2020年以来、現在に至るまで新型コロナウイルス、変異ウイルスが猛威をふるい、世界中の人々を苦しめています。ワンクチンに頼りきらず、まず人が持つ体の防御システムである免疫力を日常的に少しでもアップさせておきましょう。
ホームページより少し詳しく説明しましたので、じっくりお読みください。

免疫力強化について

結論:適度な運動、サプリメント摂取、腸を整える、夜更かしをせず規則正しい生活をする、体を温めるため入浴(肩までつかる)、甲状腺機能をチェックする

1)ストレスホルモン コルチゾール

免疫に最も深く関係するのが、いわゆるストレスホルモンと呼ばれるコルチゾールです。このホルモンは免疫系に関わる細胞の数を減らしてしまい、これが過剰に分泌されると、風邪をひきやすくなったり、口唇ヘルペスができたりします。また、脳の海馬を萎縮させ、記憶力の減退にもつながります。血圧も上昇させ、血糖値も高くなります。
コルチゾールは副腎皮質でつくられそこから分泌されます。このホルモンの過剰分泌の最大の要因はストレスです。ストレスがかかると、脳の偏桃体を経由して、ストレス負荷が脳の深い部分(間脳)にある視床下部に達し、そこから副腎皮質刺激ホルモン放出(CRH)が分泌されます。さらにCRHは脳下垂体に作用し、そこから副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)の分泌を促します。
そして、 ACTHは副腎皮質を刺激し、そこからコルチゾールの分泌を促します。つまり、『ストレス  → 偏桃体 →  視床下部CRH ↑ → 脳下垂体前葉ACTH ↑ → 副腎皮質コルチゾール ↑』という流れです。また、コルチゾールは睡眠不足によっても過剰に分泌されます。したがって、コルチゾールの過剰な分泌をとどめ、正常な免疫機能をたもつには、ストレスの減少と十分な睡眠、この二つが非常に重要なのです。

2)ストレスを減少させるには

ストレスと言っても、2種類あります。精神的ストレスと肉体的ストレス。二つのうち精神的ストレスの方が肉体的ストレスよりも悪影響をヒトに与えます。肉体的ストレスは体を十分に休ませると、異常に強いものでなければ簡単に取れますが、精神的ストレスは軽度のものでも長引き、睡眠不足も重なったりして余計にコルチゾールが分泌されてしまう。
では、どうすればよいでしょうか?

a) まずは運動

体を動かすことです。筋トレ、有酸素運動、どっちでも良いです。あるいは単に歩くだけでも 良いです。できれば、ほんの少し汗をかき、ごく軽い疲れを感じるくらいの量が望ましいので、過度な運動は禁物です。運動すると、筋肉や骨から免疫を調節する物質が作られます。それがサイトカインという、免疫系をうまく働かせる潤滑油のような役割を持つ低分子のタンパク質です。代表的なものはインターフェロン、インターロイキンなど7~8種類あります。サイトカインが増え過ぎると、免疫が暴走して体に悪影響を及ぼす現象(サイトカインストームと呼ばれる。これがCOVID-19の最大の死因です)が起こりますが、適量であれば自然免疫と獲得免疫の両方がうまく働いてくれます。運動によって筋肉や骨を動かすと、サイトカインが適量作られ、免疫の仕組みが潤滑に機能します。特に骨を動かし、刺激すると、オステオカルシンというホルモン様タンパク質が分泌され、それは、テストステロンの分泌を促し、テストステロンは免疫系を強くしてくれます。

