関節の痛み
関節リウマチと変形性関節症と、二つに分けられます。前者は、膠原病の一種で。女性に多く、男女比は1:3~5で、好発年齢は30~50歳です。原因不明の全身性炎症疾患です。つまり、関節だけでなく、皮下結節、間質性肺炎、肺線維症、乾燥性角結膜炎、心外膜炎、貧血などが合併してくることがあります。
後者は、加齢とともに関節にかかる負荷がたまり、軟骨が磨耗し変性していった状態、いわゆる関節のすり切れ状態と考えればいいいでしょう。45歳以下では男性に多く、55歳以上では女性に多く見られます
(rheumatoid arthritis : RA)
現在日本では人口の70万人がかかっていると言われています。女性に多く、男女比は1:3~5で、好発年齢は30~50歳です。関節滑膜の増殖により骨軟骨を破壊する慢性多発性関節炎を特徴とする、原因不明の全身性炎症疾患です。関節だけでなく、皮下結節、間質性肺炎、肺線維症、乾燥性角結膜炎、心外膜炎、貧血などが合併してくることがあります。
血液検査では、リウマトイド因子陽性、抗CCP抗体陽性、MMP-3値上昇、貧血、血小板増加、赤沈亢進、CRP陽性、血清補体価亢進、などが見られます。ただ、ここで問題なのは、リウマトイド因子や抗CCP抗体が陰性なのに関節リウマチに罹患していることがあるのです。リウマトイド因子は関節リウマチの患者さんの7~8割にしか陽性とでません。坑CCP抗体は関節リウマチには陽性とでて、全身性エリテマトーデス(この病気でも関節の痛みが生じることがあります)には陽性とはでないという特異性はありますが、それでも、関節リウマチの2~3割の人に陰性とでてしまいます。つまり、リ ウマトイド因子や抗CCP抗体だけで、関節リウマチかどうかを判断はしにくいということなのです。
最近のリウマチ治療の基本的考えは、関節破壊がおこらないまえに、早期に関節リウマチを発見し、積極的に免疫抑制剤や生物学的製剤などを使うということです。
下の図を見てください。早期に治療を始めなければ、関節破壊がおこります。そして、いったん変形がおこれば、今の医学ではもとにもどせないのです。
つまり、更年期障害などからくる関節の痛みではなく、関節リウマチであると早期に診断される必要があるのです。
その診断基準が、2010年6月に欧州リウマチ学会(EULAR)総会で関節リウマチの新分類基準が発表さました。この新分類基準は、EULARと米国リウマチ学会(ACR)が合同で作成したもので、23年ぶりの改訂です。(左の画像をクリックすると拡大されます)以上のチャートは、患者さんが関節破壊を起こさない前に、リウマチ専門医が、関節リウマチを早期に診断する手順をまとめてあるものです。ですから、しろうとや一般内科の医師にとっては、参考にはなっても、現実的にはなかなか使いづらいチャートです。
そこで、簡便な関節リウマチのスクリーニング法として聖路加国際病院の岡田正人先生が勧めるのが、欧州で広く利用されている関節リウマチのスクリーニング基準です。
MCP関節を握り(写真)、患者が痛みを訴えれば、スクイーズサイン陽性と評価する。3項目のうち2項目当てはまれば、関節リウマチの可能性が高い。
*MCP関節とは手の指のつけねにある関節
抗CCP抗体が高値の場合、急激に骨破壊にいたる傾向がありますから、必ず専門医と相談してください。 そういう場合は、すぐに免疫抑制剤(MTX:メトトレキサート)や生物学的製剤(エンブレル、レミケード)を使わねばならないこともあります。
特に抗CCP抗体が100以上の場合、MTX(メトトレキセート)などだけでは不十分で、生物学的製剤(TNF-α阻害薬、抗IL-6受容体抗体、CTLA4抗体)も足さなければいけないかもしれません。 これは専門医の指導にしたがってください。高価で副作用の多い薬ですが、現代医学の今の段階ではやむを得ません。骨破壊による変形を防ぐことがまず必須です。 へたに代替療法に走ってはいけません。
