(1) マーガリンについて
マーガリンはコレステロールが少ないため健康に良いとされることもありますが、注意が必要です。原料となる大豆油やコーン油などのリノール酸を含む油に水素を添加し、常温で固体を保つ飽和脂肪酸に変換します。これにより、体に有害なトランス型脂肪酸が生成され、プラスチックオイルとも称されます。
トランス型脂肪酸は化学式は同じでも、必須脂肪酸としての機能がなく、体内で消費される際にビタミン、ミネラルを大量に消費します。さらに、水素添加過程でジヒドロ型ビタミンKという有害物質が生じることも明らかになりました。
一方で、牛や羊の肉にもトランス型脂肪酸は少量含まれていますが、ジヒドロ型ビタミンKは少ないため、それを気にする必要は少ないでしょう。ただし、これらの肉にはアラキドン酸が多く含まれており、これが悪性エイコサノイドを産生するため、摂取は控えめにすることが推奨されます。
(2) チョコレートはバレンタインデイにだけ
チョコレートを食べる患者さんは非常に治りがよくないのです。含有されているカカオに活性酸素をたたく強い抗酸化作用があるので、チョコレート健康法まであるようですが、アトピーには厳禁です。
おそらくそこに使われている油に問題がり、また原料となる豆にかゆみを増す物質が含まれているようです。 せいぜい、年に一度、バレンタインデイだけにしてください。チョコレート同様に、ココアもだめです。
(3) 牛乳について
牛乳の摂取も注意が必要です。多くの人々、特にアジア人は遺伝的に乳糖不耐症を持ち、牛乳の消化が困難です。これが腸内で水分を引き出し、胃腸の調子を崩す原因となります。
また、牛乳に含まれるプロゲステロン(女性ホルモンの一種、黄体ホルモン)はアレルギー反応を悪化させる可能性があります。さらに、牛乳の過剰摂取はカルシウムとマグネシウムのバランスを乱し、その他のミネラルの吸収を妨げ、骨粗鬆症や「牛乳貧血」を引き起こす可能性もあります。
カルシウムの補給は牛乳だけでなく、小魚や新鮮な野菜からでも可能です。実際、象のような大型動物は草食からカルシウムを摂取しています。
ただし、アトピー患者であっても、学校給食などで牛乳を全く摂らないのは心理的に負担であるため、適切な対応が必要です。
豆乳は牛乳の良い代替品であると考えられますが、毎日大量に摂取すると甲状腺機能障害を引き起こす可能性があるため、適量を守ることが重要です。
ここで述べる牛乳は低温殺菌されたものであり、生の牛乳については別の機会に議論します。
(4) 米について
痒みが一晩中続き、一睡もできない状態や、皮膚が硬くなるほどの重症の場合、より一層の対策が求められ、米にも注意が必要となります。
米には脂肪とタンパク質が含まれており、これがアトピーの症状を悪化させる可能性があります。そのため、痒みが軽減しない場合は、一か月間米を避けてみて、症状の変化を観察してみてください。その際、ジャガイモやサツマイモ、カボチャなどを代用してみてください。
アトピーに対する食事制限は一部の方には難しいかもしれません。その場合は、特殊処理を施した「Aカット米(アレルギーカット米)」を試すことができます。しかし、玄米やモチ米などはタンパク質が多く含まれているため、アトピーの方にとっては適していません。
糖質制限ダイエットは糖尿病には良いかもしれませんが(しかし、極端な糖質制限は糖尿病にもかえってマイナスです)、これを実行すると、どうしても肉や乳製品の摂取が増えてしまい、少なくともアトピーにはよくありません。
発芽玄米は、白米と比べて本当に良いものかどうか?そこのところは、かなり個人差があるようです。
もっとも、発芽処理の段階で、グルタミン酸からガンマアミノ酪酸(GABA)が多く生産され、それは玄米に含まれている量の3~5倍になり、このGABAは、精神安定化作用、脳神経機能の調節、代謝促進、不眠改善の効果があります。したがって、精神的なストレスに弱いタイプのアトピー患者さんには過度の摂りすぎにならなければ良いかもしれません。
(5) 小麦・そばについて
