を使っても月に65,790円かかる薬は、若い人にはとても続けらられるものではありません。これも、デュピルマブ(デュピクセント)と同様、最後の手段です。

7)月見草(イーヴニングプリモローズ)

月見草(イーヴニングプリモローズ)からとれる油がアトピー改善に役立つという宣伝をときどきみかけます。
月見草は最初イギリスで販売され、今でも世界各国で売られています。インターネットで検索すれば、アトピーに効果があるという意見はたくさんでてきます。

しかし月見草にはオメガー6系列の不飽和脂肪酸であるリノール酸から代謝されてできてくるガンマリノレン酸が多く含まれています。そして、そこからアラキドン酸ができてきますので、むしろアレルギー疾患には禁忌とさえいえます。脂肪酸の代謝図を見てください。

30代で突然ニキビがでてきた女性を診察したことがあり、詳しく問診しているうち、生理不順のために、月見草オイルを服用していることがわかりました。服用を中止させると、一週間ほどで、ニキビはすっかり消えてしまいました。
このようにニキビも悪化させることもあります。

また、月見草はてんかんを悪化させるという報告もあります。痙攣発作のある人は避けたほうが賢明です。

ここに書かれていることは、ドクター牧瀬が、延べ5万人以上の皮膚科領域の患者さんを、内科医の立場から診察した、つまり、多くの皮膚病は体の内部の問題が皮膚に現れたとみなして治療する根治方法です。
 しかし、ご自分の症状を正確に把握せず、ここに 書かれてあるサプリメントをとったり、勝手な治療法を行い、症状が悪化してもドクター牧瀬 はいっさい責任をとれません。

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