患者さんの本音、(また医者の本音でもあるのですが)「バ~カこくでね~ど、先生、塩っけのないものなんか、食えね~よ!」と、いう声がきこえそうです。しかし、たいていの患者さんは礼儀正しく、反抗の言葉は発しません。そこで、また医者は、続けて「タバコを止め、お酒もほどほどにし、適度な運動をし、毎日新鮮な野菜や果物をとりなさい」と、聞くまでもない、わかりきった指導を行うのです。
もっとひどいのは、ナトリウム「Na」としては3グラム以内にするべきであるという指導です。食塩はNaCl ですから、ナトリウム3グラムは、7.62グラムの食塩に含まれています。ナトリウムの分子量は23、 塩素(Cl)の分子量は35.5ですから、食塩の量はNaの量に2.54「=(23+35.5) ÷23」をかければでてきますが、こんなことを説明する医者はほとんどいません。「Na」は、食塩だけに含まれているのではありませんから、厳密には「ナトリウムとしては」という表現になるのでしょうが、普通の食生活では、ほとんどの「Na」は食塩に含まれています。患者さんを煙にまく衒学的(pedantic)な表現で、患者さんの現実生活など、何一つ考慮していないという、きわめて不親切な指導です。
なぜこういういい方になるかというと、アメリカでは、よく、「ナトリウムは~グラム以内におさえるべきである」と表現されるからです。特に心臓を中心とした循環器系の分野においては、日本の医学界は、いまだにアメリカの医学に追従していますから、非現実的ないいまわしになるのです。
もし、あなたが「ナトリウムの摂取は日に3グラム以下にしてください」と医者にいわれたら、すかさず、「先生、食塩としては何グラムですか?また、具体的に、その指導はどうやって守るのですか?」と聞き返しましょう。もし、「ナトリウムは、食塩としてはおよそ7~8グラムです」という答が即座に返ってこなかったり、しどろもどろの回答である場合は、降圧剤の処方も遠慮した方が良さそうです。降圧剤が高圧剤になりそうです。
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