爪をもむ刺絡療法だけでは手遅れになるのです。
また、当然のことですが、免疫抑制剤や生物学的製剤を使う場合は、肝炎の既往や、あるいは肝炎ウイルスのキャリアーでないかどうかなどのチェックは必ずしてもらってください。
ただ、専門医でもビタミンやミネラルに詳しい医師を選んでください。
日本にはリウマチ専門医の制度がありますが、専門医はひたすら現代医学からみたリウマチの治療のみを学んでおり、漢方医学、アーユルヴェーダ医学、チベット医学 (山岳という地理のため、チベットには関節を痛める人が多く、そのためリウマチに関する治療は非常にすすんでおり、関節痛を8つに分類しています。 現代医学はたった2つですが)、などにも造詣の深い医師がほとんどいないのは残念です。 日本よりリウマチ学がはるかにすすんだドイツのリウマチ専門医ですら、チベット医学のリウマチ医療も真剣に勉強しています
食事には注意
ミルク、チーズ、牛肉、豚肉、できれば鳥の肉も避けてください。要するに和食に徹しなさいということです。
昔、日本では、働きすぎによって、膝関節の軟骨が摩滅しておきる変形性関節症は多かったのですが、この関節リウマチは多くはありませんでした。肉食をしだすようになってから増えてきたのです。一般的にいって、関節リウマチを含む、自己免疫疾患には、肉食はほとんど絶対的に禁忌です。
ここに書くまでもないことですが、変形関節症、関節リウマチ、いずれにせよ食事には十分注意を払い、ジャンクフードや白砂糖は避けて下さい。
年に一度は確かな指導のもとで、断食をするのもいいでしょう。
それが無理なら、朝食だけは抜くというミニ断食もすすめられます。とにかく、現代人はカロリーの取り過ぎです。日に3度きっちり食べなければいけないというようなアメリカ式の栄養学は、それこそ大間違いで、アメリカは世界で最悪のリウマチ王国になっています。
日本では車椅子での生活を余儀なくされるほどの関節リウマチの患者さんは多くはありませんが、欧米では非常に多くのリウマチの患者さんが車椅子を必要としているのです。
人間をまるでガソリンで走る車のような物質としかみず、単純なカロリー計算を基礎とした栄養学では、病気は決して治らないのです。その人に合せて、食事は日に1度でも2度でもいいのです。
(ただし、血糖値スパイクがおきる人や、糖尿病の人は、食事は3食きっちりと食べてください)。
私事で申し訳ないのですが、私は日に2度です。3度も食べると、ニキビが出てくるのです。つまり、朝食をとると、どうしてもカロリー過剰になってしまうようです。
関節リウマチの患者さんの中には、胃酸とペプシンの分泌の悪い人がいます。すると、せっかく良いものを食べても消化・吸収されにくくなり、治癒がうまく行きません。 しかし、塩酸ベタインなどのサプリメントを摂る方法もありますが、慎重になさった方が良いです。このサプリメントの摂り方はけっこうむつかしいのです。
酢は胃酸の分泌を促進させますから、寿司は関節リウマチには非常にすすめられます。つきだしにショウガがついていますから、なおさら良いのです。 ショウガには、炎症を誘発するプロスタグランジン、ロイコトリエンなどの働きをブロックする働きがあります。 それを経験的に知っていたのでしょうか、古来、インドや中国では関節の痛みにショウガを食べていました。
また、消化酵素を補うことも大切です。パンクレアチン、パパイン、ブロメライン、トリプシン、キモトリプシンといった酵素が配合されているものを選んでください。特に関節リウマチにはアレルギーが関与しているかもしれませんので、タンパク質の十分な消化は必要です。このサプリメントは次に述べる変形性関節症にもすすめられます。
膝が悪いので診察してもらったら、胃酸の話をされ、消化酵素をすすめられたと、不思議がらないでください。むしろ、膝だけしか見ないことの方がおかしいのです。
