あまり知られていない抗酸化物質、セレン、α-リポ酸、CoQ10、メラトニン、ラクトフェリンについて少しだけ解説します。
セレン(セレニウム)
このあまり耳慣れないミネラルは、栄養学の見地からは1957年に始めてその必要性が認められ、30年ほど前からぼつぼつと話題になり始めました。 そして、近年とみにその有効性が強調されるようになってきました。 それまではむしろ有害な物質としてのみあつかわれてきたので、サプリメントとして初めて聞くという人がいらっしゃると思われます。このセレンは、SODと並んで非常に大切な高分子抗酸化剤であるグルタチオン・ペルオキシダーゼという酵素に不可欠なものなのです。 この酵素を構成するにあたり、セレン原子が必要です。したがってセレンが欠乏すると、当然、活性酸素やフリーラジカルに対する防御が整わず、いろいろな局面で細胞は不利な事態に追い込まれるわけです。
強力な抗酸化作用を発揮するため、がんの予防、ひいてはできてしまったがんさえ治癒してしまうという研究が報告されています。 肺がん、大腸がん、乳がん、前立腺がん、直腸がん、卵巣がん、皮膚がんに有効です(セレンの血中濃度が非常に低い人は、高い人と比べて、4倍も皮膚がんに罹患しやすいのです)。
また、わざわざあまり知られていないこのミネラルを解説するには、それなりにわけがあるのです。 それは、特にビタミンEといっしょにとった場合にかぎり、細胞内にあるミクロソームのペルオキシダーゼの活性を上げるからです。おのおの単独ではそのような作用はありません。 つまりビタミンEとの相乗効果によってそのようなことがおきるのです。これが確認されたのは、やっと1980年代に入ってからです。 したがってセレンをきっちりと補うことによって、抗酸化作用はさらに強まります。
睾丸や精液に多くふくまれているがために男性のほうが女性より多くこのミネラルを必要とします。日本の厚生省はその1日の必要量(これを一般に所要量とよんでいます)をまだ定めていませんが、アメリカの食品医薬局FDAは1989年に1日推奨許容量(RDA Recommended Daily Allowance)として、 男性70μg、女性55μgとしました。マイクログラムとは百万分の1グラム、つまり千分の1ミリグラムということで、非常にわずかな単位です。
ビタミンB12と葉酸の二つのビタミンB群と、あとはクロム、マンガン、モリブデンといった微量ミネラル(trace mineral)の必要量がこの単位です。ビタミンE200IUに対し25μgのセレンが適切だとされていますが、セレンのサプリメントからの摂取量をどのくらいにすればいいかというのは、事実上けっこう難しい問題です。 というのは、セレンを私たちは普通の食事からどのくらいとっているか、まったくわからないからです。
セレンを多く含んでいるのは、魚介類(特に鰯、公魚、鮪、浅蜊、牡蛎、桜海老、雲丹)、ニンンク、ねぎ、小麦、胚芽、玄米、ぬか、こうじ、レバー、牛肉、などですが、 それらのセレン含有量は、それらが育った水質、土壌、また牛肉であればその牛のえさとなった牧草が生えている土地のセレン含有量に依存しているからです。 したがって、神戸肉と松阪肉は、同じ一切れでも、セレンの含有量がちがっているはずです。 一般的には、酸性雨や、石炭、石油の化石燃料の使い過ぎで、現代の土地はセレンの含有が少なくなっているようです。日本人の場合、普通の食生活をしていれば1日100μgはとっているといわれていますが、この普通の食生活というのがくせもので、健康ジャンキー・健康オタクから、 電子レンジのインスタント食族まで、まさにピンからキリまで十把一からげに、ご本人たちは普通の食生活をしていると思っています。
ちょうど小型軽自動車と1DKのアパートの住民、ベンツと億ションの住民が二人とも、自分たちは中流に属すると考えているようなものです。 しかし、およそ日本人の半分は不足していると推察されます。そこで私は十数冊の栄養学の本を調べてみたのですが、日本に住んでいるかぎり、サプリメントからは、 30~60μgが適量ではないかと考えられます。セレンは過剰になっても中毒症状をおこしますから。しかし、何らかの病気がすでに発症しており、それを治療する目の場合、 日に200~250μgは必要です。