小麦はアレルゲンであり、その含むグルテンにはアレルギー反応を起こす可能性があります。小麦粉は薄力粉、中力粉、強力粉に分けられ、含むグルテン量が異なります。強力粉に多くのグルテンが含まれ、パンやピザなどに使用されます。対して、薄力粉はケーキや菓子に使われ、グルテン量は最も少ないです。
アトピーの症状が重い場合、グルテンが多い強力粉製品を避け、ウドンやソウメンを選ぶと良いでしょう。しかし食事制限は症状が改善すれば徐々に緩和されていくので、しばらくの我慢です。
一方、グルテンフリーの食材を全ての人に推奨しているわけではないことを理解してください。グルテンフリーはセリアック病の対処策として存在しますが、この病気は日本人には稀です。アトピーが重い時期はグルテンを避けるべきですが、改善すれば必要ないでしょう。実際、「グルテンフリー」の食材で、糖尿病のリスクが高まる可能性があると言う事に対しての論文が欧州糖尿病学会の機関誌Diabetologiaに発表されています。過度な糖質制限やグルテンフリーは、ファッドダイエットのリスクがあります。
ソバは小麦粉を材料としていませんが、麺類の中でも最も多くタンパク質(アルブミンとグロブリン)を含んでいますので、これも避けたほうがいいでしょう。また、ソバアレルギーは成人でも残ることがありますから注意してください。
どうしてもパンに限るという人は、Aカット米からつくられたAカットパンも販売されています。(インターネットなどで購入できます。)
(6) 卵について
先年まで、卵は特に中学生以上のアトピー患者さんには許容していました。しかし、現代人の運動不足やタンパク質過剰の食生活では、卵もひかえたほうがずっと治りがはやいようです。これは、卵の黄身に含まれるアラキドン酸や、卵白に含まれるアヴィディンというタンパク質が、アトピー治療に大切なビオチンというビタミンの吸収を邪魔し、アトピーの症状を悪化させる可能性があるからです。
マヨネーズやケーキのような卵が混ざった食品は、特に注意が必要です。一方で、症状がひどい時期にはタンパク質の摂取源として、魚貝類や味噌、納豆などの発酵大豆製品をおすすめします。その際、大豆プロテインは避けてください。
しかし、非常に運動量が多く、汗を頻繁にだす人は、症状がよくなるにつれて、週に一、二度は肉のしゃぶしゃぶ(できれば鶏肉)や卵はいいでしょう。 そうでないと、過度の食事制限そのものが精神的ストレスになり、かえってよくないからです。
*注意:精(せい)の強い食品、例えばニンニク、レンコン、タケノコなどは毎日の食事に含めすぎないように。毎日摂取した黒ニンニクのサプリメントがアトピー症状を悪化させる事例も見受けられます。それらの食品は、節度を持って摂ることが重要です。
(7) 白砂糖について
(8) カレーライス
あの黄色いカレー粉には優秀な抗酸化物質クルクミンが多く含まれていますので、一般的には健康に非常にいいのです。ウコンという植物を聞かれたことはあるでしょうか。このウコンの主成分はクルクミンです。
しかし、インスタントのカレールーにはリノール酸系統の油が使われていますので、注意してください。
したがって、カレー粉だけを購入し、もし油を使うなら、マカデミアナッツオイルなどで工夫し、ビーフ、マトン、ポーク、チキンを使わず、キノコ、野菜、魚介類などをトッピングすれば、アトピー用の素晴らしいカレーライスができます。
(9) 糖質制限ダイエットの是非
このダイエットは、主に糖尿病やメタボリックシンドロームの患者さんを対象にした食事です。これは、「アトピーの本当の原因(米・小麦・卵)」のページにも書きましたように、これを熱心に実行すると、アトピー患者さんのほとんどのケースで悪化します。一つの理由は、糖質を制限すると、どうしても肉・乳製品の摂取が多くなります。
もう一つの大切な理由は、ビフィズス菌など腸内細菌は糖質をエサとして生きていますから、糖質が十分に腸にないばあい、腸の粘膜を食べてしまい、腸のバリア機能が落ちてしまうことです。ですから、ほどほどが大切なのです。何事も過ぎたるはなお及ばざるが如しです。