瀉血も効果があります。しかし、中国や韓国の伝統医学を行う医師たちは、この病気に積極的に瀉血を行います。瀉血する部位は、おおむね経絡にそった、いわゆる鍼灸のつぼを目安に行われますが、医者の力量、経験に応じて、伝統医学にうといものにとっては想像もつかない場所から瀉血をすることがあります。例外なしに、顕著な効果があります。現代医学オンリーのリウマチ専門医も、ぜひ学んで日常の治療に取り入れてほしいものです。
サプリメントは、月桃、プロテオグリカン、腸溶性ラクトフェリンなどを積極的にお摂りになると良いでしょう。
また、オメガ3系統の不飽和脂肪酸を多く含む、魚油やフラックスシードオイルは抗炎症作用がありますので、積極的にすすめられます。ただ、問題は、それらの油は、温かく、酸素の多い血流に入ると、すぐに酸化されてしまうということです。ですから、そういった酸化を防ぐ工夫をした油のほうがずっと効果があります。
関節の痛みがあるとき、最も重要な治療のポイントは、すみやかにリウマチ専門医にかかり、それが、関節リウマチなのか、あるいは変形性関節症なのか、SLEからくる痛みなのか、あるいは更年期障害などからおこる痛みなのか、鑑別してもらうことです。もし、関節リウマチと診断された場合は、関節の変形がきていない初期の状態で、医薬品をつかって治療することです。
先に述べたサプリメントは非常に役に立ちますが、それを主体にしてはいけません。あくまで、サプリメント本来の意味である、治療を「補う」地位でしかありえません。関節リウマチに使う医薬品と一緒にお摂りになっても、普通は問題ありませんが、念のために主治医と相談されてからお摂りください。
それと、夜はどんなに遅くとも、午後11時までには床に就いください。理想は午後10時までですが。
その分、朝は早くおきてけっこうです。同じ8時間睡眠をとるのであれば、夜1時に寝て朝9時に起きる より、夜10時に寝て朝6時に起きる方が、健康のためにはいいのです。
それは、成長ホルモンの分泌の関係からです。特に午後11時~午前2時あたりに成長ホルモンは分泌されます。入眠できなくてもかまいません。体を横たえることにも意味があるのです。休日などで、朝に十分寝ることが可能な場合は、とりたてて早起きする必要はありません。寝ていたいだけ寝ておられてけっこうです。つまり、夜更かしが、良くないということです。どんな病気も夜更かしすると、非常に治りが悪いのです。ましてや、午前2時以降に寝る人は、どんな病気もまず治らないと言っても、言い過ぎではないくらいです。
成長ホルモンは80才になっても分泌され、非常に多彩な働きをします。単に背丈を伸ばすだけではないのです。「成長ホルモン 若返り」と検索してください。医者を30年以上やって、最近やっとわかりだしたのですが、究極の健康法/アンチ・エイジング法の一つは「早寝」です。
これは関節リウマチにもあてはまります。多くの患者さんが、早寝をするだけで、関節の痛みが楽になったと言われます。
最近、抗マラリア薬(ヒドロキシクロロキン)が関節リウマチに非常に効果があると報告されています。これは生物製剤とくらべてかなり安い薬です。現在のところSLEには健康保険が適応されますが、関節リウマチには適応されません。しかし、近い将来、関節リウマチにも適応されることになると思いますから、一度、主治医にきいてください。
ここに述べることは、あくまで一般的な参考としての情報であり、読者が医学知識を増やすための自習の助けになるものであり、それを越えるものではありません。
また、ご自分の症状を正確に把握せず、ここに書かれてあるサプリメントを摂ったり、治療法を行い、症状が悪化しても、いっさい責任はとれません。 インターネットにより、Dr.牧瀬のアドバイスを受けられたい方は、「ご相談フォーム」よりご相談下さい