私のクリニックでは非常に多くの病気に、日に200μg、夜に内服するようすすめています。理由はよくわからないのですが、朝よりも、夜間に摂取した方が、 いっそう効果があるようです。 足指の爪のセレン含有量は長期にわたりどのくらいのセレンを摂取したかの最も正確な指標になるのですが、オランダのリムブルグ大学の研究では、この量が最も高い人たちは、 低い人たちに比べて50%も肺がんの罹患率が低かったそうです。
特に抗がん作用を期待するのであれば、メチールセレノールという形がいいとされています。
そのためには、メチルセレノシステイン(SeMSC)がすすめられます。これはサプリメントとしてすでにアメリカでは市場に出回っています。
- 狭心症や心筋梗塞の予防にも有効です。
- 甲状腺ホルモンを活性化させます。 少し専門的にいうと、T4から活性型のT3への変換を促進させます。この代謝には三つの酵素がかかわっていますが、そのうちの一つ、Ⅰ型ヨードサイロニン脱ヨウ素酵素はセレンを含むセレノシステインというアミノ酸が含有されているのです。
- 砒素、鉛、水銀、銅、カドミウム、といった金属の解毒にセレンは有効です。
- 特に排気ガスの多い都会の住民は積極的にとる必要がありそうです。
- 化学物質によってひきおこされるアレルギーに効果があります。
- 男性不妊の精子にはグルタチオン・ペルオキシダーゼが乏しく、したがって、改善にはセレンが必要です。またセレンは精子の数も増やすといわれています。
- てんかんの患者さんの血中グルタチオン・ペルオキシダーゼも減少しており、セレンを補うことによって、発作の回数が減るということです。
- 老化に伴うデプレッションやぼけにも有効です。老人でなくとも、気分を明るくしてくれる作用があり、特に不安を解消してくれます。
- エイズ患者のセレンの血中濃度は際立って低いといわれています。
- HIVはセレンが欠乏してから、エイズを発症させるようです。それまでは、感染していても発症はしていないという状態です。
- 白内障の予防にもなります。
『注意』
セレンをとり過ぎると、爪の変形、脱毛、頭痛、めまい、吐き気、不眠、ニンニクに似た体臭、ふけの異常増加、口の中に異常な(特に金属のような)味が残るというようなことがおこることがあります。それはセレン過剰の兆候ですから、サプリメントをとるのはしばらくひかえたほうが賢明です。
妊娠中は医師の指導を受けないかぎり、さけたほうが無難です。ビタミンAはセレンの吸収をよくしてくれますので、いっしょにとって下さい。しかし、ビタミンAのサプリメントをとるときは注意してください。過剰にとり過ぎるとかえって体によくないからです。
ブラジルナッツには特に大量のセレンが含まれているといわれています。それはブラジルのジャングルの土壌が世界で最もセレン含有量が高いからです。たった一個に100μgのセレンが含まれており、それ一つでじゅうぶんなのです。日本ではなかなか入手できませんので、インターネットで購入されるといいでしょう。日本で売られているセレンは今のところ酵母の中に入っているものですが、ゆくゆくは、普通の薬局でもセレノメチオニンか、ナトリウムと結合させたかたちのものが出回るようになるかもしれません。そのときは、セレノメチオニンのほうを選んで下さい。こちらのほうが、副作用が少なく、ビタミンCが吸収を妨げるようなこともありません。それに、生物学的活性が、酵母に含まれたセレンより高いのです。酵母に含まれているセレンは、半分以上はセレノメチオニンがタンパク質と結びついたのもので、その他は、どういうかたちのセレンかまだわかっていません。
マスター抗酸化物質、α-リポ酸
