まず、本当に貧血であるかどうか確かめてください。よくあることですが、単に立ちくらみがする、朝起きづらい、顔が青白く疲れやすいといったことで、勝手に貧血だと判断して、鉄剤などのサプリメントをとっている人がいます。これは非常に危険なのです。

貧血の定義は、「ヘモグロビン濃度が正常下限以下に低下した状態」です
これを調べるには採血して、血そのものを調べる以外にありません。それで、確かに貧血であると診断された場合は、そのタイプや原因をきっちりと把握しなければいけません

再生不良性貧血、骨髄異型成症候群、急性白血病(白血病でも貧血はおこるのです!)などの場合は絶対に血液専門医の治療を素直に受け入れてください。へたに代替療法に走っては命とりです。
もし、血液検査の結果、平均赤血球容積(MCV)や網状赤血球数が正常であり(正球性貧血)、しかもリンパ節腫脹、肝臓・脾臓の腫脹がある場合、骨髄性の疾患が強く疑われます。

単純な鉄欠乏貧血でも、原因を調べなければいけません。もっとも多いのが出血過剰による貧血で、胃や小腸の潰瘍、大腸のポリープやがんなどからの出血、腎臓や膀胱の腫瘍による尿中への出血、子宮筋腫、月経過多などがあります。
また、出血はなくても寄生虫によって血が吸われる場合も鉄欠乏性貧血を示すことがあります。こういった原因疾患を見つけないで、単に鉄剤を補給しても意味がないどころか、これも命とりになります。

その他、ホルモンの分泌異常、特に甲状腺機能低下症に合併します。副甲状腺機能亢進症、脳下垂体機能の低下、などにも合併します。また、肝臓の病気、腎臓の病気のときにも、貧血はおこります。
そして、ほんとうは貧血でないのに鉄のサプリメントをコンビニで買って、まるでビタミンCのサプリメントをとるようなノリで、鉄を補給することは、むしろ健康を害します。
生理が終わると、女性の心・血管系の病気の発生率は男性と同じほどになります。それまでは、男性のおよそ4分の1ほどです。その理由は、生理によって毎月一定の血が体外に流れ出て、それと一緒に鉄も出ていくのですが、生理がなくなると、過剰な鉄が体外に出ていかなくからです。

つまり、月に一回、一種の瀉血を自然がやってくれていたわけです。
鉄はすぐに酸化されて、特に心臓や肝臓に悪影響を及ぼすのです。また大腸がんの発生率も高くなります。したがって、無思慮な鉄の補給は危険なのです

以上のことを十分にわきまえて、サプリメントをとらなければいけません。どこもかしこもまったく異常がなく、単に鉄の吸収が悪いというだけであるなら、ヒジキやプルーンといった鉄を多く含んだものをとり、その鉄分の吸収をよくするために、腸溶性ラクトフェリンやビタミンCを補ってください。

腸溶性ラクトフェリン

ラクトフェリンは「赤いタンパク」とも呼ばれています。その理由は、鉄と非常に結合しやすく、赤い色は鉄の色なのです。ビタミンCとともに服用すると、鉄の吸収がより効率的になります。
イタリアで行われた研究ですが、259人の妊婦を「30日間毎日、鉄剤をのませる」、「30日間毎日、腸溶性ラクトフェリンをのませる」、「何もしない」の3グループに分けて比較したところ、腸溶性ラクトフェリンを服用させたグループが、ヘモグロビンと血清鉄の量の増加が多かったという結果がでています。
しかも、ラクトフェリンは鉄からくる害をうまく処理してくれる作用があり、単に鉄剤を補うより、はるかに安全に、人体が必要とする分だけの鉄を増やしてくれます。(余分な鉄は体によくないということを認識しておいてください)。
再三述べていますように、腸で吸収されるように工夫されているラクトフェリンでしか効果はまったくありません。

ビタミンB12

最低6μg/日

B12不足によって生じる貧血は、およそ80年前までは、例外なく死の転機をとりました。
しかし、貧血の犬にレバーを食べさせると改善することが発見され、さらにヒトの貧血にも応用され、軽く炒めたレバーが著功を示すことが証明されたのです。その業績により、1934年に3人の医師がノーベル賞を受賞しています。肝臓にはビタミンB12が多く貯蔵されているのです。
このビタミンが不足すると、赤血球は未熟な状態で異常に大きくなり、かつ正常な働きを失います。これを巨赤芽球性貧血と分類されます。
貧血をもたらすほど深刻なビタミンB12不足は、極端な菜食主義やアルコール中毒以外は、普通の食事をしていてはおこりません。
胃全摘による内因子欠乏、あるいは、自己免疫により胃粘膜萎縮が生じ、内因子の分泌が低下している、クローン病や回腸切除によってB12の吸収がうまくいかない、あるいは非常にまれですが広節裂頭条虫という寄生虫によりB12が横取りされているというような事態が考えられます。
とにかく、専門医にかかり、必ず精査してもらってください。原因疾患の治療をおろそかにすることは極めて危険です。
いいかえれば、B12を補うことにより、あなたが勝手に貧血からくる症状とおぼしきもの、つまり、蒼白、息切れ、立ちくらみ、疲労感、頭痛、めまい、などが急に改善された場合、必ず専門医にかかりなさいということでもあります。

ビタミンC

2g/日

鉄の吸収をよくしてくれます。しかし、2g/日以上は摂らないほうが無難です。 ビタミンCは非常に摂り方が難しいビタミンなのです。単に摂ればいいというように安易に考えてもらっては危険です。 しかし、食物からはどんどん摂ってください。ただ、生のサラダを食べたからといって、補えるものではありません。野菜は温野菜かスープで食べた方が良いのです。当然ビタミンCはかなり熱で破壊されますが、それでも吸収のことを考えると、生よりも、温野菜かスープの方が効率的なのです。

妊娠から出産後6カ月は、女性にとって非常に鉄が必要とされる時期です。胎盤を維持し、また赤ちゃんを成長させるのに、いつもと違って多い目の鉄が必要なのです。 通常より8mgは余計に必要とされるといわれています。これにもっともふさわしいサプリメントは腸溶性ラクトフェリンです。

また、アケビも良いです。これには、葉酸が豊富に含まれています。葉酸は、先に述べたビタミンB12とともに、赤血球のもととなる赤芽球の合成に、補酵素として重要な役割を果たします。そして妊娠中は特に葉酸が必要で、これが不足すると、胎児に二分脊椎症がおこることがあります。

ここに述べることは、あくまで一般的な参考としての情報であり、読者が医学知識を増やすための自習の助けになるものであり、それを越えるものではありません。
また、ご自分の症状を正確に把握せず、ここに書かれてあるサプリメントを摂ったり、治療法を行い、症状が悪化しても、いっさい責任はとれません。 インターネットにより、Dr.牧瀬のアドバイスを受けられたい方は、「ご相談フォーム」よりご相談下さい

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