主婦湿疹

全身にアトピー症状がでておらず、手だけ湿疹ができる場合の処置です。
下記の処置でたいてい、1週間以内できれいになります。
MA(1)MA(2)を重ね塗りする。日に、2回か3回。特に夜間は油紙で密封し、木綿の手袋をはめて寝てください。油紙は普通のものではだめです。手術用に使う、亜麻仁油でコーティングされているものです。もし見つけることができない場合、当方からお送りしますので、ご連絡ください。油紙で密封するのと、しないとでは、効果に雲泥の差があります。
深いところでは炎症が治まっていないため、表面的にきれいになってからさらに1週間ほどMA(1)ないしMA(2)を塗り続けてください。

*油紙で密封すること。
*きれいになったからといって、すぐに軟膏を塗るのを止めないこと。
この2点が重要なポイントです。これさえ守れば、非常に重症な主婦湿疹でも、ほとんど例外なく改善します。 ひび割れがあるようなところは、サリチル酸ワセリンを重ね塗りします。

水仕事をするときは、まず木綿の手袋をはめ、さらにゴム手袋をする。つまり、二重にしなければいけません。 日中、かさかさと、手がすぐに乾燥するようであれば、MA(0)というステロイドの入っていない軟膏を保湿クリーム代わりに、頻繁に塗るとよいでしょう。

サプリメントも食事制限もたいてい必要ありません。しかし、上記のような処置を行っても、2~3ヶ月後にすぐに湿疹がでてくるようであれば、サプリメントの摂取や、食事制限が必要となってきます。

貨幣状湿疹

読んで字のごとく、10円玉のような丸い湿疹ができてきます。膝下にでき始めることが多いのですが、中には、男性で、乳首から始まった人もいます。 高齢者に多いとされていますが、最近は若いアトピー患者さんにも増えてきました。

痒みは非常に強いです。これをステロイド軟膏なしに治すことは不可能です。まず、テラコートリル軟膏を塗り、その上にデルモベート軟膏を塗ってください。これらの軟膏は近くの皮膚科で処方してもらってください。

また、サプリメントはアトピーとは違って、結節性痒疹のサプリメントとほぼ同じです。漢方薬で治そうというような考えは捨ててください。あっと言う間に広がり、自家感作性皮膚炎を併発することがあります。抗生物質は、ジクロキサシリンに効果があります。
また、ビタミンCは貨幣状湿疹を悪化させます。もし、摂っておられたら、すぐに止めてください。

それで、治らなければ、メールでご相談ください。

白癬(はくせん)

いわゆる水虫です。白癬菌による湿疹は最初、円か楕円形に輪が描かれており、次第に中が詰まっていきます。
これをアトピーだと勘違いして、ステロイド軟膏を使用しても治りません。特に糖尿病の患者さん、あるいは糖尿病を発症していなくても、糖尿病家系の患者さんは注意して下さい。糖尿病の患者さんは皮膚の白癬菌に対する抵抗力が非常に弱いのです。

白癬には効果的な軟膏やクリームがあります。しかし、特に足の水虫はなかなか治りにくいのが現実です。そのため、ひどい場合は内服薬もあります。しかし、医薬品の内服には必ず副作用が伴います。可能なかぎり、少なくとも内服薬だけは避けたいものです。

下記のような自然な療法もありますので、参考に記載します。実際に患者さんが実施された療法です。
木酢にドクダミエキス、ヨモギエキス、ムクゲエキスなどを混ぜた液体を靴下の中に注ぎ、2時間ほど足を浸すと、1週間~10日間のうちに、一皮めくれるように角質がはがれ落ちます。その1回の処置で10ヶ月から1年間は水虫から解放されるということです。菌を殺す作用はありませんので再発しますが痛くも痒くもない、しかも副作用がまったくない、たった2時間の処置で、少なくとも10ヶ月ほどは水虫の不愉快な症状が消えるのですから優れた療法です。
インターネットで「ヨモギ ドクダミ 水虫」と検索してください。いろいろな商品名の製品が出てきます。

疥癬(かいせん)

この皮膚病は直系0.4mmほどのヒゼンダニ(疥癬虫)が皮膚の角層に寄生しておこり、通常疥癬と角化型疥癬(ノルウェー疥癬)の2種類があります。後者は非常に免疫の力が落ちた時に発症し、寄生するヒゼンダニの数は100万匹~200万匹です。通常疥癬の場合は数10匹以下です。ノルウェー疥癬の名前の由来は1848年にノルウェーの学者が最初に非常に悪化した疥癬の症例を報告したからです。