80年以上も前の1937年、α-リポ酸はジャガイモから発見されました。しかし、これが抗酸化物質として極めて重要な位置を占めるのが認識されだしたのは80年代も終わりからです。したがって、日本ですでに出版されているビタミン、ミネラルの本にはこのα-リポ酸はほとんど触れられていません。α-リポ酸は体内でつくられるという意味においてはビタミンでもミネラルでもありません。しかし、非常にわずかしか人体では産生されず、加齢とともに減少し、また食物から得ようとしても極めて難しいので、積極的にサプリメントで補う必要があります。
一日にすすめられる量100ミリグラムを食物から摂取しようとすれば、300キログムラムものホウレンソウを食べなければいけません。
ビタミンC、ビタミンE、セレン、ラクトフェリンは一つのチームとして、相乗的に抗酸化作用を発揮しますが、その相乗効果をさらに高めてくれるのが、このα-リポ酸なのです。特にビタミンC、ビタミンE、CoQ10、グルタチオンなどのリサイクルにあたり、α-リポ酸は中心的役割を果たします。
最も際だって大切なことは、α-リポ酸が水溶性であると同時に脂溶性であるということです。この性質により、水溶性であるビタミンCとグルタチオン、脂溶性であるビタミンEとCoQ10といった非常に重要な抗酸化物質がフリーラジカルによって酸化されたときに、それらをリサイクル(還元)して、再び抗酸化物質として体内で使用できるようにしてくれるのです。つまり、α-リポ酸の存在で、数多くの抗酸化物質が一つのネットワークの一員として能率的に働いてくれるわけです。グルタチオンは細胞内に最も多く存在している大切な抗酸化物質ですが、α-リポ酸をとることによって、グルタチオンのレベルが30%も増えるといわれています。
CoQ10はビタミンEをリサイクルしてくれますが、α-リポ酸はこのCoQ10をリサイクルします。また、何らかの理由でビタミンEが欠乏しても、α-リポ酸がその不足を補ってくれることが実験で確認されています。つまり、重要な抗酸化物質のネットワークの中心的役割を果たしてくれるのです。
このantioxidants network(抗酸化物質ネットワーク)という概念は、カルフォルニア大学バークレイ校のレスター・パッカー博士によって提唱されています。興味のある人は「The Antioxidant Miracle Lester Packer, Ph.D. & Carol Colman著John Wiley & Sons, Inc. 出版を読まれたらいいでしょう。素人向けに易しく書かれています。最近は日本語訳もでています。
水溶性、脂溶性の抗酸化物質をリサイクルしてくれるだけではなく、α-リポ酸それ自体、強力な抗酸化作用を有していますので、心・血管系の病気、白内障、老化の予防、免疫系の強化に非常に役立ちます。また特に糖尿病から由来するさまざまな末梢神経の病変には昔からドイツで使用されています。
放射線による細胞の損傷を最も効率的に予防し、また回復させてくれる物質は、このα-リポ酸だといわれています。また、肝機能を活性化させ、人体に蓄積する有害物質の解毒を促します。α-リポ酸の権威であるバークソン博士の著書「The Alpha Lipoic Acid Breakthrough」の序章に、毒キノコによる4人の瀕死の患者を博士がα-リポ酸で救ったエピソードが書かれています。毒キノコで肝機能が著しく侵され、あとは死を待つのみという4人が、4人とも奇跡的に完治するのです。これは1970年代の終わりの話です。さらに特記すべきことは、遺伝子の発現の調節にも、このα-リポ酸がたいへんに役立っていることです。
ヒトゲノムの解析は完了し、多くのがん遺伝子がわかってきています。しかし、たとえあなたが肺がんの遺伝子を持っていたとしても、それが必ず将来、肺がんになるということを意味してはいません。その遺伝子が発現し肺がんを惹起するには環境要因が深くかかわりあっています。
たとえば喫煙するかしないかです。禁煙を実行している人は、肺がんの遺伝子を持っていたとしても肺がんになる確率は、喫煙する人よりずっと少ないでしょう。がんのみならず他のさまざまな病気…おそらく外傷・怪我、細菌やウイルスによる以外のほとんどの病気…についても同じことがいえます。