b)サプリメント ― 精神的ストレス対策のサプリメントは下記です。

ビタミンB群:ふつうビタミンB群という場合、ビタミンB1、B2、B3、B5、B6、B12、葉酸、ビオチンの8種類をまとめたものをいいます。
ビタミンB12:上記のビタミンB群のサプリメントに含まれますが、精神的疲労を回復するためには、さらに別個にB12を摂ることです。
ビオチン:これも、ビタミンB群のサプリメントに含まれますが、別個に補うことです。
マグネシウム:マグネシウムのサプリメントには、クエン酸マグネシウム、グリシン酸マグネシウム、リンゴ酸マグネシウム、L-トレオン酸マグネシウム、アスコルビン酸マグネシウム、アスパラギン酸マグネシウム、などいろいろあります。その中でも、L-トレオン酸マグネシウムは特に脳・神経系には効果的に働きます。
マンゴ葉乾燥エキス:主成分はマンギフェリンという天然フェノール化合物です。近年このマンギフェリンにカフェインに類似した作用があることが見いだされました。カフェインと酷似したパターンで脳波を活性化して、長期増強を促進するのです。つまり、メンタルエナジーの回復と増強です。計算能力も高まることは、人を使った治験でも証明されています。しかも、カフェインのもつ神経を興奮させる作用なしに、そういう効果があるのです。
ラクトフェリン:母乳の中にごくわずかに含まれる赤い色をしたタンパク質です。初乳が最も多く含有しています。免疫系の調節、抗ウイルスおよび抗細菌作用、抗酸化作用、抗炎症作用、最近はがん発生および転移の抑制作用も確かめられています。赤ちゃんが母乳を与えられたあと、すやすやと眠ることからおわかりになるように、ラクトフェリンには脳にも優しく働きかけ、鎮静作用をもたらします。 エンドルフィンを増加させるからです。また、腸の悪玉菌から鉄分を奪
い、その増殖を抑制し、善玉菌腸内細菌を増やし、腸を整えてくれます。先に述べた腸内細菌と同時に摂ると効果は倍増します。ラクトフェリンはインターフェロンαの体内での産生を促し、それがNK細胞を刺激し、その活性を高めますから、病原微生物による感染を防いでくれます。
メラトニン:時差ボケ対策に有名ですが、睡眠を深くしてくれます。若返りの効果もあります。

3)夜更かしをしない

夜はどんなに遅くとも午後11時までには床に就いてください。理想は午後10時までです。ホルモンは数多くありますが、それぞれが単独で働くわけではなく、他のホルモンと調和しながら、ちょうどオーケストラの楽器が他の楽器と共に一つのシンフォニーを奏でるように、人体という壮大な音楽をコントロールしています。特に成長ホルモン、副腎皮質ホルモン、甲状腺ホルモンは免疫機能に深く関係しています。これらがきっちり分泌され十分に働くには眠るタイミングが重要です。成長ホルモンは、午後11時~午前3時ごろ、特に就寝後3時間後に分泌がピークに達します。それと、血糖値が高ければ分泌が鈍りますので、夕食後、血糖値が下がる2~3時間以上あと、つまり9時か10時ごろには床に着くことが理想です。成長ホルモンは、甲状腺ホルモンのT4(テトラヨードサイロニン)からT3(トリヨードサイロニン)への変換を促進します。T3が生理活性が強く、これがうまく生産されなければ、代謝が遅くなり、免疫系にも悪影響がでます。副腎皮質ホルモンはおおまかに言うと、アルドステロン、コルチゾール、アンドロゲンになりますが、この中のコルチゾールは最初に述べたとおり、いわゆるストレスホルモンです。これが、ストレスによって過剰に分泌されてもいけませんが、過少になってもいけません。このホルモンは午前4時ごろから起床後の1時間以内に多く分泌されます。つまり夜更かしをして午前1時や2時ごろに就寝すると、このホルモンの分泌も悪くなるのです。数多くのホルモンは相乗的に働いており、古来、ヒトは日の出とともに目覚め、日没と共に安らぐようにプログラミングされているからです。そのリズムを変え、午前2時以降に就寝しても健康を保てるようにヒトが進化するには、あと数万年という時間がかかるでしょう。
そして、体内時計を乱さないように、規則正しい生活を送ることも大切です。