疥癬で気をつけなければいけないのは通常疥癬で、これは時々アトピーと誤診されます。全身に米粒~アズキ大の丘疹が多発し、かゆみに耐え切れないころに患者さんは来院されることが多く、特にアトピーの既往歴がある場合、アトピーの再燃と間違われることがあります。
ヒトからヒトに感染します。長時間患者さんの肌に直接接触するか、あるいは患者さんの使用した寝具や衣類に接触したときに感染します。高齢者から乳幼児まで、あらゆる世代に感染の可能性があります。薬の処方数から推測して、日本では年間、20万人前後が疥癬にかかるようです。この数字は決して少ないとは言えません。

教科書的には、ダニが産卵のために人の皮膚の角層下にトンネル状の横穴をつくる、いわゆる「疥癬トンネル」を探せば診断は容易となるのですが、これが細長い引っかき傷のように見えてしまい、事実上、診断がなかなか難しいのです。そして、アトピーだろうということで、ステロイド軟膏を処方されるのですが、もとより効くはずがありません。

夜間に非常にかゆみがますのが特徴だとされていますが、アトピーも夜ホットしたころに、急にかゆみがます例が多いので、これだけでは区別はつきません。
また、発疹は通常顔面頭部には見られないも特徴の一つだとされますが、アトピーの発疹だって、顔や頭にでない例はいっぱいあります。

やはり、ここでも問診というものが非常に大切だと痛感させられるのです。疥癬と正しく診断されれば、イベルメクチン(内服薬)やフェノトリンローション(外用薬)などの確立された治療法がありますから、心配しないでください。通常疥癬はせいぜい一ヵ月ほど完治します。
問題は、疥癬の可能性を皮膚科医が念頭においているかどうかです。患者さんの方からも、積極的に疥癬ではないでしょうかと、医師に聞いてください。

舌なめずり皮膚炎

幼児の、特に男の子に多い傾向があります。もちろん女児にもおこります。
• 昼間は紙マスクで保湿してあげる。唇のまわりの湿度が増すために、痒みがやわらぎ、舌なめずりが少なくなります。
• 弱いステロイドを塗る。
• 夜間、眠る前に、リップクリームを塗る。
これだけで、三日ほど良くなります。たった、三日間、ごく弱いステロイドを使うだけですから、その副作用など皆無です。しかし、これで治っても、しつこく再発を繰り返す場合は、耳鼻科に連れていき、鼻腔も診てもらってください。鼻閉がおこっている場合、口呼吸になり、舌なめずり皮膚炎も治癒しにくいのです。

伝染性軟属腫(いわゆる、水イボ)

小粒の真珠のような丘疹や隆起が多発することがあります。伝染性軟属腫ウイルスによっておこります。アトピーっ子によく合併します。痛くもかゆくもありませんし、1~2年で自然に消えていきます。
したがって、そのまま放置しておいてもまったく問題はありませんが、数が非常に多い場合、お子さんの外見を心配するお母さんがおられます。
また、しつこく3年も続くことがあります。そんなときは、ピンセットで取り除くか、最近は麻酔テープを使って、水イボを取る方法がありますので、お近くの皮膚科医にご相談ください。
個人輸入になりますが、商品名ZymaDermなる水イボ専門の塗り薬があります。
主成分はヨード、エキナセア、ニオイヒバで、9ヶ月の赤ちゃんから使えるほど安全です。インターネットで「ZymaDerm」と検索してください。

老人性皮膚掻痒症

50才を過ぎた人が時々、しつこいかゆみで診察を受けに来られることがあります。
老人性皮膚掻痒症といった、病名というより症状名(老人の皮膚がかゆい症状といっているわけですから)をつけられていることがあります。
共通する特徴は、かゆみが異常に強いということと、ステロイド軟膏を使っても、なかなか改善しないことです。また、若いころから、喘息も、花粉症も、食物アレルギーも何もなく、いわゆるアトピー素因を疑わせるものがなかったことです。
家庭菜園やガーデンニングなどの趣味で農薬を使うこともなく、新居に引っ越したわけでもなく、これといったストレスがかかる事件もなく、要するに何も思い当たる原因がなく、突然に湿疹ができ始め、かゆくて仕方がないのです。
こういう症例は皮膚がん(菌状息肉腫)か、あるいはどこかにがんが発生していることを疑うべきです。あるいは数年後に発生するがんの前駆症状だととらえるべきなのです。まず、大学病院に行き、専門家に精査してもらってください。
それでも、何も悪性のものが見つからなければ、運がよかったのであり、本格的にがんが発生する前に、ライフスタイルを徹底的に改善してください。特にタバコをやめ、肉食を避け、何らかの解毒療法をやり、可能なかぎりストレス・フリーの生活に切り替えてください。