細胞質には核因子カッパB(NFーκB)という一種のタンパク質が存在し、普通はおとなしく細胞質内に止まっているのですが、フリーラジカルなどによって活性化されると、核に移動してDNAと結合し、本来なら発現させてはならない遺伝子まで発現させてしまうのです。それを阻止する作用が、抗酸化物質の中でも、α-リポ酸が最も強力であるといわれています。
サプリメントからのα-リポ酸は体内に長く止まることができないので、朝夕と二回に分けてとって下さい。
見過ごされていた抗酸化物質、CoQ10
コエンザイム(補酵素)Qともよばれ、人体のあらゆる細胞に存在し、エネルギー産生に深くかかわっています。それがゆえに、最も多く含有されている場所は、細胞の電力発電所とよばれるミトコンドリアです。CoQ10は厳密な意味でのビタミンではありませんが、食物から(あるいはサプリメントから)摂取しなくてはならないとう点で、ほぼビタミンと同じ類と考えていい抗酸化物質です。特にビタミンEをリサイクルしてくれますので、抗酸化物質ネットワークの一つのメンバーとして最近その重要性がとみに認められてきています。
1957年に牛の心臓のミトコンドリアから分離され、翌年、実験室での合成に成功しました。これはアメリカでの話ですが、1960年代に日本は世界にさきがけて最も多くこのCoQ10を研究し、現在では40あまりの製薬会社がそれぞれのブランド名で医療機関に販売しています。
特に心筋症、高血圧、歯肉炎に、効果があり、アルツハイマー病、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症(あの車椅子の天文学者ホーキング博士がわずらっている病気)といった脳神経系の病気にも有効であるという研究がなされています。免疫系を活発にし、がんも予防してくれます(特に乳がん)。また精子の運動能力を高めてくれますので、男性不妊にも効果があります。精子を優秀な「泳ぎ手」にしてくれるのです。若返りにも効果があります。
生体組織中ではCoQ10は、還元型(ユビキノール)の方が酸化型(ユビキノン)より多く存在します。8割以上が還元型です。したがって、CoQ10のサプリメントを購入する場合、表示によく気をつけ、ユビキノール(ubiquinol)を主成分としているものを探してください。還元型の方が8倍も効果的ですから。
また、CoQ10は体の中でもチロシンというアミノ酸からわずかですが合成されますが、それにはビタミンB6が必要です。したがって、ビタミンB群のサプリメントも補ったほうがいいでしょう。また、特にスタチン系の抗高脂血症剤(抗コレステロール剤:メバロチン、リポバス、ローコール、リピトール、リバロなど)、スルフォニルウレア系血糖降下薬(オイグルコン、ダオニール、アマリール、ブタマイド、アベマイド、ジメリン、デアメリンなど)、三環系抗うつ剤(ノリトレン、アモキサン、イミドール、トフラニール、トリプタノール、スルモンチール、アナフラニール、アンプリット、プロチアデンなど)を服用している人は、CoQ10が不足してきます。ですから、積極的に補う必要があります。
「The CoenzymeQ10 Phenomenon」という本がKeats Publishing, Inc.「THE MIRACLE NUTRIENT COENZYME Q10 」がBANTAM BOOKS、「all about coenzymeQ10 」がAvery Publishing Group からそれぞれ出版されています。このサプリメントを理解するには便利な本だと思います。日本の家庭医学書コーナーに、CoQ10に関する本が見当たらないのは、実に不思議な気がします。
抗酸化剤としてのメラトニン
この物質は、脳のほぼ真ん中に位置する第三脳室の上壁最後部にある松果体という器官から分泌されます。1950年代アーロン・ライナーによって25万頭のウシの松果体を使って発見されました。しかし血中濃度があまりにも微量であるため、当時の技術ではほとんど手がつけられず、ラジオイムノアッセイが開発され、1970年代後半から本格的な研究が進みました。6~7才をピークとして、以後年令とともに少なくなっていくホルモンです。
