本態性高血圧(これといって明確な原因がない普通の高血圧)か、あるいは他の疾患から由来して血圧が高くなっている(二次性高血圧)かが、最初に鑑別されなければいけません。この基本を間違うと、不必要な降圧剤を重ねて処方されることになります。特に、3種類以上の降圧剤を服用してもコントロールしにくい場合は、必ず二次性高血圧もうたがい、病院で精査してください。これは、医者が気をつけなければいけないことなのですが、多忙な医者は二次性高血圧の可能性について、ついつい見落としてしまいます。
高血圧患者さんの10人に1人ほどが二次性高血圧であるといわれています。130/80mmHg 以上が高血圧とされる時代にあっては、6000万人が高血圧になります。その1割は600万人です。600万人が、後述する病気(腎血管性高血圧、原発性アルドステロン症、褐色細胞腫、漢方薬や医薬品の副作用など)が原因で高血圧がおこっているにもかかわらず、「本態性高血圧」と誤診されているのです。この事実は戦慄的です。いいですか、「600万人の誤診」なのです!!
これは日本に限った数字です。世界では、18歳以上の高血圧患者推定数は11憶人以上です。Lancet(2016年11月15日オンライン版)。この10%は「1億1000万人」です。開発途上国では、二次性高血圧の診断は日本以上に難しいかもしれませんので、もっと多くの高血圧患者さんが誤診されているはずです。つまり、どんなに少なく見積もっても「1億人以上の誤診」です。
ところが不思議なことに、世界の高血圧学会はこの戦慄すべき誤診の数に、あまり真剣に対応しようとはしていません。基準値140/90mmHgか130/80mmHgの論争も大切ですが、この驚愕的な誤診の数をもっと真摯にとらえ、特に医者に対し、「二次性高血圧に厳重注意!!」という強烈な警告のメッセージを発すべきです。患者さんは、高血圧学会の無頓着さに怒りを発しなければいけません。医者の私が怒っても仕方がないのです。患者さんが怒らなければいけません。
「怒れ、患者さん!!」なのです。(私は怒られないように、真剣に診ています!!)
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