CKDとは「Chronic Kidney Disease」(慢性腎臓病)の略です。
腎臓病の分類は煩雑で、専門家のあいだでも、未だに完全な統一がなされておらず、けっこう厄介なのです。この分類の煩雑さも一因となり、日本国民の8人か9人に一人は腎機能に異常があるにもかかわらず、未発見のままで、気がついたときは、かなり進行してしまっているという事態がおこっています。実のところ、メタボリックシンドロームの検診よりも、はるかに重大なことなのですが、一般にはまだ十分に認識されていません。
したがって、もっとわかりやすく腎機能の異常をとらえて、早期に適切な治療を行うべきだということで、CKDの概念が提唱されたのです。CKDをひきおこすものとしては、いろんな腎臓病があります。ネフローゼ症候群から始まって、IgA腎症、ループス腎炎、糖尿病性腎症、腎硬化症、多発性腎嚢胞腎、etc.まで、幅広く含まれます。これらの診断・治療には高度な専門的知識が必要です。
そこで、とりあえず、簡単なスクリーニングでCKDを見つけ出し、腎臓病専門医に引き渡しましょうということなのです。医療がどんどん専門化していき、私たちの手が届かないものになっていく恐れがありますが、現在のところ、止むを得ないでしょう。
CKDの定義は、次の項目のいずれか、あるいは両方が3ヶ月以上続いた場合です。
- 尿異常、画像診断、血液、病理で腎障害の存在が明らか
特に蛋白尿の存在が重要です。 - 糸球体濾過値が60mL/min/1.73m2未満で、腎機能の低下が確認される
実際的には、検尿と採血だけです。②は血清クレアチニンの値がわかれば、特別な計算式で算出されます。そして、+2以上の蛋白尿、蛋白尿と血尿がともに陽性(+1以上)、糸球体濾過値<50mL/min/1.73m2、のいずれかに該当すれば、腎臓専門医にかかるべきだというのが、日本腎臓学会の主張です。
(もしあなたが糸球体濾過値:GFRを知りたければ、日本慢性腎臓病対策協議会のウェブサイトhttp://j-ckdi.jp/を開き、→ 「CKDについて」 → 「腎機能をチェックしましょう」と入り、そこにある計算式に、健康診断で得た血清クレアチニンの値と、年齢、性別を入れれば、自動的にでてきます)。
心臓、消化器、血液、内分泌系などとくらべて、腎臓に関しては、どういうわけか、ずっと研究者が少ないのです。
「肝心かなめ」は「肝腎かなめ」とも書かれます。それほど重要な臓器であるにもかかわらず、肝臓や心臓よりも、圧倒的に研究されていないのです。それは、代替療法でも同じです。ビタミンやミネラルをつかった腎機能強化処方は非常に少ないのです。
しかし、漢方医学では、腎臓はきわめて真剣にとらえられ、昔から、さまざまな漢方薬があります。そして、肝臓との関係を考慮して(まさに肝腎かなめ)、多彩な漢方薬の組み合わせが処方されます。早期のCKDには、すこぶる有効です。漢方医学に詳しい人に相談してください。
しかし、インターネットや電話だけで漢方薬を処方するようなところからは、絶対に漢方薬を購入してはいけません。なぜなら、漢方薬を処方するには、いわゆる「証」という、一種の体質の判断が重要で、それを見極めるには、実際に診断しなければ不可能だからです。
次に、日常に比較的よく遭遇する代表的な腎炎だけをとりあげます。治療の中心はステロイド剤です。ビタミン、ミネラル、などのサプリメント、あるいは漢方薬にだけ頼っては危険です。 腎炎に関してはこの基本を忘れて、下手に代替療法に走ると、治るものも慢性化してしまいます。何でもかんでもサプリメントを最初にもってくるのは間違いです。
ネフローゼ症候群
多くの原因疾患から共通の症状を呈する症候群で、次の4つを特徴とします
①蛋白尿(日に3.5g以上) ②低蛋白血症 ③高脂血症 ④浮腫
原発性と続発性があり、前者は腎臓そのものに疾患が最初におきたために生じたものをいい、後者は先に身体的疾患があり、そのためにネフローゼ症候群をおこしたものをいいます。
原発性は、微小変化群、膜性腎症、巣状糸球体硬化症、膜性増殖性糸球体腎炎の4つがあり、続発性にネフローゼ症候群をおこす病気はかなりありますが、代表的なものは、SLE、糖尿病、多発性骨髄腫、Schonlein-Henoch紫斑病です。
ここでは、原発性の中で最も多い、微小変化群について簡単に説明します。
微小変化群
ネフローゼ症候群の臨床症状を示す腎炎のうち、小児の場合8割がこのタイプで、大人の場合は3割を占めます。
特に小児の場合、予後はよく、ステロイドによく反応し、完治する例が非常に多いのです(8割~9割が完治)。