メラトニンの欠乏は先に述べたエストロゲン・ドミナンスにつながります。メラトニンは一時、若返りのホルモンとしてブームになったことがあります。また、時差ぼけ対策、あるいは睡眠薬として、とられることが多いのですが、最近は抗酸化剤・抗炎症剤としての作用にも注目されています。
メラトニンの抗酸化作用はビタミンEの2倍といわれています。血液脳関門を通過し、水溶性であり、かつ脂溶性でもあり、脳において重要な抗酸化物質として働いていると推測されます。脳では、その活動によって常に活性酸素ができていますから、メラトニンは脳を保護するには、なくてはならないものでしょう。
かつて、メラトニンは脳の松果体でのみつくられていたと考えられていたのですが、その研究が進むにつれて、人体のあらゆる器官でもつくられていることがわかってきました。特に腸では、松果体でよりも500倍も多く生産されています。おそらく、腸は人体の中で最も酸化ストレスを受けやすい器官だからでしょう。じかに、食物と触れるのですから。非ステロイド性抗炎症剤(NSAIDs)による胃壁のダメージから守ってくれます。また、逆流性食道炎にも効果があります。当然、脳に対するあらゆるダメージからも脳を保護してくれ、また、アルツハイマー病からくる認知障害も改善します。心血管系にも保護的に働き、心筋の作用も強くする働きが確かめられています。またがんにかかり、その再発予防のためには、毎日20mg以上をすすめている医者は多いようです。
特に性ホルモン依存性のがん、例えば、前立腺がん、乳がん、卵巣がんなどにはすすめられます。しかし、血液系のがんにはとらないほうが無難です。また、メラトニンは膀胱の容量を用量依存的に増やしますし、夜間の尿生産量を少なくするため、夜間の頻尿のためにしばしばトイレに行き、目をさまさなければいけない人にもいいでしょう。
また、メラトニンには亜鉛の血中濃度を正常化する働きがあります。松果体は光に敏感に反応し、光の量が増えるとメラトニンの分泌を減らします。したがって、部屋のスイッチのありかを知らせるためにスイッチの横についているほんのわずかな光源も本当は無くしてしまった方がいいのです。黒いシールドで隠すことです。またビタミンB6は、トリプトファンからメラトニンの生合成される過程に必要ですから、ビタミンB不足にならないようにビタミンB群をサプリメントから補うことがすすめられます。特に精神的な疲れを感じるようなときには、ビタミンB群とメラトニンを就寝前に服用すると、翌朝、非常にすっきりと疲れがとれている感じがします。ぜひ、試してください。睡眠薬の代わりではなく、抗酸化と若返りを目的として毎日とるのであれば、就寝前20~30分に0.3~1mgほどが適切です。睡眠薬のためであれば、3~10mg。しかし、睡眠薬としては、けっこう慣れ(耐性)が生じやすいので、できれば週に2回までにしておいたほうがいいでしょう。アスピリンを摂ると、メラトニンの産出を非常にそこないます。血液凝固を防いで、血液をサラサラにということでアスピリンを摂っている人はずいぶんおられますが、気をつけてください。消炎鎮痛剤もそうです。また、その他、ある種の抗不安薬、抗うつ剤、それに降圧剤(利尿薬、ベータブロッカー、カルシウム拮抗剤)、カフェイン、アルコールなどもメラトニンの産出を阻害します。逆に、バナナ、米、大麦などはメラトニンの産出を促します。したがって軽い、夜食というものは睡眠にはいいのかもしれません。
メラトニンは日本では入手できませんから、インターネットで外国から個人輸入してください。一か月分、せいぜい千円以下です。
メラトニンに興味のある人は、「驚異のメラトニン」ウォルター・ピエルパオリ、ウイリアム・リーゲルソン著が「保健同人社」から翻訳で出ていますので、読まれたらいいでしょう。監訳は「バカの壁」で有名な養老孟司先生です
母乳の力、ラクトフェリン
