8. ビオチン:5000μg~10000μg/日

ビタミンHとも呼ばれるのは、このビタミンがネズミの皮膚炎を防止することをドイツ人が発見し、ドイツ語の皮膚HautのHにちなんだからです。 前ページで述べた水溶性のビタミンB群に属します。ビタミンB群のサプリメントにも当然含まれていますが、その量では、アトピー改善には圧倒的に足りないで、さらに補う必要があるのです。

ビオチンの最大の役目は、α-リノレン酸からEPA(エイコサペンタンエン酸)や良性のエイコサノイドであるプロスタグランジンE3の産生を促すことです。 EPAはアラキドン酸から悪性のエイコサノイドが代謝されるのを阻害します。つまり炎症を防ぐということです。

次は、ヒスチジンという一種の必須アミノ酸を体外に排出させる働きがあります。このヒスチジンから脱炭酸酵素によって、かゆみを引き起こすヒスタミンが代謝されてきます。
つまり、ビオチンはかゆみのもとになる化学物質の生成を阻害するというわけです。

更に、ビオチンは皮膚の基底細胞の下にある毛細血管を丈夫にして血流を増し、新しい皮膚の生成を促します。
、そのせいか、ささくれだった爪にも効きます。馬の蹄を強くするために、昔から獣医はこのビオチンを使っていました。 アトピーではありませんが、皮膚疾患の掌蹠膿疱症にも大量の ビオチンが効果があります。

乳児では腸管が未発達のため、ビオチンの産生や吸収が少なくなり、不足することがあります。 特に人工栄養児の場合、日本の粉ミルクはアメリカのそれと比べて、ビオチンの添加量が少なく、非常に懸念されています。 日本の乳児にアトピーが多いのは、粉ミルクにビオチンが十分に添加されていないのが原因だという先生がいるほどです。「おむつかぶれ」にも効果があります。

またビオチンが有効に働くにはマンガンが必要です。日に3mg~4mgは必要ですが、普通の食生活をしていては不足することはまずないとされています。 しかし、カルシウムを大量に摂取するとマンガンの吸収が阻害されます。何かの理由でカルシウムのサプリメントを摂っている人は、気をつけたほうがいいでしょう。 (ぼくのクリニックでは、骨粗鬆症にさえカルシウムのサプリメントはすすめません)。
マンガンは「愛情のミネラル」あるいは「愛情の塩」とよばれることがあるように、特に授乳期の女性には必要なミネラルです。 ですから、授乳期の女性、あるいは離乳までいっていない赤ちゃんがアトピー症状を呈している場合、積極的に補うことがすすめられます。 それに、「5.乾燥肌」で述べたセラミドの生成にはマンガンは必須です。 そこにも書いたように、パイナップル・ジュースのコップ1杯には、マンガンが3mg含まれていますから、 毎日、飲んでください。
(マンガンは甲状腺ホルモンの生合成にも必要不可欠です。特に最近、若い女性に、いわゆる「隠れ甲状腺機能低下症」の人が多く観察されます。 体温が36度を切る。便秘ぎみ。 いつもボーッとしていることが多く、だるい。脈が遅い。肥満とまではいえないが、ずんぐりとしてきた。しかし血液検査では見かけ上まったく異常なし。 甲状腺の機能の異常は、低下でも亢進でも、アトピーを悪化させます。)

日本人のおよそ7割はビオチン不足だと推測されていますが、特に次のような人に不足します。

  • 透析を受けている人

  • 抗生物質を服用している人

  • α-リポ酸だけを摂っている人

  • 卵白を非常に多く摂る人(ボディビルダーで、卵の黄身を取り除き白身だけでタンパク質のシェークをつくる人がいるようです。黄身を取り除くのは余分なコレステロールをとるためです。 そのシェークを毎日飲む場合、卵のところに書きましたように、卵白に含まれているアヴィディンというタンパク質がビオチンと結合して吸収を邪魔するのです)

  • ヨーグルトを頻繁に多く食べる人。運が悪ければ、そのヨーグルトにはビオチンを餌とするビフィズス菌が含まれているかもしれません。 アトピーの本当の原因をお読みください。

  • 抗てんかん薬を服用している人

  • 長期間にわたって睡眠誘導剤、抗うつ剤を服用している人です。これは重要で、意外と認識されていません。

アトピー患者さんには心の問題をかかえている人がけっこう多いので、こういう薬を長年のんでいる方がおられます。 そして、こういう薬がビオチンの吸収や細胞への取り込みを阻害して、アトピー症状を悪化させていることに気づかないでいるのです。
また、非常に精神的ストレスがかかったときなどには、就寝前に「ビオチン(10000μg) + ビタミンB群(2カプセル) + ビタミンB12(10000μg)」の組み合わせを1週間摂り続けて下さい。 きっと、その効果がわかるはずです。これら三つは非常に安全なサプリメントですから、よほど大量に長期間摂らないかぎり、副作用の心配はいりません。

ビオチンは、最低3ヶ月~4ヶ月は続けてください(掌蹠膿疱症の場合、その倍ほどの期間)。

最近、結節性痒疹にも効果があることがわかってきましたので、その病気にもビオチンを大量に摂るようにすすめています。1カプセルに ビオチンが5000μg入っているものを6カプセル/日。 また、皮膚病ではないですが、更年期障害にも効果があります。
ビオチンは他にも、さまざま病気に効果があり、これから、さらに使われていくビタミンです。基礎研究が臨床にまだ追いつけない状態なのです。

ビオチンを摂る場合は、マンガンを補うためのコップ1杯のパイナップル・ジュースを飲み、ビフィズス菌の多いヨーグルトをひかえ、卵白を過剰にとらず、抗精神薬、抗生物質も避け、 そして必ず禁煙です。そうでなければ、ビオチンは有効に働きません。
時々、ビタミンCと ビオチンは一緒に摂ったほうが良いのでしょうかという質問が患者さんから来ますが、その必要はありません。 時間をあけて摂っても、さほど問題はなく、むしろビタミンCの過剰摂取に十分気を付けてください。

ここに書かれていることは、ドクター牧瀬が、延べ5万人以上の皮膚科領域の患者さんを、内科医の立場から診察した、つまり、多くの皮膚病は体の内部の問題が皮膚に現れたとみなして治療する根治方法です。
 しかし、ご自分の症状を正確に把握せず、ここに 書かれてあるサプリメントをとったり、勝手な治療法を行い、症状が悪化してもドクター牧瀬 はいっさい責任をとれません。

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