普通に見られる不整脈のうち20~25パーセントはまったく無害ですが、中には致死的なものがあるので、専門家の判断がこれほど大切な症状はありません。 しかし、専門家の間でも、治療に関しては意見が分かれることがあります。 また、リスモダン、シベノール、サンリズム、キニジン、アスペノン、アンカロンなどの抗不整脈剤が使われますが、それらを使っている患者さんの中には、 そういう薬を使っているとかえって気分が悪くなると訴える人も多いのが現状です。
心筋梗塞、狭心症、僧帽弁逸脱、といった心臓病関係以外に、甲状腺の問題、高血圧、閉経、コーヒーの飲みすぎ、砂糖のとりすぎ(インスリンとアドレナリンの変動をおこすので)、 アルコールのとりすぎ、日常のストレス、マグネシウム不足、避妊用のピルを服用している場合などに不整脈はおこりがちです。心筋の働きをよくするCoQ10を服用すると、 不整脈を生じる人がごくたまにいます。
とくに甲状腺機能亢進症の場合、悪化すると、まったくでたらめな脈の打ち方をします。また、高山病の一つの症状としてもおこります。 私は10年前、高度3600メートルほどのチベットの首都ラサに行ったとき、高度に順応するまで4日ほど、ずっと不整脈がありました。 しかし、6日目ごろから、体が高度に順応すると、自然に消えていきました。
右心房にある洞房結節というところから一定の間隔で発生した電気信号が、心臓の筋肉に伝わり、リズムをもって心臓は収縮を繰返すのですが、 この電気信号の伝わり方のどこかに異常がおこり、不整脈が生じます。

3つに分類できます。

  1. 期外収縮:脈が飛んだり、抜けたりする。洞房結節以外の場所で電気信号が発生することによって生じます。

    • 心房性期外収縮
      異常な電気信号が心房から発する場合。肺静脈、上大静脈などからも信号が発せられることがあります。

    • 心室性期外収縮
      異常な電気信号が心室から発する場合

  2. 徐脈:脈が遅い。ボーッと意識が一瞬なくなる。ひどいときは失神します。

    • 洞不全症候群
      洞房結節の異常でうまく電気信号の発生が行われない。脈拍40以下が多い

    • 房室ブロック
      洞房結節で電気信号は発生されるのですが、信号が心房から心室へと伝わっていく過程に障害があります。その程度によってⅠ~Ⅲまでに分類します。Ⅰの場合、治療は不必要です。

  3. 頻脈:ドキドキと脈が速くなる。

    • 心房細動
      心房内で無秩序な電気信号が多発し、心房が細かく動いている状態で、脈はまったく不規則で、絶対性不整脈とよばれます。高齢者にはよく見られ、短期的には心臓のポンプ機能には影響が少ないのですが、心房の中に滞留した血液が血栓となり、それが他の動脈にとび、脳梗塞や肺塞栓を引き起こすことが怖いのです。

    • 心室性頻拍
      心室性期外収縮が連続した病態と考えられます。心筋梗塞や狭心症の後、数週間~数ヶ月によくおこります。ポンプ機能が低下し、正常な量の血液を送り出せなくなることがあります。その結果、血圧が低下する傾向があり、続いて心不全が起こりこともあり、危険な不整脈です。

    • 心室細動
      特に心筋梗塞の際におこります。心臓のポンプ機能が働かず、脳への血流が途絶え、命にかかわる、重篤な不整脈です。血流がとだえ、生命に危険を及ぼす、きわめて重い不整脈です。

    • WPW症候群
      洞房結節から発生した電気信号が伝わる正常な伝導系以外に副伝導路と呼ばれる別の伝道系をもっている人がいます。この場合、電気信号がその副伝導路をとおり、正常の伝道よりも早く心室に伝わってしまいます。心電図にはΔ派という特徴的な波が現れます。正常な伝道路と副伝導路を、電気刺激が旋回するために頻脈がおこります。

以上のように簡単にまとめましたが、最近はカテーテル・アブレーションという優れた治療法が確立されていますので、不整脈の種類によっては完治することも期待できます。 ただ、日常の診療で非常によくみかけるのですが、治療の必要もないのに、抗不整脈剤を服用している患者さんたちです。必ず、セカンドオピニオンを他の循環器専門医にきいてください。 投薬の必要がない不整脈の場合、サプリメントで血液をサラサラにして、血栓などが生じないように十分注意してください。 そして、そういうサプリメントをとっていると、不整脈自体もいつのまにかなくなることも多いのです。
そして、不整脈を解消する薬は、たしかに不整脈を抑えることができるのですが、結果として他の病気での死亡率が高くなすることもありえます。 つまり、致死的な不整脈以外には、抗不整脈剤は非常に慎重に使わなければいけないということです。

オメガ3系不飽和脂肪酸(魚油、フラックスシードオイル、エゴマオイル):医薬品による心臓のリズムを正常化したばあい、不整脈による死亡率は減っても、他の病気による死亡率が高まるのに反して、魚油やフラックスシードオイルやエゴマオイルではそういう危険なことはあり得ません。 もう十年も前のランセットという医学専門学術誌に、イタリアで行われたGISSI-Prevenzioneという1万1千人以上が参加した大規模な試験が発表されています。それによると、日に1000mgの魚油をとったグループと、プラセボ(偽薬)をとったグループを比較したところ、前者の方が、心・血管系の病気による死亡率が30%減少し、突然死が45%も減少しています。魚油の効果はとり始めてから3ヵ月かかります。 また、不整脈がある場合、血栓が脳に飛びやすく、脳血栓をおこす可能性が非常にたかまります。それを防ぐにも、オメガ3系統の不飽和脂肪酸を摂るのは、役にたちます。
マグネシウム:心機能を助けるために服用しているジギタリスや利尿剤そのものが、マグネシウム不足をおこすことがあります。しかし、マグネシウムを不整脈改善のために服用するときは、少ない目から慎重に補い始めてください。つまり、150mg/日くらいからです。
亜鉛:すでに抗不整脈剤を摂っている人は特に摂ってください。セレンやグルタチオンも助けになることがあります。

ここに述べることは、あくまで一般的な参考としての情報であり、読者が医学知識を増やすための自習の助けになるものであり、それを越えるものではありません。
また、ご自分の症状を正確に把握せず、ここに書かれてあるサプリメントを摂ったり、治療法を行い、症状が悪化しても、いっさい責任はとれません。 インターネットにより、Dr.牧瀬のアドバイスを受けられたい方は、「ご相談フォーム」よりご相談下さい

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