活性酸素の中で特に活性が強く、細胞膜に障害を与えるのが「ヒドロキシラジカル:・OH」です。百万分の1~千分の1秒で消える極めて寿命の短い活性酸素ですが、その酸化力は過酸化水素の10の10乗倍以上といわれています。ラクトフェリンは、この最強の活性酸素を消去する能力においては、ビタミンCやビタミンEよりもずっとすぐれているのです。また、ラクトフェリンには重金属イオンをキレートする性質があります。つまり、鉄や銅などの重金属イオンと強く結びつくのです。鉄とすぐに結びついて赤色に変化することから、発見当初は「赤いタンパク質」と呼ばれていたくらいです。
鉄や銅は非常に重要なミネラルですが、遊離した形の鉄イオンや銅イオンは、ヒドロキシラジカルをつくりだす触媒として作用します(フェントン反応)。ラクトフェリンはこういう危険な鉄イオンや銅イオンを捕捉し、ヒドロキシラジカルの生成を抑えるのです。ラクトフェリンはヒドロキシラジカルを消去するだけでなく、DNAの障害を防ぎ、またすでに障害されたDNAの回復さえ促す効果もあります。ラクトフェリンには遺伝子修復酵素の一つであるOGG1を保全する働きがあるからです。さらにラクトフェリンはインターフェロンαの体内での産生を促し、それがNK細胞を刺激し、その活性を高めますから、病原微生物による感染を防いでくれます。状況により悪玉にも善玉にも変化する、日和見細菌の存在は、体内のいろいろな個所で繁殖し、その過程で炎症を引き起こします。炎症は先で述べたように、あらゆる病気の基礎となっています。こういった日和見細菌の増殖もラクトフェリンは阻止することができるのです。
特に出産後3日以内にでる初乳にラクトフェリンは多く含まれており、生後1週間は、赤ん坊は日に7~10gもラクトフェリンを摂取するといわれています。大人になっても、体内で日に0.08~0.1gほど合成されており、涙や唾液、消化液、粘液といった体液に広く存在します。また、心臓、脳、肝臓、肺、膵臓など、あらゆる器官がラクトフェリンを受け入れるレセプターを有しています。この事実は、ラクトフェリンが全身の組織に重要な働きを有していることを意味します。
ということで、みなさんラクトフェリンを十分に補いましょうとなるですが、そう簡単にはいきません。離乳後の子供や成人が母乳を飲んだり、あるいは普通のラクトフェリンのサプリメントをとったとしても、ほとんど意味がありません。なぜなら、離乳期を境にして、消化システムが大きく変化するからです。乳児が母乳を飲んだ場合、胃酸やレンニンという消化酵素の働きで、母乳を白いかたまりのカードと黄色い半透明の乳清に分けて、小腸へ小分けして送りこみます。ラクトフェリンは乳清に含まれた状態で小腸に届き、そこで吸収されます。ところが、離乳期を過ぎると、ペプシンという消化酵素が活発に分泌されるようになり、それによってラクトフェリンは急速に胃の中で分解されてしまい、腸に届くときには本来のラクトフェリンではなくっているのです。
そこで、胃で分解されず、腸にまで届かせる工夫をしなければいけません。腸まで溶けないで運ばれ、小腸に達して、そこで溶けるよう、コーティングしたラクトフェリンが必要になってくるのです。それを「腸溶性ラクトフェリン」と呼びます。世間には数々のラクトフェリンが出回っています。たとえば「アポラクトフェリン・アルファ」などの商品名で売られているラクトフェリンや、「ラクトフェリンヨーグルト」などは腸溶性ラクトフェリンではありません。したがって、腸に届くまでに分解されてしまいます。また、カプセルに入れて、それを腸溶性とよんでいる製品もありますが、ラクトフェリンそのものはコーティングされていません。要するに、長期にわたり安全にとるには、単純な「腸溶性ラクトフェリン」がいいのです。しかし、このシンプルな「腸溶性ラクトフェリン」は、ちまたではなかなか見つけにくいようで、よく質問のメイルが送られてきます。もし、探し出せなければ、私の沖縄の研究所(www.makise.jp)で販売している「ドクターズ・メガラクトフェリン」がいいでしょう。
ここに述べることは、あくまで一般的な参考としての情報であり、読者が医学知識を増やすための自習の助けになるものであり、それを越えるものではありません。
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