したがって、このタイプの腎炎にはステロイド使用をすすめます。
ステロイド使用に盲目的に頭から反対する自然療法指向の人たちにとっては、私の推薦は一見奇異にうつるかもしれませんが、ステロイドを使って完治するなら当然使うべきなのです。
いけないのは、命を取らない、しかもステロイド使ったからとて決して完治しない病気に(例えば関節リウマチなど)、漫然だらりとステロイドを使用することなのです。
一定期間のステロイド使用によって完全に治り、かつ他の治療手段が存在しないのなら、多少の副作用が出ても使うべきなのです。そこをこわごわと不十分な量のステロイドを使っていると、治る病気も治らなくなります。
最初の1~2週間でむくみもとれ非常によくなったように見えますが、ここでステロイドを中止してはいけません。すぐに再発します。
最低一ヵ月は十分な量を使い、漸減しながら、半年から一年間はステロイドを使います。
特に若いドクターたちの中には、ステロイドの副作用が頭から離れないらしく、この微小変化群に対して不十分なステロイドの使いかたをする人がいますが、それは誤りです。
したがって、このタイプのネフローゼ症候群の治療はステロイドが主体です。
ビタミン、ミネラルなどのサプリメントはあくまで補助的な役割です。そこを間違って、健康食品販売店の宣伝にのせられて、ステロイド治療を止め、いい加減な代替療法に走ってはいけません。
しかし、ビタミン、ミネラル、ハーブを補助的にとるのは大いにすすめられます。例えば桃の葉や樹皮は昔から腎炎に使われてきました。コリンやイノシトールも大切です
Ig A 腎症
慢性腎炎の6割がIgA腎症です。免疫グロブリンの一種であるIgAが免疫複合体を形成し、糸球体の一部に沈着します。抗原は不明です。
フランスを含めた南欧、そして日本に多く発症し、北米や北欧では少ない病気です。黒人ではまれですが、アメリカ・インデアンには多発します。未だに原因は不明ですが、人種的要因もあるようです。
発症しても数年は腎機能も血圧も正常なので、ほとんどの例が、健康診断で蛋白尿や血尿で偶然に発見されます。発症後10~20年で、2割から3割が腎不全に移行します。最終的には約5割が透析を受けるまで悪化します。
しかし、初期の場合、ステロイドのパルス療法と扁桃腺摘出で8割は寛解しますので、下手に代替療法に走ってはいけません。必ず専門家に診てもらってください。ここでも、ステロイドの大量療法を恐れてはいけません。
降圧剤のACE阻害薬や抗血小板薬などが使われます。
α-リノレン酸から、最終的に代謝されてくるエイコサノイドには抗炎症性作用があるものが多く、それらのエイコサノイドが腎炎の悪化を防いでくれます。ですから、魚油などを積極的に摂るべきでしょう。
ただ、IgA腎症にせよネフローゼ症候群にせよ、こと腎炎に関しては、他の病気にまして、しろうと判断でサプリメントをとっては危険です。すでに、多くの患者さんが何らかの医薬品をとっていることと、カリウムやナトリウムなどの電解質のことも考慮に入れなければいけないからです。必ずビタミン、ミネラル、ハーブに詳しい医師に相談してください。
中等以上に進行したIgA腎症には、代替療法も大切ですが、積極的にステロイドの使用(パルス療法も含む)を考慮すべきなのです。
ふくらはぎ運動
また、どんなタイプの腎臓病でも透析にまでなりたくないものです。それには、特にふくらはぎの運動も助けになります。その運動の具体的なやり方については http://www.naizou.jp/ を開けてください。
瀉血
腎機能を高めるために、吸い玉療法に使う吸い玉を、左右の腎臓が位置する、背中の高さの部位に吸いつかせ、そこから瀉血する方法があります。一般的な腎機能強化に非常に効果があります。
また、すぐ近い将来、おそらく10年以内、遅くとも15年以内、再生医療の素晴らしい発達によって、自分の細胞から、自分のDNAとまったく同じDNAをもつ腎臓が再生されるでしょう。そして、やがて透析という治療そのもがなくなります。それまで、希望をもってがんばってください。
ここに述べることは、あくまで一般的な参考としての情報であり、読者が医学知識を増やすための自習の助けになるものであり、それを越えるものではありません。
また、ご自分の症状を正確に把握せず、ここに書かれてあるサプリメントを摂ったり、治療法を行い、症状が悪化しても、いっさい責任はとれません。 インターネットにより、Dr.牧瀬のアドバイスを受けられたい方は、「ご相談フォーム」よりご相談下さい
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