ただし、ここで私が主張したいのは、降圧剤をできるだけ使わないでという条件付きです。なぜなら、当然ですが降圧剤には副作用があるからです。たとえば、非常によくつかわれる降圧剤の一つACE阻害薬(アンギオテンシン変換酵素阻害薬)には肺癌をおこす副作用があると報告されています。もともと、この薬の副作用として空咳が服用者の20~30%にみられます。しかし、肺癌もひきおこすことがあるのです。これは、昨年(2018年10月24日)BMJオンライン版に発表されています。
https://www.bmj.com/content/363/bmj.k4209/related(英文)

BMJとは、British Medical Journalの略称ですが、現在はこの略称の方が正式名となっています。これは世界でも最も権威のある医学専門誌の一つです。そこに、カナダのマギル大学腫瘍疫学准教授Laurent Azoulay氏は、年齢や性、体重、喫煙や飲酒の習慣、肺疾患の既往歴などの因子を考慮して解析しても、ACE阻害薬を服用すると肺がんリスクが14%高いと発表したのです。(正確にいうと、同じたぐいのARBアンギオテンシンⅡ受容体拮抗薬と比べると、14%高いということですが、いずれにせよ、副作用には肺癌があるのです)。

これはあまりにも深刻なインパクトを高血圧治療に及ぼしそうなので、こう発表した准教授ご本人が、「医師が必要と判断した場合にはACE阻害薬の服用を中止すべきではない」と強調しているのですが、「医師が必要と判断した場合」とやんわりと深刻さをぼかしています。じゃあ、どういう場合に医師はACE阻害薬が必要だと判断するのでしょうか? そこのところを製薬会社や学会に遠慮している気遣いが読み取れます。

カプトリル、レニベース、セタブリル、アデカット、インヒベース、コバシル、コナン、タナトリル、などはACE阻害薬の商品名です。高血圧で薬を服用している人は、一度はきかれたことがあるかもしれません。これらを5年以上にわたり摂ると、肺癌のリスクが高まると証明されてしまったのです。さあ、あなたであればどうしますか? とうぜん、他の降圧剤に変えてくれと医者に頼むでしょう。

しかし、変えたとしても、ACE阻害薬と同じように、アシタバのところでながながと説明したRAASに作用するARBも、ACE阻害薬よりも肺癌の発生率は少ないのですが、クレアチンを上げる副作用があります(腎機能に悪影響を与えていることを意味します)。

他の降圧剤も、さまざまな副作用があります。例えば、カルシウム拮抗薬(商品名:アダラート、ニパジール、ノルバスク、アムロジン、ヘルベッサーなど)には、動悸、頭痛、ほてり感、浮腫、徐脈、歯肉肥厚などの副作用があります。歯茎がはれる、口の中が痛い、食事がしにくいといった症状が、カルシウム拮抗薬の副作用から生じているとは、なかなか気づけないことは多いものです。

非常によくあるケースですが、会社の健康診断で高血圧を指摘された40代のサラリーマン。家のローン返済もまだまだ残り、子供たちの教育費もさらに増え、ここでくたばってしまえば大変ということで、さっそく降圧剤を服用し始めます。すると、とたんにセックスが弱くなります。しかし、本人はそれが降圧剤のせいとは気づけなく、年のせいだと勝手に解釈するのです。

 

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