4)リンパ球の流れを良くする

これは免疫強化につながります。リンパ球はよく聞く言葉ですが、右図を参照してください。つまり、リンパ球は白血球の一つなのです。顆粒球(好酸球、好中球、好塩基球)や単球も免疫に関係してきますが、リンパ球のT細胞、B細胞、NK細胞は特に重要です。リンパ球は、血管とリンパ管を介して、病原体が侵入するリンパ節や扁桃などに出たり入ったりを繰り返し、全身をパトロールしています。ということは、リンパ球が体と出会う確率が高くなれば、病原体を撃退しやすくなります。そこで、リンパ球が全身を循環しやすいよう、血液やリンパの流れを良くすればいいわけです。そのためには先に述べたように適度な運動が助けになります。また、体を温めることも血液やリンパの流れを良くすることに役立ちます。例えば、風邪をひくと熱が出ますが、それはリンパ球が作るサイトカインが、脳の発熱中枢に作用して発熱を起こすからです。発熱はリンパ球の働きを高めるための防御反応の1つであり、体温が少し上がると免疫の力は全体的に高まると考えられています。ほとんどの人は心臓癌という癌を聞いたことはないはずです。心臓は24時間動きずめで、温度が高いのです。温度が高い場所は免疫系も強いので、癌細胞がよりつけないのです。入浴も当然、体温を上げるには役立ちます。ただし、運動のやり過ぎが良くないのと同様に、体温も上げ過ぎは禁物です。入浴時の温度は熱過ぎず、ストレスにならない程度にとどめることが肝要です。

5)プロバイオティクス:善玉腸内細菌

腸は最大の免疫器官だということを認識してください。 小腸の内側には小さな毛のような絨毛とよばれる突起が密集していますが、その間隙にパッチワークのようにパエイル板という器官が点在します。パイエル板はリンパ小節の集合体で、いわば免疫系をコントロールする一つの司令塔のような役割を果たしています。 また、小腸の上皮には腸管固有リンパ球が、上皮細胞5~6個につき1個ほど存在し、その数はすべての免疫系細胞の60%にのぼるといわれています。その他、粘膜固有層の粘膜固有リンパ球、そしてこれらの組織の下に、クリプトパッチと呼ばれる未分化リンパ球が集積する小リンパ組織が最近日本人によって発見されました。 ここでは腸管独特のT細胞がつくられています。したがって、腸の働きを健全にたもつことは、免疫を強くするのに非常に役立つのです。プロバイオティクスと似た言葉で、プレバイオティクスという言葉があります。ロとレの違いだけです。後者は前者が腸内で増えたり、あるいは定着しやすくするための材料となる物質です。オリゴ糖類や食物繊維類です。

6)甲状腺機能を念のためにチェック

特に女性は注意。この30年間に、女性の体温は1度低くなっています。36度を切る人が非常に多いのです。こういう人たちに共通しているのは、疲労感、便秘気味、冷え症、コレステロール値が高い、脈が遅い、集中力が足りない、ずんぐりと太り気味、顔もどこか全体的に浮腫気味、 毛髪がごわごわしている、白髪が増えた、生理不順、軽度の貧血などの症状を、いくつか兼ね備えていることです。思い当たることはないでしょうか。当然、免疫も低下してしまいます。
これらの症状をひきおこす一つの原因は甲状腺機能低下です。そこで、甲状腺ホルモンの検査をします。しかし、たいがいは正常とでてくるのです。 ところが、この正常というのがくせもので、正常範囲下限ぎりぎりの正常から、上限ぎりぎりの正常まであります。ぎりぎりで正常の場合は、治療は不必要とされてしまいます。
同じ人間でも、その日の体調によって数値は微妙に変わるということがほとんど考慮されず、「甲状腺機能には問題ありません」と機械的に処理されがちなのです。
私はこれを「隠れ甲状腺機能低下」とよんでいます。多くの場合チラージンなどの薬は必要なく、数種類のサプリメントでかなり改善されます。

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