もうすでに体の中で、良からぬ異常がおこっているわけで、それが皮膚に危険信号としてでているのです。その良からぬこととは、免疫系の異常で、それは老人の場合がんにつながる可能性が高いのです。

老人性掻痒症とは違いますが、老人性疣贅(ゆうぜい)、つまり中年以降にできる疣(イボ)があります。これが半年内に全身に多発し、かゆみを伴う場合は、Leser-Trelat(レーザー・トレラ)徴候と呼ばれます。

この場合、胃がん、膀胱がん、肺がんなど内臓の悪性腫瘍の合併が強く疑われます。しかし、これほど典型的な兆候でなくても、高齢者の異常なかゆみをともなう湿疹、あるいは多発するイボは、皮膚科医は悪性のものを常に念頭においておくべきです。

老人性皮膚掻痒症で来院した男性患者お二人に、検尿してもらったところ、潜血反応があり、一人は膀胱がんの腫瘍マーカーであるBFPが異常値でした。精査をすすめたのですが、そのままになっています。

毛孔性苔癬

毛孔に角質が充満して、表皮に盛り上がって、米粒大の丘疹をつくります。若い人に多く見られ、普通、痒みもないので治療は、もっぱら美容的な見地からなされます。アトピーとよく合併します。美容整形外科などで、レーザーを使って治療してもらうのも一つのやり方ですが、それでもうまくいかないときは、ぼくのクリニックではアミロイド沈着の処置と同じように、ジフルプレドナート入りの軟膏を使う密封療法をすすめています。

脂漏性皮膚炎

これは、意外と見落とされています。皮膚科外来に来る湿疹の2割~3割が脂漏性皮膚炎だとみなしてもよいほど、けっこう多い皮膚炎です。
乳幼児の頭部にひどくでている場合は、わりと簡単に診断がつきますが、成人のアトピーで顔の赤みや痒みを訴える場合、一見しただけでは鑑別が困難で、本当は脂漏性皮膚炎だったのにアトピーと間違われて治療されているケースもあります。特に頭部や顔(小鼻の近辺、口の周囲)に生じやすく、皮膚科からステロイド軟膏を漫然と処方されるものの、いっこうに良くならない場合は脂漏性皮膚炎も疑うべきです。頭皮の異常なフケの多さも、脂漏性皮膚炎によることがあります。
皮脂に含まれる中性脂肪が真菌により分解されてできる遊離脂肪酸が、皮膚を刺激して、一種の接触性皮膚炎をおこすのが原因とされています。マラセチアが原因となる菌と言われていますが、実際のところ、マラセチアが見いだされないこともよくあります。
ホルモン・バランスの乱れや、精神的ストレスなども、影響しているものと察せられますが、本当のところよくわかっていないのが現状です。
脂漏性皮膚炎も、おそらく4種類ほどに分類できるのではないかと思いますが、まだ、皮膚科学はそこまで発達していないのです。

しかし、脂漏性皮膚炎の少なくとも20%~30%にはマラセチアが、KOH検査で見つけられますから、念のために皮膚科で検査されることは大いに勧められます。
マラセチアなどの真菌が発見された場合、抗真菌剤入りのクリームを塗ると改善します。痒みや炎症が強い時はステロイド軟膏も併用します。

ここに書かれていることは、ドクター牧瀬が、延べ5万人以上の皮膚科領域の患者さんを、内科医の立場から診察した、つまり、多くの皮膚病は体の内部の問題が皮膚に現れたとみなして治療する根治方法です。
 しかし、ご自分の症状を正確に把握せず、ここに 書かれてあるサプリメントをとったり、勝手な治療法を行い、症状が悪化してもドクター牧瀬 はいっさい責任をとれません。

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